《スターティング・ブルー〜蒼を宿す青年〜》三章 ─ 記憶がもたらすもの ─
目が覚める。青空が広がっている。後ろを向く。眼前に聳え立つのは統制機構カグツチ支部。どうやら、"再び"巻き戻ったと見て相違ないだろう。
「又ですかそーですか…はぁ…」
"巻き戻る前の記憶"を持ったまま、再び統制機構カグツチ支部の前に居た俺。不思議な事に、々な記憶は所持したままだ。普通は消える筈なのに。
「……ひとまず、死神…ラグナに會わないと駄目だ。ラグナの生死が鍵になっているのは確かな筈だ」
二回目なだけあってこの世界が"ループ"している事に気づいた。そして、ループの起點がラグナだという事も。いや、普通は気づかないんだけど。そこはあのココノエ博士と同レベルの頭脳が瞬時に答えを導き出していた。そこは謝しないと。只…この時もしっかり殘っていた。能力の後癥が。倒れまいと必死に耐えつつ、思考を巡らす。
「多分俺はこの後彼…ノエルに出會う筈だ。そこから二人揃ってラグナに會う…いや、奴は指名手配中だ。今ノエルと顔を合わせるのは不味い…それに、ラグナの居場所を知っている訳でも無いし…」
Advertisement
例え俺が二人と出會った頃の記憶があっても、この世界がループしている以上、ノエルとラグナは俺とは初対面だ。不自然な対応はとれない。暫く悩んでいると、近場の飛空艇著陸場に一機の飛空艇が止まった。そこから人が次々と降りてくる。そして、既に知っている彼が降りて來た。
「(よし。まずは接するか)」
そう思った俺は降りて來たばかりの彼、ノエル=ヴァーミリオンに近づく。そして、聲をかけた。
────────────────────────
「はぁ…」
上層部の指示により走したキサラギ佐を捕らえるべく、カグツチに降り立った私はため息をついた。あの時、キサラギ佐に渡した一枚の手配書。そこに描かれていたのはとある人の人相書き(多分というか絶対似てない)と名前、かけられた賞金。その賞金額が破格の一言。なんと九千萬プラチナダラーだった。それだけあれば一生を遊んで暮らせる。でも、私はそれより気になった事があった。
Advertisement
「(キサラギ佐、高笑いしていた。普段笑わない佐が…あんなに)」
あの手配書を渡した時、私はすぐに下がれと言われ、廊下に出ていた。けど、扉に耳を當てようとした時に聞こえてきた聲に驚いた。普段のキサラギ佐には考えられない甲高い笑い聲、何度も確かめるように自問自答を繰り返し、その度に聞く"兄さん"という単語。まさかとは思うけど、あの指名手配犯とキサラギ佐が兄弟かと考えたがすぐに払拭した。兄弟なら何かしらの共通點がある筈だからだ。
「でも…幾らなんでも無理がありますってぇ…」
そう。キサラギ佐は先のイカルガで起きた大戦にて、首謀者であるテンジョウを討ち取り、一気に佐に昇進。師団長にまでなった。その大戦は後にイカルガ大戦と呼ばれるのだが、首謀者のテンジョウという人は一人で一つの騎士団と同等の力を持っていた人。その人を討ち取ったキサラギ佐はその人より強いという事になる。尉である私は到底適いそうに無い。
「はぁ…無理難題、押し付けられたなぁ…私」
何故私がキサラギ佐を追っているかと言うと、私はキサラギ佐の書だったからだ。誰もがキサラギ佐の実力を知っているからこそ誰も適いそうに無いと見られていたから私に白羽の矢が立った、という訳である。とりあえずカグツチに來たのはいいのだけど、心は帰りたいという気持ちで一杯だった。どうしようか迷っていた矢先、誰かに聲をかけられた。聲の主を見た時、思わず聲を出しそうになる。聲を無理矢理押し殺し、冷靜を裝って話しかけた。
「あのー…私に何か用ですか?」
────────────────────────
俺が聲をかけた時、心しまったと思った。いきなりやらかしてしまったからだ。向こうは初対面、俺は知り合いだと思って気さくに。冷や汗が止まらない。
「あのー…私に何か用ですか?」
「嗚呼、勿論」
既にやっちまったがあるが仕方ない。そのまま名乗る事にしてから話し込むとしよう…
「その前に名乗らせてもらおう。俺はk「天才研究員の桐生悠人さんですよね?!うわぁ、本だ…」……よくご存知で。正直驚いたよ、名前を知っていてくれている事以上に栄な事は無いな。ノエル=ヴァーミリオン尉殿?」
至極あっさりと彼の名前を告げると『何故知っているんですか?』と顔で訴えかけられた。"風の噂だよ"と誤魔化しにる。今の彼にループ云々の話は厳だ。
「…で、その天才研究員が私に何の用なんですか?」
「"元"研究員だよ。今はしがない咎追いだ」
「あ、そうなんですね…」
俺が元研究員だと知った彼はわかりやすく肩を落とす。そこまでがっかりされるとなんか申し訳無い。でも、俺が所屬していた第七機関は統制機構と敵対している組織だ。逆に抜けて良かったのかもしれない。もしかしたら言葉の代わりに拳をえた可能も無くはない。は毆りたくないけど。
「兎に角、アンタ…ノエルに話がある。會ったばかりで申し訳ねぇが…」
「大丈夫です。それに、私も悠人さんの話、聞きたいですから」
「……分かった。謝する、尉殿」
初対面にも関わらず俺を信用してくれた(多分そうだろう。うん)彼に敬意を示しつつ、とある場所へと向かった。行き先は、俺と同い年の知り合いが運営する飲食店だ。そこなら、込みった話が出來る。
────────────────────────
私に聲をかけた人があの天才研究員の桐生悠人だと知った時、私は夢でも見てるのか、と錯覚した。何故なら彼は研究員にしてこれ以上無いという名譽を貰った、正真正銘の天才だ。聞けば、あのココノエ博士と同レベルの頭脳を持っているらしい。それだけ凄い人なのに何故研究員の道から外れて、咎追いになったのだろう。でも、それを聞く気にはなれなかった。
「兎に角、アンタ…ノエルに話がある。會ったばかりで申し訳ねぇが…」
確かに、彼と會ったのは今回が初めてだ。でも、テレビとかでよく見かけていた為、悪い人じゃないのは知っている。私はすぐさま了承した。
「……分かった。謝する、尉殿」
改まった口調になった彼にお禮を言われ、彼に先導される形で後を追う。隣で歩幅を合わせて歩いていた時、妙な既視を覚えた。まるで何処かで出會い、話したような、そんな既視。でも、すぐに払拭した。気の所為だ、そう思って。でも、この既視が本だったという事は、この時の私は知る由もない。
────────────────────────
「…チッ、まーたコレかよ。飽きねぇな、"マスターユニット・アマテラス"はよ。どれだけこの悪夢ゆめを繰り返せば気が済むんだぁ?」
誰も居ない統制機構頂上。そこにあるのは天高く聳える黒い石碑みたいなもの。それに刻まれているのは龍ににた紋章。そして、それを見上げる人。"あの時"と同じ、緑髪の男だった。だが、緑髪を隠すように被っていた帽子は被っておらず、特徴的な緑髪は逆だっている。目は完全に開いており、その瞳は蛇そのものだ。
「待ってろよ、アマテラス。この俺様が必ず"滅日"を始めてやる。そして、この世界にてめぇを引きずり出してやるからよぉ…!!」
そう言い、男は狂ったように笑い続ける。いつまでも。
────────────────────────
ノエルに飯を奢り、々込みった話をし終わった後。一旦別れ、表通りを歩いていた。おもむろに通信機を取り出し、繋げる。その相手は、"あの人"だ。
「ココノエ博士。俺です、悠人です」
『……なんだ、お前か。どうした?』
俺はココノエ博士に世界のループ云々の話以外でカグツチで起こっている異常現象を伝えた。ひと通り伝えた後、ココノエ博士は唸るように悩み始め、そして解決策を出した。流石天才科學者。
『……それ等は私に任せておけ。お前は引き続き當初の目的を果たせ』
「了解っと。んじゃ、又何か分かったら連絡します」
『嗚呼、分かった』
向こうから通信は切れ、通信機を手早く仕舞う。次にやる事と言えば、死神と接する事だ。とはいえ、カグツチは広い。人一人探すのでさえ一苦労だ。とりあえず適當に探そう。そう思い、裏通りに姿を消す。
────────────────────────
「やっとか…ったく、徒歩だと辛ぇな」
第十三階層都市、カグツチ。その最下層に俺は來ていた。ここから上に上がり、図書館をぶっ潰す。今までもそうして來た。
「そういや、いくつ潰したっけか。ま、數えてねぇけど」
潰した數など一々覚えていない。覚えていても何の意味もねぇからだ。あるだけ潰す。それが俺の"復讐"だ。
────────────────────────
ある者は世界のループに気づき、そこから抜け出す方法を模索し始めた。
又ある者は命令により、カグツチに降り立った。それが今後を左右するかもしれないという事を知らずに。
そして、今まさにカグツチにたどり著いた者。彼がこの世界の未來を左右する重要な人。
その三人が再び集まる時、何が起きるのか。その答えは傍観者と神のみが知る…
「さぁ…存分に足掻きなさい、桐生悠人。いえ、──?貴方が世界を変えてくれる事、私は楽しみにしているわ」
────────────────────────
はい。という訳で第三章でした。
次はいよいよあの人と接します。それが何をもたらすのか、それは次でお分かりになるかと。そして、桐生悠人の正もそこで分かるかと思います。
それでは、読んで下さった方々に謝を。では又次でお會いしましょう。
【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…
※書籍化が決まりました! 電撃の新文蕓様から、2022年1月発売! 主人公のノアは、転生者。 前々世では剣聖、前世では賢者として活躍していたのだ。 だがずっと働きづめにされており、もう英雄なんてうんざり! ある日ノアが死んで目覚めると、今度は王子として生まれ変わっていた。 高い魔法の才能と、剣聖の剣術の実力を秘めていたが、また忙しい日々を送りたくなかったので、ノアは全身全霊をかけて無能のフリをした。 そして、15歳の誕生日。 スキル鑑定によって無能であることが判明(実は隠蔽スキルで隠していただけ)。 晴れて追放されたノア。 父より溫情として與えられたのは辺境の領地。 そこで第二の人生を楽して過ごしてやる!と意気込むノアだったが、彼は知らない。 実はその領地は、人が住めないとされる魔の森のなかにあったことを。 そしてこのこが前世、前々世と比べて未來の世界で、人間達のレベルが下がっていたことを。 ノアが森でモンスターに襲われていた女の子を助けたことをきっかけに、彼の有能さがバレてしまう。 「ドラゴンを一撃で倒すなんて、さすがノア様!」 「どうしてこうなったぁああああああ!」 一方で、王家もまたノアの有能さに気付いて、彼を取り戻そうとやってくる。 「來るのが遅えんだよぉおおおおおお!」 そのときにはすでに、ノアは魔の森の領主として、領民からあがめ立てられていたのだから。
8 180【WEB版】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った幼馴染が後悔してるけどもう遅い【書籍版好評発売中!】
※書籍化が決定しました! GA文庫さまから、好評発売中! 書籍化に伴いタイトルが変更になります! (舊タイトル「【連載版】「あんたが神作家なわけないでしょ」と幼馴染みからバカにされたうえに振られた) 陰キャ高校生【上松勇太】は、人気急上昇中大ベストセラーWEB小説家【カミマツ】として活動している。 ある日勇太は、毎日のように熱い応援を送ってくる幼馴染が、自分のことが好きなのだろうと思って告白する。しかしあえなく大玉砕。 「ぼ、ぼくが作者のカミマツなんだけど」 「はあ?あんたみたいなオタクと、神作者カミマツ様が同じわけないでしょ!?」 彼女は勇太ではなく、作品の、作者の大ファンなだけだった。 しかし、幼馴染みはのちに、カミマツの正體が勇太と気付いて後悔するが、時すでに遅し。 勇太の周りには、幼馴染よりも可愛く性格も良い、アイドル聲優、超人気美少女イラストレーター、敏腕美人編集がいて、もはや幼馴染の入る余地はゼロ。 勇太は自分を認めてくれる人たちと、幸せ作家生活を続けるのだった。
8 61老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
彼は、誰もが羨む莫大な資産を持っていた…… それでも彼は、この世にある彼の資産全てを、赤の他人に譲る遺書を書く…… 真田(サナダ) 英雄(ヒデオ)56歳は伝説的圧倒的技術を持つプレイヤーだった。 40年続くMMORPG ヴェルフェリア・オンライン。 時代の進化によって今終わろうとしているRPG。 サービス終了とともに彼は自分の人生を終えようとしていた。 そんな彼のもとに一つの宅配便が屆く。 首に縄をかけすべてを終わらせようとしていた彼の耳に入ったのは運営會社からという言葉だった。 他のどんなことでも気にすることがなかったが、大慌てで荷物を受け取る。 入っていたのはヘッドマウントディスプレイ、 救いを求め彼はそれをつけゲームを開始する。 それが彼の長い冒険の旅の、そして本當の人生の始まりだった。 のんびりゆったりとした 異世界? VRMMO? ライフ。 MMO時代の人生かけたプレイヤースキルで新しい世界を充実して生き抜いていきます! 一話2000文字あたりでサクッと読めて毎日更新を目指しています。 進行はのんびりかもしれませんがお付き合いくださいませ。 ネット小説大賞二次審査通過。最終選考落選まで行けました。 皆様の応援のおかげです。 今後ともよろしくお願いします!!
8 81最弱の異世界転移者《スキルの種と龍の宿主》
高校2年の主人公、十 灰利(つなし かいり)は、ある日突然集団で異世界に召喚されてしまう。 そこにある理不盡な、絶望の數々。 最弱が、全力で這い上がり理不盡を覆すストーリー。
8 94最弱の村人である僕のステータスに裏の項目が存在した件。
村人とは人族の中でも最も弱い職業である。 成長に阻害効果がかかり、スキルも少ない。 どれだけ努力しても報われることはない不遇な存在。 これはそんな村人のレンが――― 「裏職業ってなんだよ……」 謎の裏項目を見つけてしまうお話。
8 109陽光の黒鉄
1941年、世界は日英、米仏、獨伊の三つの派閥に分かれ、互いを牽制しあっていた。海軍の軍拡が進み、世界は強力な戦艦を産み出していく。そして世界は今、戦亂の時を迎えようとしている。その巨大な歴史の渦に巻き込まれる日本、そして日本の戦艦達。その渦は日本に何をもたらすのだろうか。
8 100