《複垢調査 飛騨亜禮》お疲れさまの焼きパーティー會
「今日は皆さん、お疲れ様でした。皆さんの頑張りで<作家でたまごごはん>のサイトも無事、復舊しました。乾杯!」
坂本マリアがグラスを掲げて乾杯の挨拶をした。
「乾杯!」
派遣+アルバイト軍団がグラスを合わせる音が響き渡った。
めいめいに焼きをつつきだすスタッフたち。
お疲れさまといい合い、労い合う人々、それを橫目で見ながらメガネ君は坂本マリアに話しかけた。
「マリアさん、ショートショートコンテスト賞おめでとうございます」
「あれ、何で知ってるの? ネットで見たの?」
マリアはお酒でし上気した顔でメガネ君を見つめ返した。
「そうです。『魂の彷徨い人』ですか、あの作品はなかなか良かったです。マリアさんにしては地味な作品ですが、何というか、島原の隠れキリシタンの主人公の心がとても心に迫るものがありました」
メガネ君は珍しくマリアの作品を譽めた。
オタクすぎてこだわりが強すぎて、そもそも他人の作品を評価したことがないメガネ君だった。
「メガネ君って、飛騨さんの『聖徳太子の志能便しのび』ぐらいしか、あまり<作家でたまごごはん>の作品を譽めたことないじゃない。どういう風の吹き回しかな?」
マリアは酔った目でメガネ君を見つめて茶化した。
「いや、僕も々と面白いなという作品はあるんですよ。ただ、言わないだけです。この『プラグの空』作者:退魔師見習いさん(http://ncode.syosetu.com/n2672ct/)なんかもいいですよ。効率的過ぎる社會は時に人に生きていても死んでるような実を抱かせる。ニホンサンライスの『機霊界ガラリン』というアニメを思い出しました。あれも反分子による反逆の語でしたからね。竹取圭子の『火星マーズへ…』という作品も超能力者が管理社會に反逆する語でしたし、ラストがとても切なかったですね。とはいえ、管理社會の外で生きるのも楽ではないのですがね」
というようなマリアには著いて來れないような想を言ってしまうメガネ君であった。
「『ガラリン』?は分からないけど、竹取圭子の『火星マーズへ…』は私も読んだわ。敵味方に分かれて戦う主人公たちが分かり合いながらも、最後は悲劇的な結末を迎える……。救いはあるけれど、何かとても切ない話だったわ」
マリアは時折、碧あおくなる大きな瞳でメガネを見つめ返した。
「マリアさんって、ハーフとかなんですか? それともカラコン?」
メガネは不思議そうな顔で質問した。
「あ、これね。クォーターよ。おじいさんがヨーロッパの方の生まれでね」
マリアはそこでビールを一気に飲み干した。
「今日は飲みましょう。マリアさん、ひとまずは解決ということで」
メガネ君もビールを飲み干した。
「そうね。今日は飲みましょうか」
マリアの微笑みは慈と悲しみに満ちていた。
まるで聖母マリアのように。
メガネ君はマリアの橫顔をいつまでも見つめていた。
(あとがき)
ちょっと意味不明の余韻的な第二章の最終話でした。
次回からは第三章の『ネット小説三國志』編になります。
ブックショート2015、「夏のホラー2015」、沖方塾など
http://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/1191836/
活報告に書きましたが、一萬字以下の短編の公募がとか夏ホラーとかも結構あって、こういうのがあるとショートショート、短編の書き手も応募しやすいだろうと思います。
gojoさんの活報告で知ったので、そちらの方も紹介しておきます。
http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/544839/blogkey/1188192/
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