《フェンリル》病室の世間話
時雨「あれ…ここは……」
北海道基地の病室、時雨からすれば見たこともない部屋に寢かされていた。
九十九「志禮!!目覚めたわよ!!」
時雨のベッドの橫には若そうだけどやかましいの人が志禮の名前を連呼していた。
反対側を見ると別のベッドがあり、そこには一人の高校生くらいのの子が呼吸を付けられて寢かされていた。
志禮「起きたか!!」
病室の扉を勢いよく開けて志禮がってきた。
志禮は時雨の目の前に駆け寄り、話しかけてきた。
志禮「俺の名前分かるか?」
時雨「志禮……」
志禮「通っていた高校は?」
時雨「県立森山商業高校。」
志禮「よし、記憶系は大丈夫だな。」
志禮はそう言うと時雨の手を摑んでこれまでになかったような目で話しだした。
志禮「無事でよかった。」
時雨「志禮、ここはどこ?」
時雨はまだ揺していた。
志禮がいた事によって、しはマシになっていたが、周りには知らない若い、さらに隣のベッドでは同年代くらいのの子が頭部に包帯をまかれて寢込んでいる。
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揺する時雨に志禮は説明した。
志禮「ここは2037年の北海道基地、俺達は2人でここにタイムワープして來た。」
時雨「タイムワープ?どうしてそんなことに?」
九十九「あの裝置の原力は裝置に組み込んである小型の発電機、でもその裝置の本領を発揮するために必要なものがもう一つあったの。」
志禮「それは俺も初耳だぞ。」
九十九「調べたところ、丁度3年前にアメリカンAA社が新しい放線質をマントルで発見したの。」
志禮「初耳だぞ。」
九十九「志禮は黙って、これは貴方が姿を消した後に私が極に集めた報よ。まだ隊長にも伝えてない。」
志禮はだまれと言われてから喋らなくなった。
九十九「この質はアメリカンAAのみが使用出來る放線質とされているの。名前は不明だけど、どうやら細胞あるいは粒子、原子などを破壊せずに分解することが出來るらしいわ。」
九十九「更にそれに高熱をプラスすると分解された細胞はその放線質の反応できを加速させ、そのスピードがマックスになったときに一時的にごく微量の電気を流すとタイムワープできるという仕組みらしいわ。」
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九十九の解説に2人は止まったままだ。
もちろん2人とも理解出來ていない。
志禮「100年後のテクノロジーか?」
九十九「通常なら実用化されるにはあと30年は必要とされていたわ。でも新放線質を発掘したことにより、実用化は恐ろしいほど早まったわ。」
志禮「その最終実地試験を自衛隊を使って行い、そのまま配備される予定だったってわけか。」
時雨「なるほど、わからん!!」
開き直った時雨の前で銃を出して中を確認する志禮。
それを見て時雨の目はし悲しげになった。
志禮「どうした?俺が銃を握っているのは初めてじゃないだろう。」
時雨「うん、でも志禮を見てるとやっぱり軍人なんだなって。」
志禮「…………。」
時雨「なんで軍人になったの?志禮ならもっと別のことが出來たでしょ?」
この問いかけに志禮は答えなかった。
時雨「志禮は本當は優しいんだって、さっきの私を心配する目も本だって分かってる。なのになんで相手を傷つける仕事をするの?」
九十九「ちょっと、やめなさい。志禮にも事が……」
志禮「九十九、しだけ部屋から出てくれ。どうして俺がここにいるかこいつに説明する。」
志禮は戦闘中に見せる鋭い目を九十九に向けた。
九十九は黙ったまま渋々部屋から出て行った。
志禮「さて、俺がここにいる理由か?」
志禮は椅子に座って語りだした。
志禮「俺は高校1年の時に親の仕事の都合でとある高校に転校したんだ。だが、高校の生徒の恒例行事の『新人いびり』にあっていじめられていた。毎日顔面はアザまみれ。靴の中には押しピンがってて初日は中にが空いてた。」
時雨「うわ〜、痛った。」
志禮「どんどんエスカレートしていくいじめに耐え切れなくなりそうになった頃、3年のイキリがナイフで切りかかってきた。俺は怖くなって一瞬だけ目を閉じたんだが、気がつくと目の前に塗れのそいつが倒れてた。」
志禮「俺は返りを浴びていて、白のシャツがスペースコブラみたいになってた。そこからなんだよな。俺は俺をいじめてきた奴を何日も掛けて1人ずつ殺した。今考えたら正気の沙汰じゃない。」
志禮の話に時雨はドン引きし始めている。
志禮「ある日は自作のボウガンで、ある日は山に仕掛けたトラップでじわじわと、ある日は青酸カリを直に飲ませた。連日何人もクラスメイトが死んでいくのが當時は楽しかった。だが、そんな中で被害に遭わない俺は警察にマークされていた。」
志禮「そして最後の犯行を行おうと3Dプリンターで作った銃を握って外に出た瞬間、待ちけていた警察にお縄になった。
裁判にかけられたがもちろん有罪、判決は死刑。刑務所にぶち込まれて死ぬまで労働させられた。」
志禮「そんな時に國防軍が設立され、兵隊増強のために死刑囚は全員釈放。俺はその流れでここにいる。」
志禮の話が終わった頃には時雨は下を向いていた。
きっと志禮と、目を合わせにくかったのだろう。
志禮「ま、死刑になってたなんて今でも納得だがな。當時の俺は病んでた。そして今でも一部病んでるだろう。」
時雨「それでもきっと志禮は優しいはずだよ。」
時雨は俯いたまま言った。
志禮「よしてくれ。俺は何人も殺したんだ。本當なら死んでた。」
志禮は死んだ魚のような目になっていた。
それは戦闘中の生き生きとした目や、人を心配するような目ではなかった。
時雨「……志禮、私…」
志禮「どうした?」
時雨「……いや、なんでもないよ。」
志禮「そうか……。済まない、近々重要な作戦がある。それの準備を今日中に済ませないといけないんだ。」
時雨「わかった、頑張ってね。」
時雨は志禮に笑顔を見せた。
志禮「分かってるよ。じゃあな。」
志禮もそう言うと時雨に笑顔を返した。
志禮はすぐに病室を出て行き、作戦の準備に移った。
時雨「志禮………」
九十九「イチャイチャしてたのぉ?」
病室にまた九十九がってきた。
時雨「し、してないですよ。」
九十九「つまんないわねぇ。で?どうだったの?」
時雨「何がです?」
九十九「アイツはああ見えて仲間のためなら命張る男だからね。何か言われたの?」
時雨「志禮の過去を聞きました。」
九十九「あ、アレ聞いたの?病むよね〜アレ。私も初めて聞いた時はあいつ大丈夫かどうか心配だったわ。」
九十九は楽しそうに時雨と話していた。
時雨「あの……」
九十九「ああ、自己紹介が遅れたわね。私は九十九優。ここで報擔當として働いてるの。だからあなたのことも知ってるわよ?時雨ちゃん♡」
時雨「あの、志禮のことどう思っているんですか?」
九十九「仲間として好きだよ?でも私年下好みだけどアイツはぶっきらぼうすぎて対象に見れないわ。」
九十九は笑いながら言った。
九十九「アイツは鈍だからね。この前なんて試しにを強調してってみたら元見て『うわっ、寒そう』って言ったのよギャハハハハハハ!!」
時雨「それ、重癥じゃないですか?」
九十九「アイツは昔からそうよ。なくともここに來てからはね。」
時雨は九十九の言い方がし気になった。
時雨「ここに來てから?この部隊に配屬される前は分からないんですか?」
九十九「ええ、舊友とかも無く、高校のクラスメイトは言っていた通り殆ど彼の手で殺害され、親も彼を見放して誰も志禮の過去を知る人間が居ないの。」
時雨「じゃあ志禮は……」
ウゥーーーーー!!!
突然基地の中に急を意味するサイレンが鳴った。
ベルナルドがスピーカーに向けて焦ったじで報告を開始する。
ベルナルド『數分前に沖縄上空を飛行するアメリカ國籍の航空機を発見!!SAD迎撃編員は五分で支度を終えてヘリポートに集合せよ。また、守備隊も武裝して配置につき、奇襲に備えろ。』
志禮「……來たか。」
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