《複垢調査 飛騨亜禮》複垢調査

「今日の案件はどんな奴だ?」

某IT會社に勤務する男、飛騨亜禮ひだあれい。

彼は某巨大小説投稿サイトに依頼されて、今日も複數アカウントによるポイント水増し判定の仕事をこなしていた。

この巨大小説投稿サイトでは、読者のブックマークやポイント評価によるランキングが存在している。

このランキングで人気になれば、出版社からオファーがきて、書籍化作家になれる作者も続出している。

それを見た作者が「複數アカウントによるポイント水増し」という不正によってブックマークやポイントを上げることを思いつくのに時間はかからなかった。

最近では某巨大掲示板のスレから通報とかが來て、小説投稿サイトの運営も疲弊しているということで、面倒な複數アカウントの調査とかが彼の會社に外注されるようになった。

スマホを開発した米國のIT企業は、本社の基幹部門であるデザインやプログラム以外の機能をすべて外注しているが、世界的にもそういうアウトソーイングの流れは顕著である。

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それが個人報流出などの問題も生むのだが、自社ですべての機能を揃えるよりは専門業者に任せるのがコストパフォーマンス的に最良となる。

「ライノべ太郎? わかりやすいアカウントだな」

ライノべ―――おそらく、ラノベなのだろうが、投稿小説本文でも同じ特徴的な単語が使われている。

この時點でこの投稿者はほとんど「クロ」だというのがわかった。

某巨大掲示板の管理人の発言であるが「うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」という名言がある。2000年の西鉄バスジャック事件(ネオ麥茶事件)でテレビ朝日の報道番組にインタビューをけた際の発言である。

飛騨亜禮もIT會社に勤務しながら、巨大掲示板にり浸っていて、文字報のみのコミュニケーションスキルがいつのまにかについていた。

掲示板ではりすましや自作自演が日常茶飯事で、そこで議論を戦わせていれば、相手の言ってることが噓なのかどうかだけでなく、文章の癖や特徴を何となく見抜くことができるようになる。

匿名掲示板ではなく、普通にハンドルネームを使う掲示板で、名前を変えたとしても、文章の癖から誰が書き込んだかだいたい分かってしまうのだ。この覚を説明するのは難しいのだが、ネット生活が長い人なら分かってもらえると思う。

指紋ならぬ「文紋」のような特徴的な癖やリズム、句読點の使い方などで書き込んでる人をほぼ特定できるのだ。

「ライノべ太郎」というハンドルネーム、「ライノべ」というあまりにも特徴的な単語を小説本文でも使ってるとは、同一人だと見抜いてくれと言ってるようなものだ。

しかも、その他の怪しいアカウントも、作者の作品のみ全部を評価してる時點で察してくれと言わんばかりだ。これでは不正してることを自白してるようなものだ。

あとは運営から送られてきたサーバー報と照合して、アカウントの作日時とかも調査してレポートを作るだけだ。

調査結果判定欄に「削除」と打ち込んで、運営にメールでレポートを送った。

複數アカウント、結局、そこにはどうしても不自然さというものがつきまとう。

ニュースなどでも、噓をつく人には不自然さ、違和が存在する。

それが真実でないかぎり、噓であるかぎり、それを避けられない。

文字は噓をつかない。

文字をみれば、それが真実か、噓かは文字自が教えてくれる。

文字を綴ってる、小説を書いてる人がそれに気づかないのは困ったものだと、飛騨亜禮は今日も思う。

(あとがき)

第二話は「ネットカフェ」です。

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