《転生して帰って來た俺は 異世界で得た力を使って復讐する》06
異世界を滅ぼしてから約7年後、ついに俺の夢が実現する時がきた。
次元を超えて別の世界に干渉する究極魔を、ついに完させられた。今俺の目の前には、中で巨大な渦が巻いているワープホールがある。そこへ飛び込めば、俺はあのクソッタレな元の世界へ帰れるのだ。
ワープのテストは既に功済だ。昨日試しに錬金で造ったドローンカメラをワープホールに投げ込んで、ワープ先の景をカメラ越しで確認したところ、間違いなく俺が知っている日本だった。時間の流れはどうやらこの異世界とシンクロしていたようで、俺が転生してから約20年......向こうも同じ年月が経っていた。
なくとも、俺が死んでから20年は経過していると分かった。まぁ仕方ない、隨分長く過ごしてしまったからな。あいつらが事故か何かで死んでいない限りは、20年後の姿をしたあいつらが、元の世界にいるというわけだ。
「ワープ出來るようにはなれた...。あとは、向こうで復讐する為の必要な魔とスキルを習得するだけだ...!」
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この7年間は主にワープ魔の研究・開発に時間を費やしていたから、新しい魔とスキルの習得が間に合っていない。だから今から殘りの未習得のやつ全てを手にれる...!
さらに1週間後、必要魔とスキルを全て會得した俺は、今度こそ準備を整えた。
まずは錬金。これは魔王軍と戦っている途中で會得した。この世界では主に武の錬に使っていたが、元の世界では主に金だ。あの世界は金が全てだ。一度死んだ俺だから言えることだ。
金が無ければ、夢も家も水も食べも薬も快楽も健康も、人としての尊厳も何も手にらない。あの世界はそういうところなのだ。金が無い奴は負け組にり下がる......どんな奴でもな。
で...あとは復讐で使える兇を造ることくらいか。ワープした後でじゃんじゃんつくろう。
次は神魔。あの世界......特に日本の治安はそれなりに良くされている。そんなところで異世界と同じ兇行をしてしまえば、あっという間に注目される。復讐はゆっくりじっくりしたいと思ってるから邪魔がるのは遠慮したいところだ。だから周囲の人間たちの脳をって、俺のどんな行いも気にならなくなるとか暗示をかけて邪魔をさせないようにするのだ。あとは、記憶を作...出來事を忘れさせるとか、だな。
“バレなければ犯罪じゃない” 誰にも気づかれず、憶えられることなく、忘れさせてしまえば、気兼ねなく復讐できるはずだ。というわけで神魔も必須魔。
スキルは、消音・気配察知(遮斷)などなど...治安國の日本で必要になるであろうスキルを、魔とかを倒して會得した。スキル取得がいちばん苦労した気がする。
他にも、瞬間移・検索魔・治療魔・空間魔・擬態......本や修行、討伐で全て會得した。
鏡で自分の姿を見てみる。偶然にも、元の世界で最後に見た時の自分と同じ見た目をしていた。24歳だったあの時の俺と...同じだ。
違いがあるとすれば、高級そうなローブを纏っていること、そのローブの下には鍛え抜かれたが備わっていること。何よりも違いが見られたのは、顔つきだった。造形は前世と変わっていないが、コンプレックスだったあの幸薄さが取れていて、ギラギラとした雙眸、生き生きとした艶が、そこにあった。野に燃えた男の顔が、鏡に映っていた。うん......悪くない。
今の自分の方が、好きになれる!
確認も終えた俺は、持てるだけの金を懐にしまって、再びあの魔を発する。
「しかしあれだな......行を起こすまでの計畫立てとか準備活とかのあの時間って、凄く楽しかったな!あの時間は俺にとて貴重なものだった」
旅行をする時、本番よりも行き先を決めたり宿を探したりして準備する時の方が楽しいって思ったりするタイプのそれだな。今までの時間もまさにそれと同じだった。
でも、やっぱり本番がいちばん楽しいに違いない、これから始める復讐の時が、最高な気分にさせてくれるに違いない!!
「よし......これをくぐれば、俺は帰れるんだ。あのクソッタレな現実に...!
みんな全員 悲慘な目に遭わせて 殺せるんだ...!」
ニタァ...と俺は満面の笑みを浮かべながら、ゆっくりと――
「バイバイ、クソ異世界。ここで學んだこと、得たはたくさんあった。ありがとう......もう用済みだから―」
渦の中に飛び込んで―
ワープホールが消えると同時に、懐にあるボタンを押して―
「―もう、完全に滅んで良いよ。さようなら」
世界の至る所に仕掛けておいた大規模崩壊魔を起させて―
何もかも...異世界という存在を完全に消滅させた―。
(帰ろう。そして始めよう!二度目の人生は、復讐と殺戮と娯楽の日々を送ろう!
何もかも、躙して奪って踏みにじって、壊して潰して殺す...!)
――待ってろ クソ現実!!!
長いプロローグは終わり、ここからがいよいよ本章となる。
杉山友聖の と暴力と死に塗れた復讐の人生はこれからが本番だ――。
時は遡って......7年前。全てに失して見限って、そして復讐に走った年が世界を滅ぼしたあの始まりの日。
彼は、自のだまりの中で必死に聲を振り絞って、遠ざかっていく年の背を追うように見つめていた...。
「ち...がうの...。そんなつもりじゃ......なかったの...。友聖.........ごめん、なさい......」
やっとの思いで吐き出したその言葉は、年の耳に屆くことはなかった...。
プロローグ 完
【書籍化】 宮廷魔術師の婚約者
★角川ビーンズ文庫さまより2022/06/01発売予定★ 今まで數多くの優秀な魔術師を輩出してきた名門スチュワート家に生まれたメラニー。 しかし、彼女は家族の中で唯一魔力の少ない、落ちこぼれだった。 人見知りの性格もあって、いつも屋敷の書庫に篭っているようなメラニーに、婚約者であるジュリアンは一方的に婚約破棄を申しつける。 しかもジュリアンの新しい婚約者は、メラニーの親友のエミリアだった。 ショックを受けて、ますます屋敷に引き篭もるメラニーだったが、叔父で魔術學校の教授であるダリウスに助手として働かないかと誘われる。 そこで発揮されたメラニーの才能。 「メ、メラニー? もしかして、君、古代語が読めるのかい?」 メラニーが古代魔術を復元させて作った薬品を見て、ダリウスは驚愕する。 そして國一番の宮廷魔術師であるクインも偶然その場に居合わせ、異形の才能を持ったメラニーを弟子に誘うのだった。
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