《錬七剣神(セブンスソード)》出発7
抱きしめながら香織かおりさんは祈るように聲を掛ける。その思いが通じたのか、此方こなたから戦意が消えていく。
握り締められた指が開きカリギュラが地面に落ちる。香織かおりさんにを預けるように、此方こなたの顔がさらに深く沈んだ。
「聖治君、大丈夫ぅ?」
聖治が二人を見上げていると力也りきやから聲をかけられた。見れば辛そうな表を殘しつつも無事な姿で星都せいとと力也りきやが立っていた。
「ああ、なんとかな。二人は大丈夫なのか?」
「俺も力也りきやも無事だよ。まったく、どこかの役立たずのおかげで死ぬところだったがな」
「……すまない」
「んだよ、らしくねえな」
「そりゃそうだろ」
星都せいとは冗談口調で言うが、容が容なだけに素直に謝る。じっさい聖治はなにもしていない。
「……すごいな、香織かおりさんは」
聖治は香織かおりさんを見る。今は二人で日向ひなたの様子を気遣っていた。
その景に安堵しながら聖治は地面に橫になっているカリギュラを見る。刀は未だに納刀されたままであり、さきほどまで暴を振り撒いていた魔剣は眠ったままだ。
「あれが香織かおりさんのスパーダなんだぁ」
「あれがスパーダ?」
聖治がカリギュラを見ていたことに気付いた力也りきやが、察してか説明してくれた。
「うん。香織かおりさんだけは特別でぇ、剣じゃなくて鞘なんだなあ。
名前は治神ちしん・織姫おりひめ。屬は治療。萬剣の鞘でぇ、対象に合わせて形を変えるんだぁ。
だから、今は魔皇まこう剣カリギュラの鞘だけど、僕たちならまた違う形になるんだあ。そして、納刀した剣の使用者を治療する。
また、ああして相手の剣を鞘に納めて、封印しちゃうことも出來るんだぁ」
「まあ、屬が治療で鞘だからな。院患者の面會謝絶みたいなもんだろ」
「そうだったのか……」
力也りきやと補足を加えてくれた星都せいとに返事をしつつ、聖治は香織かおりさんを見続けた。
誰にでも優しくて思いやりのある。今も此方こなたと共に日向ひなたの合を真剣に心配している。
そんな人だからこそ、此方こなたを説得することが出來たのだろう。
聖治な真面目な眼差しで香織かおりさんを見つめいた。
そして、思いついたことを言ってみた。
「次からは、俺も抱き締めてみるよ」
「それは止めろ」
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