《フェンリル》過去の出會いは今

志禮「ん、ここは…」

志禮の目の前には深い緑が延々と広がっていた。

その緑は北海道基地の周りの雑木林とは全くの別だった。

志禮は汗を垂らしながらも斜面を下り始めた。

森山町は飛騨の麓、降りていけば森山町につかなくても森山町行きの通機関を利用出來ると考えたからだ。

そして30分ほど歩いていると、車道に出た。

車が走っている気配はなく、本當の峠道のようだった。

しかし、車道に出たと言うことは地図である程度の位置がわかるということだった。

志禮は地図を開いてその車道を下っていった。

【2時間後】

志禮「はぁ…はぁ…、やっとついた…。」

志禮は緑生い茂る山からやっと抜け出した。

そこは田んぼの広がる涼しげな田舎町だった。

街の中心には役場があり、その周りには平屋が建ち並んでいる。

夜9時には閉まるコンビニに、中學生や高校生がカラオケ替わりに通うカラオケスナック。山の上にある高校。何もかもが地図通りだった。

志禮「ここが森山町か。」

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志禮はまず役場に向かった。

役場は発地點から500メートルの場所に位置し、ほぼ町の中心だった。

志禮は役場の冷水機で水を飲むと、発地點に向かった。

発地點は大きな敷地を持つ民家だった。聞く話によるとどうやら町長の実家のようでかなりの金持ちのようだ。

志禮は異常が見られなかったことを確認すると聞き込みを行った。

怪しまれないように設定を考えて聞き込みするようにした。

ちょうど畑仕事の休憩中のお爺さんが居た。

志禮「すみませーん。」

お爺さん「はい?」

志禮「僕、ミリタリーマニアで自衛隊の活を記録してるんですが、最近この町に自衛隊が來たことってありますか?」

お爺さんは首をかしげている。どうやら最近自衛隊が來たという事実はないようだ。

志禮「最近でなくても今年中に來たこととかは….」

お爺さん「ああ、それなら6月に來ましたよ。土砂崩れでこの町が孤立したときに、土砂の撤去と生活用品を持ってきてくれました。」

志禮「なるほど、土砂の撤去にはどのような機材が持ち込まれていましたか?」

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お爺さん「ドリルやショベルカーや、そう言えばブルーシートを被せられた大きなものが運ばれていたが、何故か次の日からその近辺は近寄れないようになってたんです。」

志禮(一般市民に見られたくないか…)

志禮「參考になりました、ありがとうございます。お禮と言ってはなんですが、これをどうぞ。」

志禮はお爺さんに北海道のお土産で有名なクッキーを手渡してその場を去った。

志禮(搬されたもの、それが何なのか…分からないことには何ともならないが報は聞き出せた。)

【2037年、北海道基地】

枝吉「さて、君に伝えたいことがある。」

火虎と枝吉は指揮室のソファーに腰をかけて靜かに話をしていた。

火虎「私の処分の件ですか?」

枝吉「それは不問だ、あれは我々が勝利するための行として必要なものと私は判斷した。」

火虎「そうですか。」

枝吉「それに、不名譽除隊クビの書類を書くのが面倒で仕方がない。このことは私も忘れよう。」

火虎「ハハッ、そうですか。」

火虎(適當にも程がある。)

枝吉「さて、それにしても厄介事を持ち込んでくるのは一流だな。」

枝吉は出されたお茶をひと口飲むと続けた。

枝吉「今回の襲撃の件、敵の軍部にはまだ知れ渡っていないが、厄介な連中が何故か嗅ぎつけたようだ。」

火虎「厄介…プライベートフォースですか?」

枝吉「いや、もっと厄介だ。アメリカンAAが今回の被害者ということもあり、アメリカがそれを嗅ぎつけた。」

火虎は驚いた。

アメリカなどという大國が奇襲のことを1番に察知したからだ。

このままではフェンリルフォースが攻撃されると思い込んでいた。

火虎「軍がくということですか?」

枝吉「いや、そうはならん。アメリカはこのことに気がついてはいるが軍部にそれを伝えているかと問われると恐らくまだだ。いや、伝えることは無い。」

枝吉はお茶と一緒に出されていたみたらし団子を手に取り、そのみたらし団子でテーブルに3つのアルファベットを書いた。

S

A

D

火虎「SAD?」

枝吉「我々の行にいち早く気づいたのはCIA、それも國家本部の配下にあるSADだ。奴らは不正規戦などのスペシャリストで、日本の特殊部隊なんかよりも高度な技を持っている。」

みたらし団子を口の中に詰め込みながら枝吉は口を進めた。

枝吉「SADが行しても公には記録は殘らん、奴らはCIAの直屬の部隊だ。軍がくよりもバレにくい。本っ當にPOOの連中は腹が立つ。」

火虎「POO?」

枝吉「準軍事作戦擔當、要するにCIAの戦闘員さ。あの連中は灣岸戦爭でも隨分と裏で暗躍していたようだな。戦爭後、我々の傭兵部隊はアメリカ陸軍の悪事を知ったことで奴らに追われた。連中のおかげで戦友は全員浄土送りになったよ。」

火虎「なるほど、それがまた貴方の目の前に現れようとしているってわけですか。」

火虎は笑いながら言った。

枝吉「笑い事じゃないぞ、奴らは電子戦が得意なんだ。夜戦に持ち込まれれば苦戦は確定だ。」

火虎「それに勝つためにその雑木林に対人用の罠を張り巡らせているんですよ。ワイヤーからブービートラップ、はてまた輸した対人地雷。この周辺は一般市民立止なので思う存分に罠を仕掛けれる。」

枝吉「流石だな、勝利主義は嫌いじゃない。」

枝吉はソファーから立ち上がり窓を開けて葉巻を吸い始めた。

枝吉「君も我慢しているだろう、し吸っておきたまえ。」

火虎「ではお言葉に甘えて。」

2人で窓際に立ち、モクモクと煙を吐いていた。

枝吉「奴ら、我々に勘ぐられないようにアナログな方法で通信していたようだな。」

火虎「アナログですか。奴らも考えましたね。」

枝吉「モールス信號だ。しかし奴らも馬鹿だな、我々が最新の通信機を使えるとでも思っていたのか。我々も本部の一部ではモールス信號を使っているのに。」

火虎「それで奴らの報が洩したわけですか。」

枝吉「暗號解読もさほど難しくはなかったらしい、ここまで來たら罠らしくて仕方がない。しかし、あの行の早さは確実に焦っている証拠だ。暗號を作る暇もなかったんだろうな。」

火虎「CIAを焦らせる、中々楽しいことです。」

枝吉「同だ。」

【2034年、飛騨、森山町】

志禮は行き詰まっていた。

自衛隊が何かを持ち込んでいたという報はいくつもあるのにそれを見た者が一人もいない。

志禮「はぁ、疲れた。発は明日だっていうのに。」

泣く泣く志禮はコンビニに晩飯を買いに向かおうとしていた。

すると田んぼの一本道で向こうから子高生が歩いてきた。

志禮「部活か、いいなー、俺は部活する前にムショにったからな。そう言えば木工製品部だったっけ。」

志禮は刑務所時代を思い出しながらその子高生とすれ違った。

すると後ろから聲がした。

子高生「なによあんた。」

振り向くと志禮の後ろを歩いていたチャラいじの男が子高生に絡んでいた。

金髪で白いスーツを著ていた。

志禮「ヤクザか…ガラ悪いな。」

志禮は何となくその場を離れようとしたが、興味本位でしだけそれを見ていることにした。

男「今から橫浜行くんだけど一緒に行かない?こんなド田舎よりも楽しいぜ?」

子高生「知らないわよ、帰らせてよ。」

男「いいじゃんかよ。」

子高生「らないで!!」

パシッ!!

子高生は男にビンタを1発見舞した。

男「このズベ公!!何しやがる!!」

男は子高生のぐらを摑んで拳を握りしめた。

男「気の強いは躾ねえとな!!」

子高生「きゃぁぁぁぁ!!」

パシッ!!

気がつくと志禮は男の腕を摑んでいた。

志禮「やめろよ。」

男「なんだお前!!ぶち殺すぞ!!」

志禮「やれるもんならやってみろよ、お前もムショの中を験するといいさ。」

男は志禮のぐらを思いっきり摑みあげた。

男「調子に乗りやがってこの青ガキが!」

男が志禮を揺さぶると、志禮の脇のホルスターに男の手がれた。

男「ん?なんだそのいのは、出せ!」

志禮「……」

男「出せって言ってるんだよ!!」

志禮「……黙れよこのイキリナマズが。」

男「てめぇぶち殺してやる!!」

男はのポケットから小型のナイフを取り出して志禮を刺そうとした。

ズドォォン!!

チャリーン!!

気がつくと志禮の手にはピストルが握られていた。

男は手を撃たれて手にを開けていた。

男「う、ぐぉぉ!!痛え!!」

志禮「ナイフを使うときはせめて無駄なきなしで一挙で振り抜かねえといみねえだろ?」

そう言うと志禮は男の首筋に落としたナイフを持って行ってギリギリで止めた。

男「お、お前、何者だ!!」

志禮「……國防軍フェンリルフォース所屬、雪風志禮。覚えても意味無いから忘れろ。」

志禮はそう言うと男を起こして逃がした。

志禮(參ったな、咄嗟に銃が出てしまった。これは面倒になりそうだ。)

子高生「あの、助けていただいてありがとうございます。」

志禮「ああ、いえ、當然のことをしたまでです。」

子高生「貴方、ここの人ではないですよね?」

志禮「ええ、ここに來たのは初めてです。」

子高生「泊まるところはありますか?」

志禮「野宿の予定ですが。」

子高生「良ければ泊まっていってください、部屋は余っているので。」

志禮「え、あ……本當にいいんですか?」

子高生「助けていただいたのです、これくらいはお禮として當然です。そう言えば、申し遅れました、私、目白時雨と申します。」

志禮「日本國防軍、雪風志禮です。よろしく。」

志禮はとんでもない流れで一人の子高生と知り合う形となった。

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