《バミューダ・トリガー》二十五幕 対能力者組織

「「しゃ、謝罪いぃ?!」」

「ああ、その通りだ」

「先日は本當にすみませんでした」

怪校の一階、一見するとただの古民家のようであるその建に、四人の青年は立っていた。二人は、怪校生である神河人と黒絹翔斗。もう二人は、「対能力者組織スキルバスター」の構員である五影貞命さだめと五影時々これちかだ。

後者の二人は先日警察署を襲撃し、怪校生の大多數を、怪我はさせないまでも気絶に至らせた挙げ句―

永井 幸四郎ながい こうしろうの能力によって異次元空間に監された。

「そう言やぁお前ら、俺たちが「雙蛇のデュアルスネイク」に関係してるのかとかなんとか聞いてたな」

「ん?そうなのか?」

翔斗が口にしたのは、俺の知らない事実らしかった。

(ってことは、永井の異次元空間での出來事か・・・)

「・・・そうだったな。その件も、今回謝罪に來たことと関係している」

「「っ・・・」」

俺と翔斗は同時に息を飲む。

答えたのは、五影兄の貞命だ。

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良い放った言葉に噓がないことを、そのまっすぐな目がものがたっていた。

「僕たちの境遇も兼ねて、話を聞いてはもらえませんか?」

時々が続ける。彼もまた、取り繕った態度ではない。

真剣そのものの眼差し。

人・・・」

「ああ、判ってる。聞こう」

瞬間、五影兄弟の表が分かりやすく安堵に染まる。

「!謝する」

「ありがとうございます」

「でも」

俺はその安堵に割ってった。

「今、ここでじゃない。今ここで、俺たち二人だけに話すべきじゃない。明日の朝、俺たち怪校生が集まる。そこで話すべきだ。謝罪も兼ねてと言うなら、その方がお前らも本だろ?」

「「っ・・・」」

今度は五影兄弟が息を飲む番だった。

十二月にり、空気は一気に冷え込んだ。

所々、薄く氷の張る池の中では、すっかりきを鈍くした鯉がゆらゆらと鰭ひれを揺らめかせている。

対照的に。

一見すると古民家である建造の地下。

し暖かすぎるほどに暖房の効いた怪校の教室では、登校してきた生徒たちの注目のなか、教壇に五影兄弟が立った。

「怪校の生徒たち。俺たちは、五影いつかげ兄弟という。俺の名は貞命さだめ。五影貞命だ。舊怪校の件については、本當にすまなかった。非は、完全にこちらにある」

「僕は五影時々これちかといいます。そして謝罪と同時に、僕たちには怪校生である皆さんに理解してほしい事があります。だから、僕たちが怪校を襲撃するにあたった経緯を、隠すこと無くすべて話します」

怪校生は一同、口を開かない。

それは無言の同意であると同時に、五影兄弟にとっては最大の圧力であった。

謝する」

「ありがとうございます」

しかしそれでも、五影兄弟の心はほども揺らがない。むしろ、一層強い謝を込めて二人は一禮した。

「俺たちは、厄魔事件《バミューダ》をけ、生き殘った人間だ」

思わず息を飲み、また目を見張る怪校生をおいて、とうに覚悟を決めた五影兄弟は話を進める。

―――――――――――――――――――――――――

俺たちは、厄魔事件《バミューダ》をけ、生き殘った人間だ。

初め、俺と時々は絶にうちひしがれていた。それまで慕っていた両親はここには居ないと、そう気づきながらも、認めはせず、頑なに事実を拒もうとしていた。

數日間は、いつも見慣れた道を歩き、運良く時々が持っていた財布の金を使い僅かな食べを分け合い、夜になると川にかかる橋の下で寢ていた。

だが、そうやって日常を取り繕うような夢想も幻想も、もう描けないほどに、俺たちの心はすり減っていた。

五日目になったときだ。

俺と時々は、生きることを諦めようとした。

わからない話ではないだろう。

當時の俺たちはまだ十二才と十四才だ。

本來、親元から離れて獨立して生きていく年ではなかった。

加えて、食住も確立できない生活、なぜか聲をかけても返答の無い大人たちや、警察。

しても、仕方ないだろう?

それで、ろくに水深もない川に、橋の上から頭を下に落ちてやれば死ねると思った俺たちは、ならんで橋の欄干に立った。

川を背にして、「せーの」の掛け聲で後ろに倒れようと、そう決めてな。

二人の重心が後ろへと流れ、浮遊じ始める剎那。最後の最後は、「諦めず生き抜く」ことを放棄したことを、し後悔した。

二人の足が摑まれたときは驚いた。

かかる重力に逆らえず、足を支點にを振り、俺と時々は橋に思いきりよく頭をぶつけ、気を失った。

気づいたとき、俺たちは古びたソファーの上で寢転がされていた。

久々に味わうクッションのらかさは、アスファルトの固さとはうってかわって、優しく俺たちのを包んでくれていた。

俺たちはしばらくの間、見慣れない部屋に取り殘されていた。機をはじめ、家のほとんどは木で造られていた。

それぞれがどれも古くはあったものの、木造故の暖かみを持っていた。

ほこりっぽい空気も、かえって家屋のなかに居るという安心を強めてくれた。

俺たちが落ち著いた頃に部屋にってきた人が、今の俺たちのリーダーであり、「対能力者組織スキルバスター」の統括者である、鐵 里音くろがね りおん様だった。

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「続きは僕から話します。ここからが僕たちの目的ともっとも深く関わる話です。里音様の―鐵家の復讐にまつわる、そんな話です」

言葉を切った貞命に続けて、時々の方が言葉を紡ぎだす。

変わらず聞きる怪校生を一瞥し、時々が話し出した。

これは、「対能力者組織」の核心にまつわる話

そして、遠からず闘爭へと発展する「雙蛇のデュアルスネイク」にまつわる、そんな話

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