《スターティング・ブルー〜蒼を宿す青年〜》二十五章 ─ 絶の始まり ─

一月の終盤、それは起きた。

空が赤黒く染まり、嫌な予が漂い始める。

その時思った。帝達がいたと。滅日の前兆が世界に広がっていくのをじた。

「……行くか」

こうなっては安全な場所など存在しない。

《守護者》としての役目を果たすべく、元兇が居ると思われる統制機構イカルガ支部の頂上を目指して走る。後ろからついてくるのは、ノエルとセリカ、ミネルヴァの三人(ミネルヴァは機械だから人として數えていいのか分からないが)。俺が行くと言ったらついて行くと言い、引きそうにもなかった為渋々俺が折れた。頑固なのは誰に似たのか知りたい所でもある。

「(まぁ……いいか。負擔はあの時より軽いし)」

セリカにはミネルヴァがついているから大丈夫だ。何せ博士が開発したものだ、戦闘力は高いんだろう。

ノエルは俺が守ればいいんだが、念の為模倣事象兵「ホークトリガー」を渡しておいた。護用はあった方がいい。ベルヴェルグは消滅してしまった為だ。

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「間に合う筈だ…」

そう呟き、速度を上げた。

統制機構頂上。

そこに居るのは一人の男。見た目はラグナに酷似しているが、髪型や裝備を見る限り、どうやら違う人らしい。

「……面倒事だけは勘弁してくれよ」

何の因果か運命なのか、別の世界から呼ばれたらしい。これも神アマテラスがやった事なのかは不明。だが、敵ではないようだ。

「さて、俺は誰の味方をすればいいのかなっと…」

そう呟きながら、頂上から飛び降りた。

自殺行為だと誰もが思うだろう。だが、コレが彼の日常だった。傷一つ負わずに著地した彼はそのまま地下へ向かう。まるで、窯の存在を知っているかのように。

「ま、適當でいいな。この世界を守るのは俺の役目じゃねぇし」

統制機構に辿り著いたと同時に誰かの気配をじる。

よく目を凝らして見れば、白髪混じりの青年が地下へ向かう所を目撃した。今まで見た事が無い人の為警戒はしておく。

「悠人?」

「……いや、何でもない。さっさと行こう」

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「うん」

ノエルに急かされて突する。

セリカはと言うと、方向音癡っぷりを発揮してはぐれていた。ミネルヴァがついているにも関わらず、だ。

道中でラグナに會い、共に向かったのは言うまでもない。

「さてと。そろそろ使うか…」

悠人達よりさきに著いた謎の青年。

靜かに神統一をすると、一気に解放する。己のに潛む、力を自らのを介して外へ出す為に。

そして一言だけ言う。

「─────喰らえ」

それが鍵になっているのか、一瞬のに青年は化と化す。赤黒い狼、兇暴を前面に出した狼がそこに居た。

「(さてと、呼ばれたからにゃ暴れさせてもらうぞ)」

「っ?!」

向かう途中で悍ましい気配をじる。

ラグナの『ソウルイーター』とは又違う気配。破壊の為に存在するかのように漂うそれをじた時、咄嗟にノエルを抱えてその場から跳んだ。次の瞬間、悠人達が居た地面が何かに喰われたように抉れ、々しさを放つ。

「おいおい……灑落にならんぞ、コレは…」

「悠人…大丈夫、かな」

「嗚呼……ノエルは守るからよ」

「…ありがとう」

ひとまず抉れた地面の下、地下へと向かう。

それにはさっき出來た大に飛び込むのが手っ取り早い。意を決して飛び込み、地下へ。

軽く數百メートルあったが、そこは《守護者》の力を応用して衝撃を無くす。

「(嫌な予バリバリなんだがな…やるしかねぇ!!)」

固く誓い、その先へ向かう。誰が待ちけてもいいように。

「おっ、誰か來たな…」

こちらへ向かってくる気配をじ、楽しみで仕方なかった。何せ俺だけが此処に呼ばれたからな。マトモに話せる奴がいいんだが……

そう思いながらやってくる人を視界に捉えた時、面食らった。男二人組だったからだ。男の方は隠しきれていない猛者のオーラを出しているが、の方は多強いかなってじるだけだ。

「っと…アンタ、誰?」

「名乗るのは己からって言うだろが」

「嗚呼そうだったな…んじゃ、名乗らせてもらう」

二人組の自己紹介を聞いた。男の方は桐生悠人、だがハルト=ヴァーミリオンとも名乗っていた。の方はノエル=ヴァーミリオンというらしい。兄弟って訳じゃないとしたら、こいつ等は人同士って事か。

「ほれ、アンタの名前は?」

「そう急かすなっての。今名乗るからよ」

改めて名乗るとなると、し照れくさい。

俺の名前を聞いた桐生悠人はなんとなく知っているかのように頷いていた。対するノエルはと言えば、意図的に目線を外してやがる。他人が怖いのか?

「スタン=C=アルデオ、ね。んで、その力。ドライブ能力とは又違うな。それは一なんなんだ?なくとも俺は見た事がない」

「嗚呼、この力か。正式名稱は《喰らう者イーター》という。人は勿論、無機ですらコイツの前では無意味だ」

「なるほどね…通りで異質な力の筈だ。世界を変えるどころか破壊する為にあるようなもんだしな…」

「生まれつきだから仕方ねぇよ、こればっかりは。制出來てるのも努力したからだ」

「制出來てるのか。なら安心だな。俺も似たような力を持ってるし、気が合うかもしれねぇな…」

俺の説明に対し、桐生悠人この男はやけに興味津々のようだ。それほど珍しいのか、この世界での能力持ちは。だったら、俺はこの二人と協力してやってもいいだろう。目的を果たせるようにサポートすりゃいい。

「なら、俺の力。お前らに貸す。その為にこの世界に呼ばれたのかもしれねぇしよ」

「あ、嗚呼。助かる…って、呼ばれた?!」

驚きを隠せないようだ。それもそうだ、俺ですら信じられない。だが、コレも運命という奴だろうな。

謎の青年の正が分かったところで、改めて帝の元へと向かう。道中ノエルに小突かれてばかりだったが。

「なんで宣言しちゃうのかな…恥ずかしいよ、私…」

「別にいいだろ…?」

「良くない…」

「あー……悪ぃ」

はたから見たら癡話喧嘩に見えるが、なんとか辿り著いた。立ち止まった正面を見據える。

目の前に居るのは一人の男。金髪にマント姿と言えばあいつしか居ない。

「レリウス…!!」

「來たか。蒼の守護者、ハルトよ」

「嗚呼、み通り來てやった。ぶっ飛ばすから覚悟しやがれ」

「ふっ、やってみろ」

俺は漆黒の大剣を、ノエルは俺お手製の銃を、スタンはと言うと…素手だった。まぁ、あの力があるから大丈夫だろう。余りにも強すぎる力だが。

「んじゃ、先手はいただくぜ」

先にいたのはスタン。素手だったのがいつの間にか獣の形になっており、レリウスが召喚した機械式の腕を容易く噛み砕く。そのまま左手で毆り飛ばしていた。その隙を使い、複製した大剣をレリウスの周りに展開し、一斉に放つ。スタンはそのの一振りを摑み、特攻していった。打に蹴りと、荒々しい。一方ノエルは波デトネーター・イグニスと一騎打ちだ。

「無茶苦茶すぎんだろ?!」

「俺の世界じゃこういうのは當たり前なんだよ」

「そ、そうか」

異世界に行ってみたいという気持ちはあるが、スタンの世界には行きたくないとじた。

「始まったか。闘いが」

上空に漂う一人の。このこそ統制機構のトップである帝だ。だが、この帝こそが元兇である。

果たして、悠人達は世界を守れるだろうか?

二十五章…結構書いてたんですね(真顔)

今回は私が書き進めているもう一つの小説「starting shift」の主人公も出しました。この闘い限定ですが。

では又お會いできたら嬉しいです

(想お待ちしております)

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