《スターティング・ブルー〜蒼を宿す青年〜》十五章 ─ 蛇と十六夜 ─

「よぉ…久しぶりだな?」

「なんで…お前が?!」

あの時以來、といった所だ。カグツチで俺とノエルが"眼の力"でこの世に定著させてしまった存在。『六英雄のユウキ=テルミ』。そして、俺が最も忌み嫌う奴だ。

「なんでって、そりゃあ…お前らが俺様をこの世に定著させたんだろ?その眼の力で観測みたからなぁ!!ヒャハハ!!」

「ちっ…ノエルっ!!」

「う、うんっ」

定著したとはいえ、その躰を破壊すれば無力化出來る。かといってノエルに無理をさせる訳にもいかず、さっき使った"ブラッドミスト"を再び使った…のだが。何故か不発に終わった。

「……事象干渉か」

「ご名答。予め干渉しといたんだよ、ツバキ=ヤヨイ中尉と戦ってるのを見ていたからなぁ?」

「はぁ…厄介極まりない」

兎に角逃げる事は出來なくなった。だったらぶっ飛ばすだけだ。ノエルの側に行こうとした時、 見馴れた人が降ってきた。ツバキだ。分斷された形になり、不利な狀況になる。

Advertisement

「ちっ…対策済みってか?」

「そーゆー事。手を繋いだ時に発揮される力、俺様にはちょーっと厄介なんだよ」

「はぁ…ノエルの事、馬鹿にしてるだろ。今のノエルは…俺と同等の力を持ってる」

事実をぶっちゃけてやった。此奴はノエルを下に見てる。だったら裏をかいてやるのが道理だろう。

こんな形でツバキと戦う羽目になるとは思わなかった。だけど、あの時の私とは違う。悠人と繋がった(力だけ)せいか、私のには自分の力と悠人の力が流れてる。流石に魔道書はリスクが高いから使えないけど、戦闘力は上がっている。

「行くわよ…ノエル」

「分かった、ツバキ」

先手必勝、式の補助なく加速。そのまま足払いをし、制を崩させた。ノーモーションで『零銃・フェンリル』を呼び出して。流石に防がれたが、悠人から借りた細剣を持ち、再び突進。連撃を加えていくが、ことごとく防がれる。

「やるわね…」

ツバキがそんな事を呟き、制を整え直した。その時、蛇の頭部を模した鎖が飛んで來た。後ろに居た緑髪の男…テルミが発したと思われる。だが、私に屆く前に斬られた。勿論、悠人がやった。

「余所見すんなよ、テルミ」

「いや何、ツバキ中尉がピンチだったもんでよ?」

「あ?外道が何他人を心配してんだよ。言っとくが、ノエルに傷つけたら只じゃ済まさねぇからな」

「過保護だな、お前」

「言ってろ!!」

悠人も戦ってる。なら、私も負けてられない。でも…親友のツバキを傷つけるのは気が引ける。そもそもなんで私と戦わされてるの?確かに私は亡命したけど、それは悠人の為を思っての事。後悔なんかしてない。

「ツバキ…ごめん」

首に手刀を叩き込み、昏倒させた。これで二対一。今度こそこの男を倒す。そう誓った時だ、重力が急に強くなり、私と悠人は立っていられなくなる。

「(ちっ…よりによって魔法かよ。面倒な事になったな)」

この現象が魔法だと瞬時に理解し、ハートネイズを呼び出した。強引に突破しようとしたら出來ない。ハートネイズの能力自封じられている事に気づいた時には遅かった。奴のハイキックをモロに喰らってしまい、天高く打ち上げられた。

「悠人?!」

「の野郎!!」

あの力を解放しようとした時、右腕が無い事に気づいた。よく見ると何かに食い破られた跡がはっきりと殘っている。意識し始めたら激痛が襲いかかり、そのまま落下した。幸いにもは止まっていたが、傷口が空気に曬される度に気が狂う程の痛みが俺を襲う。

「いっ…てぇ……何しやがった…?!」

「お前が予想した通りだ、悠人くぅん?」

「ウロボロスか…」

さっきノエルに向けて飛ばした鎖。あれがウロボロスで間違いないだろう。此奴が所持している事は予想外だった。事象兵アークエネミーで傷つけられた傷はそう簡単に治らない。こうなったらとりあえず退避するしか手は無い。

「ノエル!!一旦退くぞ!!」

「させるかよ!!」

テルミのウロボロスがを貫く。かと思った矢先、姿が掻き消える。ブラッドミストで形作った偽だ。

「ばーか。こっちだよ!!」

「んなっ…?!」

腹のど真ん中に渾の一撃を叩き込み、軽く數十メートル吹っ飛ばした。ツバキも起きる気配は無い為、そのまま離。片腕の犠牲だけで逃げられただけよしとしよう。

「やるじゃねぇーか…悠人…」

吹っ飛ばされた先でふらつきながら立ち上がる。躰はズタボロだったが、時間が経てば回復するだろう。"俺様の為に造られた躰"は、やわじゃない。『再生能力リジェネーター』まではいかないが、それなりの回復能力はある。本當、大佐様様だなと心毒づいた。

「さて…そろそろ退散しますかね」

帽子を被り、テルミを隠す。そこに居るのは統制機構諜報部、ハザマ大尉だ。ハザマの中が俺だと言う事は大佐とあの方くらいしか知らない。第十二素は知ってるかどうかは知らないが。

「全く、人使いが荒いのは苦手ですよ…」

そう言いつつ、退散した。

ひとまず退避には功したが、片腕が無い狀態でどうするか考えていた。ウロボロスは予想外だった為、対処が出來ずにこうなった。片腕が無いと軽くなるんだなと心思いつつ、休む事に。

「大丈夫なの…悠人」

「大丈夫、じゃないわな。こりゃ…」

「…ねぇ、予備とかは無かったりするかな?」

「予備って…義手の事か?」

ノエルに言われ、考えついた。何かを腕の代わりにすればいい。だが、そう簡単に見つかる訳でも無い。あるとしたら…ハートネイズを義手の形にして接続、という荒療治だ。リスクも高い上にやった事は無いからどんな副作用があるか分からない。が、試さないと一刻を爭う事になるだろう。

「…ハートネイズ。それを腕の形にしてくっつける他無いだろ」

「荒療治、じゃない?」

「だとしてもだ。このままだとなかれ奴とは戦うが、不利になるだろ。だったら多危険な道でも渡らないと駄目だ」

「悠人がそう言うなら…手伝う」

「さんきゅ」

普段は霧の狀態で周囲を漂う剣になってしまった剣を義手の形にすべく、ノエルの助力も借りてなんとかした。後はくっつけるだけだが、ちゃんと適合するかどうかが怪しい。慎重にくっつけた時、まるでそこにあったかのようにすんなり収まった剣。これなら大丈夫かと思ったが…

「……馴染まない、な」

「時間はあるの…?」

「無い、な。仕方ない…カカ溫泉行くか…」

再び傷を癒す為、一旦カカ溫泉に向かう。その為にタオカカを探し回ったが、貓らしく何処かに居るのは分かっているのに全然見つからない。結局、日が暮れた頃にやっと見つかった。最初はびっくりされたが、流石順応が高いだけあってすぐ気にしなくなった。忘れっぽいだけかもしれんが。

「派手にやってくれたよ、全く…」

そうボヤきつつ、疲れやその他諸々を取る為にゆっくりと浸かった…

「悠人…って、どうしたその腕?!」

「あー、やらかしただけだ…」

「やらかしたって…何かに食い破られたっぽいが…」

「まぁ、それは後にしてくれ…」

此処にきてラグナに説明するのも面倒いし、テルミの名前を出したら厄介極まりない。とりあえず後回しにし、ゆっくり休む事にした。ノエルは相変わらず俺の側から離れない為、さりげなく肩寄せして落ち著かせる。片腕が無い(義手代わりにはめている大剣はかない為、実質片腕無い狀態)と不便だ。ノエルも心配しているのだろう。

「(次はぜってぇ倒す…!!)」

そう、心に誓った。

ではでは、次でお會いしましょう((。´・ω・)。´_ _))ペコリ

    人が読んでいる<スターティング・ブルー〜蒼を宿す青年〜>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください