カカ溫泉から離れ、再びイカルガを探索する。

赤鬼によれば、イカルガに『第零師団』が來ているらしい。行する際は気をつけろと念を押されていた。

「(クリームのマントに仮面を付けてるからすぐ分かると思うんだけどな…)」

統制機構には四つの師団がある。そのの一つがその第零師団。賞金首の中でも統制機構の妨げになる者(ラグナとか)を排除する為だけに存在し、他の衛士からは『ゴミ処理部隊』なんて呼ばれ、忌み嫌われる存在。因みに、排除対象は統制機構の衛士も含まれているらしい。兎に角會いたくはない。

「ノエルの親友に第零師団志した子は居るのか?」

「あ、うん」

「……そうか(だとすると、來てるかもな)」

思わぬ報を得た所で改めて周りを見ると、一瞬だけクリームのマントが見えた。間違いなく第零師団だ。全マントで隠されている為別は分からないが、今は不味い。ひとまずノエルを抱えて跳躍。屋の上を走る。

「ど、どうしたの……?」

「第零師団が見えた。今見つかると不味い」

「…っ!!」

「俺はともかく、ノエルは亡命しただ。下手すると…『消される』可能がある」

「詳しいんだね…悠人」

「何、ちょっとした事でな」

その間にも足音が増えていく。やはりあの時既にバレていたという事か。面倒な事になったなと歯噛みしながら対策を考えていた。

「(ジリ貧だな…ならこうするか)」

突然止まり、後ろを向いて話し掛けてみる。"とある個人の名前をだして"。

「ここまでくるとは思わなかったわ、ツバキ=ヤヨイ殿?」

「……」

「間違いなら無視してくれや。爭う気はさらさら無いからよ」

「……その聲、貴方ね?」

目の前の零師団の人が仮面を外す。顔を見た時、心で"ビンゴ!!"って思った。真っ赤な髪に子と呼んでいい程整った顔つき。間違いなくツバキ=ヤヨイ本人だ。

「え、何…悠人、ツバキの事知ってたの?」

「ばっ…はぁ、まぁいいや。ちょっとした因縁的な奴だ」

「……桐生悠人。いえ、アヤメ=ムツキ。"第七機関に亡命した衛士"と聞かされていたけど、本當だったようね」

「俺をその名前で呼ぶな。それと亡命じゃねぇ。ちゃんと辭表は出した。ま、それを簡単に処理するあんたらじゃないわな」

「えぇ。あんないい加減な、帝が承諾すると思ったかしら」

「いや全然?どうせ頭脳目當てだったのは分かりきってる。だからこそ俺は辭職したんだよ。兵になり得るもんを作らされるよりは第七機関に居た方がマシだ」

「淺はかね。第七機関の方が危険じゃない。そこに逃げ込むなんてどうかしてるわ」

「自分で進んで第零師団ゴミ処理班にるあんたにゃ言われたくないね」

ノエルに"こっそり逃げろ。後で追う"と指示し、ツバキの前に立つ。例え俺が倒されでもした所で時間稼ぎにはなるだろう。そもそも、俺に用があるらしい。だったら遠くに逃がすべきだ。

「貴方の罪…斷罪します!!」

「やってみろ…」

試作の大剣は闘技場コロシアムに置いてきてしまった為、細剣レイピアを構える。対するツバキは特徴的な短剣と本に似た武…『事象兵アークエネミー』の元となった武、《封印兵裝・十六夜》を武裝した。

「(噂にゃ聞いてたが、あれが封印兵裝か…)」

今最も相手にしたくない奴だが、今回は逃げる時間を稼げればいい。適當にあしらってその場から出すればこっちの勝ちだ。

悠人に指示された通りこっそりその場を後にした私は、遠くから二人を見ていた。ここにきて又謎が増えた。悠人は博士に拾われた(その記憶をあの時見た)筈なのにツバキが言うには統制機構元衛士で悠人も私と同じく亡命し、第七機関にを置くようになった。その時にあの名譽を貰ったという事だろうか。それに、ツバキが呼んだ名前…"アヤメ=ムツキ"。それが悠人の本當の名前なのだろうか。謎は深まるが、私はあの時見た悠人の記憶を信じたい。

「(でも…悠人もツバキも私の大切な人なんだよね…爭うのは見たくないけど…)」

これも運命という奴なのだろうか。あの時悠人と何かが繋がった時、先の運命が見えるようになってしまった。だけど、それは未來の事だ。その場その場で言ってしまうと未來が変わってしまう。

「悠人…」

最の人の名を呼び、見守る他なかった。あの力は悠人と手を繋いでいる時のみ発揮される為、今の悠人はそれに頼れない。そうで無くても悠人は十分強いけど、ちょっとだけ不安だった。

十分くらい戦っただろうか。今使っている細剣は博士のノウハウを元に作したものだ。並の兵裝では太刀打ち出來ない奴だが、流石事象兵のオリジナルだけあって強い。既にボロボロだが、十六夜の方は全くの無傷だった。

「ちっ…やりたくなかったが、アレを使うか…」

「何をする気?」

「何、ちょっと剣を呼ぶだけだ…來い、ハートネイズ!!」

俺の呼びかけに応じ、漆黒の闇から大剣が形作られる。しっくりくる柄、見馴れた刀。紛れもなく用の大剣だ。それを見たツバキの顔がし曇る。

「それは…」

「鬼の頃から持ってた剣だ。気にする事はねぇ、今から俺ごと消えるからな!!」

「なっ?!」

ブラッドミスト、と呟く。その途端ハートネイズは黒い霧と化す。目くらましに最適な技の一つだ。暗闇に目を取られている間にノエルを連れてそこから離する。暫く滯在する上に振り払うのは不可能だ。足止めにも使える。

「悠人。聞きたい事が…」

「嗚呼、俺が何故アヤメ=ムツキと呼ばれてのか諸々含めて後で話す。今は逃げる事に集中しないと駄目だ」

「……分かった」

こんな時にもノエルが可いって思う辺り、末期なんだなと心毒づいた。寂しそうな顔をしているという事は、ツバキはノエルの親友、といったじか。それよりもまずは追っ手が來る前に出來るだけ離れないと駄目だ。

ハートネイズ、彼はそう言った。おそらく《漆黒剣ハートネイズ》で間違いない。霧が晴れた後、通信機で連絡を取った。その後、一旦を休める事にした。

「何故彼がアレを持っているの…?アレはムツキ家の…」

考えても仕方ない。私の役目は罪深き者を斷罪する事。それがかつての同期であっても、親友であっても。ノエルがあの場を居たのは驚いたけど、上から既に聞いていた。"ノエル=ヴァーミリオン尉は統制機構から抜け出した"と。ノエルがそんな事する訳が無いと思ったが、あの男、アヤメ=ムツキが関わっているなら納得がいく。一刻も早くあの二人を斷罪…いえ、助け出さないと。

「…もう、大丈夫だな」

追っ手が來ない事にほっとし、ノエルを下ろす。さっき無理矢理呼び出した反が今更訪れ、倒れかける。すぐノエルに支えられ、苦笑いを浮かべた。

「無茶し過ぎだよ、悠人」

「悪ぃな…」

「…悠人の過去はよく知ってる。でも、もう一度聞かせてしいの」

「分かったよ。でもその前に…力貸してくれ。何か來た」

「何かって……っ?!」

流石に目を疑った。今目の前に居るのはカグツチで俺達がこの世に存在を定著させてしまった人、テルミ(本か?)が立っていた。歪んだ笑みを浮かべている…

さてさて、この後どうなるでしょうか

それは次で分かると思います。では((｡´･ω･)｡´_ _))ﾍﾟｺﾘ