《名探偵の推理日記零〜哀のブラッドジュエル〜》第5章 生贄の檻 3

午後5時57分。

「ひゃ、100億円!?あの寶石ってそんなに価値あるなんですか!?」

驚きのあまりドリンクが気管にってしまった亜が咽せながら聞き返す。

「赤澤財閥自慢の寶石だからね。あの寶石がこの神志山にあるって分かったからここにホテルを建てようってことになったんだよ」

勉は澄ました笑顔で亜に応える。

「す、すごいですね…」

赤澤財閥の思い切りの良さに亜は絶句する。

「でもそんなもの盜ってクロウは一何をするつもりなんですかね?」

早々に食事を終えた鳥羽がナイフとフォークを手帳とペンに持ち替え、勉に視線を向ける。

「どこかに売って金にでもするんじゃねーか?」

圭介が割り込んで答えた。

「いや、それはないと思うよ」

勉が圭介の答えを退ける。

「なんでそう思うんですか?」

先程まで黙々と食事を摂っていた城ノ口が勉に問いかける。

「彼は僕に予告狀を渡すとき、高校生だと言っていました。高校生がそんな大金を手にれても仕方ないと思いませんか?」

「なるほど。でもそれだったら寶石を盜る目的って一何なんでしょうかねぇ?」

鳥羽がよく分からないと言った様子で視線を宙に向けた。

「まぁ、実際に寶石を盜りに來ても、罠にかかってすぐに用になるでしょうけどね」

「罠?もしかしてあの展示室に何か仕掛けてあるんですか?」

城ノ口が食事の手を止め、を乗り出す。食事には興味は無さそうだが、寶石のこととなると話は別らしい。

「実はあのショーケースの前には落としが仕掛けてありましてね。指紋認証を2度連続で失敗すると、落ちる仕掛けになってるんですよ」

勉は自慢げに人差し指を立ててみせた。

「なるほど。それならクロウも手も足も出ないでしょうね」

城ノ口が笑顔で拍手をして勉を稱賛した。もはや馬鹿にしているようにも見える。

圭介が呆れた表を浮かべていたその時、

『パリーン』

突然食の割れる乾いた音が會場中に響き渡った。

「な、何をするんだ!君たち!!」

聲のする方を向くと、そこにはカーキの戦闘服を著た男2人とホテルの従業員だと思われる男が割れた食を挾んで対峙していた。

會場はパニックになり全に響めきが起こったが、男たちの服裝を見るなり會場にいる全員が一瞬にして靜まり返ってしまった。

戦闘服の男たちは太ももにホルスターを付けており、その中にはピストルがいれられていたのだ。

反対側の腰には2人とも異なるにつけており、1人は警棒、もう1人は木刀を裝備していた。

木刀を裝備していた方の男が、無表で鞘から木刀を抜き、一気に振り下ろすと従業員の男はその場に力なく倒れ込んでしまった。

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