《名探偵の推理日記零〜哀のブラッドジュエル〜》第1章 忠実なる我が子達 1

イワは息を潛め、背後から靜かに近づき、男の首を日本刀ではねた。

ゴトッ、と鈍い音を立てて首が床に落ち、頭部を失ったは勢いよくを吹き出しながら、糸の切れた傀儡人形マリオネットのように膝から崩れ落ちた。

それを見屆けると、イワはがべっとりとついた刀を白い手拭いで拭った。

そしてその刀を鞘にしまうと、イワは踵を返した。

完璧な犯行。

それを実行出來た自分に陶酔し、イワは急ぐ足を止め、現場を一瞥した。首から流れ出るの鮮やかな紅に興を覚えながら、また歩を進めた。

廊下の突き當たりまでくると、イワは正面のエレベーターの呼び出しボタンを押した。

10秒ほどでエレベーターが到著し、扉がゆっくりと開く。

イワはサングラスの奧の目で、中に誰もいない事を確認すると、カゴに乗り込み、1階のボタンを押した。

押されたボタンはオレンジり、扉がゆっくりと閉まる。直後、カゴがゆっくりと下降し始める。

カグツチ様曰く、最近の警察は歩き方の癖から犯人を割り出してしまうほどの能力を持っているらしい。

だから自分自の歩き方の他に、いくつもの歩き方を習得し、あえて監視カメラに映るように行した。

これはカグツチ様から直々の指令で、イワはそれを忠実に遂行することに、ある種の快を覚えていた。

エレベーターが1階に著くと、イワは足早にエントランスを出て、裏手の駐車場へと急いだ。

「この調子ならカグツチ様にお褒めの言葉を戴ける」

獨り言をらすと、イワはサングラスとマスクの奧に隠された顔を綻ばせた。

計畫通りの場所に、仲間であるネクの待つ車を見つけると、イワはサングラスとマスクを外し、鍵を開けるよう片手でジェスチャーをした。

運転席に座っていたネクがイワの姿を見て、車の鍵を開けると、イワはドアを開け、助手席へと乗り込んだ。

「早かったわね。あなたなら自分が殺した死に満足して長々と鑑賞してくると思ったのに」

ネクはハンドルを握り、ゆっくりと車を発進させた。

「ふん、俺はカグツチ様の指示通りにいているだけだ。そんな事するはずがない」

イワは不機嫌そうに腕を組み、窓の外に目をやった。

「車探してた時ニヤニヤしてたくせに。見られてないとでも思った?」

イワからの返答はなかった。

図星だと確信したネクは、イワにバレないように笑みをこぼした。

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