予想外の命令にリリナはビックリした顔を大神に向ける。大神の顔は真剣で、本気で今の命令を下したのだと確信した。

「良いのですか...？異なる次元へ転移するのは忌だと以前おっしゃってましたが...」

「忌ではありますが、事態は深刻です。これ以上悪魔の好きにさせるとこの次元だけじゃなく別の次元までもが脅威に曬されることになるでしょう。それを防ぐ為に、私たちが忌を犯すのは止むに得ません...いえ、今回に限っては特例として認めてもらいます。大神の名において私が許可させます。

この次元にいる者が犯したことは、この次元にいる者がどうにかすべきだと私は考えてますから」

大神は迷いなくそう答えて神たちを解散させる。後日彼は天界の中心部へ赴き、この世界の賢者たちに事を説明して特例を認めることを持ちかける。

「許可はおりました。ただし転移するのは神一名のみ。今も悪魔族との爭いは続いている最中ですから人員を割くことはできません」

ただ...と大神は深刻な顔を浮かべて続きを話す。

「次元の転移は失敗して消滅あるいは次元の間に落ちて閉じ込められる可能が非常に高い行為です。その危険が原因で転移が忌にされているとされるくらいに。賢者の方々は転移を許可する代わりにある條件を出しました。

一つは先程言った一人だけの転移にすること。そしてもう一つは...賢者の方々が安全に転移する方法があるとのことで、その式をすぐに完するからそれまで待ってしいとのことです」

「そんな方法が！？危険が大きいから忌にされていたのでは？」

「恐らく今回のような急事態が過去にあって、それを反省してすぐに行できるように大昔から安全にすぐに転移できる式を、天界の上層部が創っていたのでしょう。私もし前にそんな方法があったことを知りました。まだまだ私も未でしたね」

し自嘲する大神に、リリナは片膝をついて頭を下げる。

「いえ。それよりも大神様、ありがとうございます！私を真っ先にご指名して下さって。神になってまだ淺い私にこのような重要な任務を任せていただいて...！」

謝の意を述べるリリナに大神は優しく微笑んでリリナの肩に手を置く。

「あなたの事・気持ち、この私にも十分理解しているつもりです。それに私はあなたにやってしいと思っているのです。想い人に會う為、説得する為。彼の心を救うには、彼が知る者でなければなりません。

リリナさん、あなた以外に相応しい者はいません。杉山友聖を頼みます...！」

「っ！必ず...！！」

大神の優しい言葉にリリナは涙しながらも力強く功を誓った。

それから數か月間。天界では賢者たちが転移の式を完すべく奔走。そんな彼らを狙う悪魔族をリリナ含む神族たちが応戦。皆リリナに負擔をかけまいと起して悪魔たちと戦う。そんな仲間たちにリリナは謝した。

「本當は私たちも行くべきなんですが、悪魔たちをここで食い止めるのが一杯。リリナさん、頼みます！！」

「いえ、友聖を止める機會を與えていただいただけで十分です。それにこれは私がすべきなんです。私のせいもあって友聖があんなになってしまったから。全てにけじめをつけなければ...！」

そしてついに転移の式が完され、リリナは“転移の間”に立つ。側には大神と賢者たちが見守っている。

「“あの世”から“この世”へ転移をする場合、あっちの世界の転移先だけではなくその時代をも設定することができることになってる。今サタンがいる時代は、今ではなく過去にいることから、今回あなたが行く先は今から過去の時代だ。その際に気をつけねばならないのは...その時代の自分と會ってはならないこと。もし會ってしまうと時空が歪み、最悪その世界が滅ぶ恐れがある。くれぐれも出會わぬよう細心の注意を。

そして、是非サタンを討ってくれ」

転移の注意と激勵を告げる賢者たちに謝の禮を述べて頭を下げて、最後に大神と向き合う。

「人間界を頼みます。杉山友聖がこれ以上罪を犯さないように...そしてサタンが何かする前に」

「はいっ！あの、大神様にお聞きしたいことが...」

「？何でしょうか...？」

「大神様の名前は、何というのでしょうか？」

リリナの質問に大神はキョトンとした顔をする。そして可笑しそうに笑い、どこか自嘲した様子で答えてくれた。

「私の名はプルメリ...。かつて想い人に殺されて神に生まれ変わった哀れなです――」

そして、は発して......リリナを別の次元へ飛ばした―――

（リリナさん。あなたは私と同じ道を歩まないで下さいね――）

そして　現在―――――

＊

狀況を整理しよう。

俺は今日、高校の時に俺をげやがった男...上方逸樹をぶち殺すべく、奴が通うこの高校にやって來た。奴が登校してきたらすぐにこの屋上へ引き上げて...ここで殘酷にぶち殺して、復讐をす。そのつもりだった。

だが行を起こそうとしたその時、脳で俺の名を呼んだじがしたかと思うと空から不自然なが差して天を晴らした。そのから一人のが現れて俺のところへ降り立った。

この時點で非現実的な現象だが、その中でも俺が驚愕したのはそのが誰なのかというわけなのだが...。

リリナ王―――。

二度目の人生で復讐してもう存在しないはずの人間が、漫畫やアニメとかで出る神の格好をした姿をしていて、俺の兇行を止めてやるとほざいたのだ。

いやいや.........は？マジでは？？

幽霊やない、実が確かにある。人間でもない、さっき表現した通り神のような何か超越した存在だ。

というより目の前にいるはほんまにリリナなんか？俺は咄嗟に検索魔を発して目の前のの正を暴く。そしてすぐに結果が出る。

「お前は.........リリナ。異世界にいた王。お前は俺に殺されて............神に転生、した...！？」

転生という言葉でハッとした。そして理解もできた...！

「お前......俺と同じ転生者やな？それも人間を超えた存在に転生を...っ」

俺の問いにリリナは肯定の意を示す。

「友聖が思っている通りよ。私は死んで、神族という存在に転生した」

次いで俺の顔をしっかり見て懐かしむじの表を向ける。

「久ぶりね友聖...。こんな形で再會するとは思ってなかったよね...？あなたにとっては十數年ぶりの再會になるのかな。それに今のあなたの姿は、あなたが勇者だった頃と同じで懐かしくて嬉し――」

俺は話につき合う気はなかった。即座に剣を錬してリリナに斬りかかる。

「――っ。躊躇、無いね...」

...が、紙一重躱される。しかもだいぶ余裕もった様子で。俺の今のきを見切っているじだった。

「お前も、転生したことで力を手にしたクチか。生前のお前なら今ので真っ二つになってたはずやけど」

「......うん。天界っていう世界で々戦闘教育をけてきたから。それより、今のって.........本気だったよね」

「當たり前や。お前が転生してそういう存在になったんは驚いたわ。けどそんんだけや。お前とはとっくの昔に決別したやろ？もう話すことも...ましてや舊を溫めることもないわ、クソがっっ！！」

そう罵聲を浴びせて再度容赦の無い、本気の一太刀を放つ。狙いは首、剣速は音速に迫る。その首を刎ね落とす―――

「クソって酷いじゃない。リリナって呼んでよ」

「が.........っ！？！？」

気が付くと俺は壁にめり込んでいた。何をされたのかも分からず吹っ飛ばされて、給水塔の真下の壁に激突させられた。

（今、俺は何されたんや...！？剣が首と捉えた思った瞬間、吹っ飛んで...。あいつ俺にれてもなかったよな？何やあの力は...！？）

心驚きと揺をにじませながらも顔には出さず、衝撃で吐いたせいで口についていた唾を拭って、剣を構えて警戒する。そんな俺をリリナはどこか悲しそうな顔を浮かべながら、靜かな聲音で俺に話しかける。

「友聖......話をしましょう」