《錬七剣神(セブンスソード)》開幕2

「誰だ?」

もうすぐ夏本番になる七月に全を覆う黒の外套を纏い、顔はフードを目深に被っている。

見えるのは口元と蝋燭のように白い前髪だけだった。背は百八十五センチほどあり、格闘家のように格がしっかりしている。

そこで、目の前に立つ人が口を開いた。

「ハッ、なんだなんだぁ? ずいぶん仲が良いみたいじゃねえか。笑い聲上げて一緒に下校なんてしちまって、まるでそこいらにいる『普通の學生』みたいじゃねえか」

(……?)

男の言っていることが分からず聖治の眉が曲がる。ただ、この男から危険な雰囲気をじる。今も槍のような殺気をじていた。

「そんなおままごとしている場合じゃねえだろうが。それともあれか? 気な仲良しごっこはブラフで、とりあえずはそこの新りから消そうって腹だったか? なら悪かったわ。早とちりしちまった。管理人の俺の出番じゃねえ。心置きなく殺してくれ」

「なにッ?」

眉だけではない、聖治は表を歪ませた。

「殺す?」

殺してくてなんて言われ平気でいられるはずがない。聖治は男を睨みつけた。

「おい、お前はさっきからなにを言っているんだ」

彼らはまだ會って間もないが聖治にとっては大切な友達だ。それを馬鹿にされているようで怒りが湧いてくる。

「ん? ああ、分からないか。なら教えてやるよ。端的にだ。お前、後ろの三人に殺されるぞ?」

「殺される? フッ、馬鹿馬鹿しい」

聖治は鼻で笑った。友人であるこの三人に殺される道理がない。

「お前が誰だか知らないが教えてやる。なにがあっても俺たちが殺し合いなんて馬鹿げたことはしない。そうだろうみんな?」

聖治はみなへと振り向いた。いきなり殺し合いなどめちゃくちゃだ。冗談が下手というレベルじゃない。

しかし、なかなか答えは返ってこなかった。

「…………」

「……皆?」

聖治は聞き返した、すぐに「そうだ」と聲が返ってくると思っていたのに戸ってしまう。

「みんな、どうしてなにも言ってくれないんだ?」

もう一度聞くが三人は答えてくれない。俯いて黙ったままだ。

「ハッハッハッハッ!」

それで謎の男が笑い出した。

「殘念だったな年。だが、言っておくがもう長くは待っていられないんだ。お前らが始めないというなら、こちらから強制的に行うしかなくなるんだよ。しかしそれじゃ趣旨からズレる。出來れば自主的に、積極的に行われるのが理想的。そういう訳で、やるならさっさと殺やってくれ」

謎の男が命令を下すように三人に聲を掛ける。

「なあみんな、噓だろ? なあ!?」

さっきまで笑い合っていた友達、楽しかった時間が黒ずんでいく。信じていた絆に、不安が広がっていく。

「……しないよ」

「え?」

その時、小さかったけれど、確かに聲が聞こえた。

「私は、殺し合いなんかしない。したくなんかない」

「香織かおりさん」

それは香織かおりさんの聲だった。その目は真っ直ぐと謎の男に向けられており、力強い眼差しで反抗の意思を伝えていた。

「うん、僕もだなぁ」

「力也りきや……!」

そこで力也りきやも聲を上げてくれた。この男が怖いのか、この中で一番の巨が小刻みに震えている。けれど、反対の言葉を言ってくれた。

「そうか。なら殘念だがお前らは不良品だ。無資格者としてここで消えてもらおうか」

すると謎の男は右腕をおもむろに持ち上げた。

直後異変が起こる。アスファルトの地面がまるで水面のように波立つと、そこから槍が飛び出した。長槍は二メートルを優に超え、先端には鋭利な刃が夕日をけて茜に輝いている。

「なんだ!? どうなってるんだ!?」

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