住宅街の一角、高校と目と鼻の先に學生寮はある。外裝は白く四階建てのアパートだ。そこにワンルームの部屋が階につき五つ並びそれぞれに學生が寮している。

そのはずだった。今夜を迎えるまで聖治はそう思っていた。

聖治の部屋は二階にあり、そこには聖治とみんなもいた。

力也りきやと香織かおりさんはテーブルを挾むように座り込み、星都せいとはベッドに腰掛け、聖治は勉強機の椅子に座っている。

時刻はもう夜であり、ベランダに続くガラス扉からは夜の暗闇と街燈の明かりが見て取れる。

部屋は電気が點いているものの雰囲気は重い。皆が口を固く閉じ目を伏せている。

語ることすらいけないことのように、この沈黙が暗黙の了解となりつつあった。

だが、聞かなくてはならない。

聖治は意を決めた。

「教えてくれ。あれはいったいなんなんだ？」

聖治が言葉を発したことにより三人が顔を上げる。その視線をけ止めて、聖治は更に続けた。

「俺たちの前に現れた謎の男。何故俺たちが襲われなければならない？　それに空間からは槍を取り出した。どう考えても普通じゃない。それに……」

そこで言葉を一旦止めた。これを言ってしまっていいのかどうか考えるが、それでも言わなくては駄目だと思い切って言うことにした。

「星都せいとも力也りきやも、あれはいったいなんなんだ？　どうしてあんなことが出來るのか教えてくれ。二人も、あの男と同じなのか？」

聞かずにはいられない。正不明の謎の男と、三人が知り合いなのは確実で、二人に至ってはあの男と同じように剣を取り出したのだ。

「まあな」

「……そうだったのか」

本人の口から聞かされ落膽らくたんした気持ちになる。

初めてできた友達が、自分たちを殺そうとしてきた男と同じことにショックを隠し切れない。

「星都せいと君～」

力也りきやが寂しそうな表で星都せいとを見上げるが、星都せいとは首を振った。

「いいって力也りきや。正確じゃないが、似たようなものなんだ。それにどう説明したって結果は同じだろ？」

「星都せいと、説明してくれ。俺は二人を信じたい。あんな男と一緒じゃないと。でも、今の俺は正直混している。もしかしたらと、どうしても不安になってしまうんだ。だから教えてくれ、二人を信じたいんだ！」

聖治は自分なりの誠意で二人に質問した。正直怖い。それでも友人の二人を信じて、聖治は聞いた。

だが星都せいとも力也りきやも俯いたままだった。

それは黙もくひとかではなく、答えるのにまだ心の準備ができていない、そんな沈黙だった。

「……魔卿まきょう騎士団」

「え？」

僅かな間でさえ重苦しい時間の中で、沈黙を破ったのは香織かおりさんだった。

両手を力強く握り合わせ、視線をそこに向けている。

真剣な表でこれから話す容の深刻さをこの時から語っていた。

「まずは、理解するための下地として、いろいろ説明しなければならないことがあるの。だから、最初にそれを聞いてしい」

言葉一つ一つに重さを置いて彼は語る。聖治は口を挾むことなく、無言で頷いた。

「この世界にはね、いきなりだけど、魔法があるの」

「…………」

香織かおりさんが発した言葉は、まるで子供の絵本から引いてきたようなものだった。

けれど聖治はそれをけれた。彼の雰囲気は真剣だったし、なにより聖治は見てしまった。空間からいくつもの槍が出現する場面を。それを今更否定しようとは思わない。

「それで、魔とも言われるこの力、その世界にはいくつかの組織があるんだけど、その一つに強大な魔組織が存在するの。

名前を魔結社ゼクシズ。

魔界で最大の戦力を持つとされている組織で、この世界全をすら左右するとも言われている。けれど、ゼクシズの構員はたったの三人」

「三人？」