《フェンリル》unknown
その日、志禮は朝から機嫌が悪かった。
悪夢にうなされ、同僚にぐらを摑まれたのだから。
それでも仕事で銃を握る以上は訓練をすることは義務である。
しかし、その日は更にいつもと違う日となる。
志禮「撃訓練か、ダルい。」
倉須「そんなこと言わずに、ちゃんとしないと戦場で地獄を見ますよ?」
志禮「桜木見たく刃で戦いたい。」
桜木「お?呼んだか?」
志禮「名前は発音したが呼んでいない、失せろ。」
いつもこのノリである。
このノリは変わらないが、やけに報部があたふたしていた。
志禮は報部の九十九に問いかけた。
志禮「なんでこんなに焦ってるんだ?」
九十九「なんでじゃないわよ!函館空港に自衛隊の兵員輸送機が著陸したの!!」
志禮「ただの増強じゃねえのか?」
九十九「これだから坊やは、危機がなくて困るわ。輸送機から降りてきたのは正規の自衛隊じゃないの。恐らく傭兵よ。」
志禮「傭兵だと?」
九十九「恐らくね、腕章を見た限りではエースダック隊あたりだと思うわ。」
志禮「なんだ、ただの素人集団じゃないか。」
九十九「でもエースダック以外にも二名だけ別の隊の人と思われる存在が確認出來たわ。」
九十九はその寫真を志禮に手渡した。
寫真は8枚、2人の人の顔が四方向から撮られていた。
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志禮「照合データとかないのか?どこかの退役軍人とか。」
九十九「この護衛のじを見るとかなりVIPのようだけど時間が無くてまだ照合が終わってないわ。」
志禮「これいつの寫真だよ。」
九十九「2分前よ。」
志禮「なら奴らが來るのは最速でも2時間ちょっとか。エースダックは脳足りんだからな、戦闘準備出來たらすぐに攻めってくるぞ。」
志禮はホルスターから銃を抜いて、スライドを引き、薬室を見た。
志禮「しだけメンテナンスしておくか。」
志禮はそう言うと寫真を九十九に返して兵舎に戻った。
志禮は撃訓練をサボった…。
志禮「そういえば、あの寫真の男、何となく胡散臭いな。」
結局それから一日が経ったが、エースダック隊は攻めてこなかった。
志禮「おかしい、あのエースダックが作戦時期を待つことが出來るとは。」
大和「やっぱりあのみたいな男がしきってるんとゃうか。」
志禮と大和は基地の中に作られているバーで話し合っていた。
いつ敵が攻めてきてもおかしくないため、酒は飲んでいないが、喋るには丁度いい雰囲気だった。
大和「だいたいなんでエースダックが俺らの前の船団奇襲のことを知ってるんや?」
志禮「やっぱり、それが絡んでると考えるのが妥當か。」
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大和「ホワールウィンドはアメリカンAAと自衛隊と俺らしか知らんはずやろ?」
大和はそう言うと好みの銘柄のタバコに火をつけて吸い始めた。
大和「そうなると、第三者の介か?」
志禮「どうだかな。なからず自衛隊が傭兵を雇うことは無いはずだが。」
???「自衛隊をってる組織がいたとしたら?」
カウンター席の一番奧から聲がした。
き通るようなの聲だ。
志禮「手洗、敵キャラを出すのはやめろ。」
手洗「バレた?」
大和「お前の演技は迫真で困る(小並)。」
手洗「それはそうと、奴らの目的よ。」
手洗はそそくさと話の容を元に戻した。
手洗「奴らは恐らくホワールウィンドの存在を知らないわ。その証拠に優ちゃん(九十九)が持ってきた敵の武裝を見ると、強力すぎるものが多いわ。」
手洗がエースダックの武裝の寫真を志禮と大和に渡した。
確かにエースダックの武裝は兵を鹵獲する目的のものというよりも基地を制圧するためのものが多かった。
志禮「SCAR Hにグレネードランチャー、一部の連中はジャベリンまで持ってやがる。この基地をひっくり返す気か?」
大和「だとしてもこの基地にたどり著けんやろ。雑木林のレーザー網は相手がルパンでも通り抜けできん。」
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ブーーー!!ブーーー!!
突然、敵接近の急警報が鳴った。
大和「ほれみてみぃ、當たりやで。」
志禮「そんなことはいい、さっさと武裝しろ。」
手洗「あ、私の銃どうすればいいですか?」
志禮「ライトマシンガンLMGだ、早くしろ。」
5分も経たないうちに広場に出可能な隊員が出揃った。
火虎「敵は恐らく報部が察知したエースダック隊だ。ただ、unknownとして銀髪の男と中年の男の兵が混じっている。奴らは恐らく普通では無い、心してかかるように。」
隊員「了解!!」
フェンリルフォースは全員が暗視裝置を裝備して雑木林に散った。
それぞれ各小隊に別れて敵を両サイドから挾撃する作戦だった。
志禮「奴らは火力で押してくる。だがこんな雑木林に7.62ミリを持ってきたのは失敗だな。倉須と黒崎は回り込んで後衛を攻撃、前衛が後ろを向いた瞬間に桜木がいつも通り殺れ。3人ほど殺したらすぐに遮蔽に退避、そこからはアンブッシュだ。」
一同「了解。」
志禮「セーフティを外せ、行開始。」
倉須と黒崎、桜木は暗闇の中に消えていった。
桜木「へっへっへっ、久しぶりだぜ。」
桜木はひたすら刀を眺めながら歩みを進める。
エースダック「敵発見!!撃開始!!」
案の定桜木は敵に発見された。
不用意すぎる。
タタタタタタタタッ!!
サブマシンガンの銃聲が雑木林の中に響き渡った。
黒崎「あの馬鹿!!」
倉須「大丈夫よ黒崎君。彼はあんなことでは殺られないわ。」
黒崎「でも…」
倉須「彼はヤクザの時代から『吸桜』と呼ばれていたのよ、彼なら前衛を殲滅できるわ。」
倉須の言う通り、桜木は5人の前衛に対して善戦していた。
サブマシンガンを裝備したエースダック隊は暗闇の中で現れては消えてを繰り返す桜木に圧倒されていた。
エースダック「なんだこいつは!!」
エースダック「撃て!!早く殺せ!!」
タタタタタタタタッ!!
どれだけ撃っても桜木には當たらない。
それどころか姿も見れない。
すぐそこに居るのに姿を捉えられない。
桜木「お前ら弱すぎだな。」
エースダック「後ろか!!」
タタタタタタタタッ!!
エースダック「ぐはっ!!」
エースダック隊員は桜木の聲のする方向を撃ち、同士討ちになっていた。
エースダック「なんて野郎だ!!」
桜木「どうした?俺はここだ。」
エースダック「何!?あれ?」
エースダック隊員は何かを探していた。
何かを探していろんなところを見ている。
桜木「探しはこれか?」
桜木は丁寧に敵兵の左腕に何かを摑ませた。
桜木「落しだ。」
エースダック隊員の手に渡されたのはエースダック隊員の右腕だった。
エースダック「う、あ…あ。」
桜木「うっかり落としちゃった見てぇだな。」
あまりにも殘酷な攻撃だった。
敵の腕を切り落とし、あえて敵兵に手渡した。
エースダック「うわぁぁぁぁああ!!痛い!!いだぃ!!!!!!」
桜木「前衛は壊滅した、ケツ持ちと中衛は2人とアンブッシュ隊に預けるぜ!!」
桜木は無線を終えるとすぐにその場から離れた。
するとすぐにエースダック隊の中衛がやってきた。
中衛は30名からなる中隊レベルの大きな部隊だった。
數の前衛と後衛で主力を守る作戦だった。
倉須「やっぱり、かなり多いわね。」
黒崎「2人じゃまず無理ですね。」
倉須「落ち著いて、私達の標的はこれの後ろに続く後衛の部隊よ。中衛はアンブッシュ隊が撃滅するはず。」
2人はじっと待ち構えていた。
中衛は茂みの奧に消え、時期に後衛の部隊も現れた。
黒崎「來た。」
黒崎はマグプルMASADAのグリップを強く握った。
倉須「力み過ぎよ。」
黒崎「す、すみません。」
倉須はヴェクターを構えて指で黒崎に合図を送った。
倉須(3、2、1、今。)
ズダダダダダダダダタッ!!
タタタタタタタタッ!!
エースダック「な、奇襲!!」
志禮「これで前衛と後衛が死んだな、奴らはスモークを炊いて接近する筈だ。今夜は満月、スモークを炊いても月明かりで人影が目視できる。」
志禮の言う通りエースダックはスモークグレネードで視野を防ぐ作戦に出てきた。
この作戦は普段のエースダックならまず考えつかない。
それほど低レベルな部隊だった。
しかし、今回は敵部隊を指揮している人がそれなりに頭の使える人間だということだ。
函館空港に降り立った2人のデータ不明の男達は恐らく中衛部隊でビクビクしながら指揮を執っているはず。
そう誰もが考えていた。
この男以外は。
ベルナルド「unknown、恐らく奴らは中衛には居ない。オープンチャンネルを使用せずに特別な周波數で無線越しに指示を出しているはず。中隊を間近で見た倉須からunknownを見たという報が無いことからも明らかだ。」
火虎「となると、例の2人は単獨行を行うスナイパーが妥當なところか。」
ベルナルド「だが、スナイパー故にこの地形ではポイントが絞られる。この位置からだと、開けた丘、ポイント2だ。」
火虎「手洗、そこからポイント2が見えるか?」
無線越しの火虎の問いかけに手洗は答えた。
手洗「はい、丘の上、人影が確認出來ます。」
火虎「威嚇撃で構わん、直ぐに攻撃しろ。」
手洗「了解。」
ズドドドドドドドドドドドッ
突然の撃に丘の人影はすぐにに隠れた。
手洗「やはり400メートルも離れていては當たりませんね。雙眼鏡と月明かりがなければ人影にすら気が付かなかった。」
???「連中、こっちの存在に気がついたのか。勘のいい奴がいるようだな。」
エースダック「スモーク撒きました、次の指示を、トップガン隊長。」
トップガン「よし、散開して各々に基地を目指せ。」
エースダック「サー、イエッサー!!」
志禮「連中、分散したな。総員、敵は分散した、しかしスモークの中にまだ紛れている、月明かりに照らされたやつから殺しろ。」
志禮の命令に答える隊員はいなかった。
既にみんな同じことを考えていたからだ。
大和「敵発見、撃ち方始め。」
ズドドドドドドドドドドドッ
エースダック「何だと!?」
エースダック「畜生!!バレてる!!」
エースダック「隊長、奴らに俺たちのきがバレてます。」
トップガン「ちっ、場馴れしているな。先陣を切って相手をずた袋にしてやる予定だったが、こっちがずた袋に詰められかけてる。」
暗視裝置を裝備し、立地を把握し、敵のきをある程度読むことが出來るフェンリルフォース。
それとは対象で、ごく一部の暗視裝置に初めての土地、敵のきなど検討もつかないエースダック隊。
勝負はついていた。
エースダック「ダメだ、バレた!!ぐはっ!!」
エースダック「こちら中衛隊14番、敵に位置が見していま…ズドドドドドドドドドドドッ」
無線からは阿鼻喚の斷末魔と隊員の命を奪う銃聲が止まることなく聞こえる。
トップガン「やはり安上がりな部隊だ、まるでお話にならない。」
???「それは同だ。」
トップガン「誰!?」
手洗の線から隠れていたトップガンの後ろに志禮が立っていた。
志禮は銃を構えることもせずにただ突っ立っていた。
トップガン「へえ、フェンリルフォースの凄腕部隊長ってところね。」
志禮「ただの一兵卒だ。」
トップガンは銃のSSG3000を手に取って志禮に向けた。
志禮「この距離でライフルは即死確定だな。」
トップガン「ならかない方がいいわ、手を後ろで組みなさい。」
志禮「わかったよ。」
ゆっくりと手を後ろで組もうとする志禮、しかしトップガンが冷や汗を拭おうとした瞬間、志禮の手は即座にホルスターにび、M1911を抜いた。
トップガン「な……」
パァァン!!
1発のかわいた銃聲が鳴り響いた。
気が付くとトップガンのライフルは銃口からアメリカのコメディーのようにめくれ上がり、チューリップのようになっていた。
志禮「絶対的有利で気を抜くのは頂けないな、男。」
そう言うと志禮はトップガンのすぐ近くに歩み寄った。
志禮「反撃してこないってことはサイドアームを持っていないのか。まあいい、ボディチェックさせてもらう。」
志禮は頭に毒針を隠していないかトップガンのし長い黒髪に手をばした。
すると、黒髪は取れてしまった。
志禮「……?」
志禮の手にはさっきまでトップガンの髪のだと思っていたカツラが握られている。
志禮「どういう事だ。」
トップガン「荒くれの傭兵はについて行くなんてこと、基本はしないのよ。」
志禮「手前、か。なる程な、胡散臭さが漂っていたのはこれのせいか。」
トップガンのいきなり変わった聲と口調を聞いてすぐにわかった。
かつらの下は寫真で見たき通るような銀髪。
間違いなく函館空港で撮影された人だった。
志禮「こちら雪風、unknownの1人を発見。その場で軽く話を聞いてみます。」
ベルナルド「そいつを無力化して基地に連れ帰った方がいいんじゃないか?」
志禮「得の知れない敵を基地にれるのは名案じゃない。銃聲は既に止んでるし、エースダック隊は壊滅しているはずだ。」
トップガン「フッ……」
トップガンは志禮の無線を聞いて吹き出した。
志禮「何が面白い。」
トップガン「殘念だけど、まだ居るわよ。」
この一言の瞬間、志禮の足元の石が弾け飛んだ。
ピシュッ!!
ドォォォォン
遠くからは7.62ミリ弾の銃聲。
志禮「ちっ、マークスマンか。」
志禮たちの位置から南に約400メートル。
そこには函館空港で撮影された二人目のunknownがフェンリルフォースを迎え撃とうとしていた。
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