《No title_君なら何とタイトルをつけるか》「No title」

「ここですかね?」

ヴェルザは扉を叩いた。家の奧からどこか懐かしいの聲が聞こえ、扉が開いた。

「はーい…っ!?」

はヴェルザとハイネをみて目を見開いた。

「師匠!?」「姉さん…!?」

「…、と…ハイネ」

ハルカは2人を包み込むように抱きしめた。

「大きくなったね…」

2人はまるで子供みたいにしがみついた。

「姉さん、どうしてここに…?エイダン殿の奧方とは姉さんのことだったんですね…」

「まぁ々あってね。この家に本家からを隠していたの」

「ここは師匠と過ごした場所なのに自分はまったく気付きませんでした」

「改裝してるからね。以前とはだいぶ変わってるわよ…さぁ、中へどうぞ」

家の中を進んで行くと泣き聲が聞こえた。

ハルカは小走りで向かい赤子をあやし始めた。

「…舞璃っていうの、の子よ」

幸せそうに微笑むハルカはハイネと瓜二つだった。の子の瞳と髪のは綺麗な黒で、ヴェルザの脳裏にはマリーが笑い返しながら手を振る姿が現れた。

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「幸せ…?」

マリーがそう言った気がしたヴェルザはの子の手を握り応えた。

「…幸せだよ」

の子は笑い、ヴェルザの頬に手をあてた。

外が暗くなるとエイダンが帰ってきた。

「ただいま帰りました」

エイダンの帰ってきた聲が聞こえたハルカは急いでエイダンのコートや手荷を慣れたように預かりに行った。

「おかえりなさい。お疲れ様でした」

「あぁ、ありがとうございます」

「お客様方がいらっしゃっていますよ」

ハルカはエイダンの背中を押して2人の前へ押し出した。

「君は…ヴェルザ君じゃないか!よく來てくれたね、いらっしゃい…と、え…スピリト殿!?え、えーー!?!?」

「ふふふ、お久しぶりです。エイダン殿」

ハルカは微笑んだ。

「お、お久しぶりです…え、無事で何よりです」

エイダンはまだ目の前にいるハイネを虛像を見るように見つめていた。

「あのぉ、エイダンさん?渡したいって…」

「あ、あぁそうだった!」

エイダンはカバンを漁り始め小さな封筒を差し出した。

「これは…?」

ヴェルザは封筒を開けた。

そこにはハイネとウキが楽しそうに話している姿が寫っている寫真がっていた。

「最後に全団が本土へ帰省した日に撮った寫真だ。でもまぁこれは君にはもう必要ないようだ…」

「そう、ですね」

「懐かしいですね」

ハイネが寫真を覗き込んだ。

「そうでしょう?撮っておいたんです」

エイダンとハイネは懐かしそうに微笑んだ。

「ヴェルザ君、この寫真貰ってくれないかい?」

「え、でも…エイダンさんの大切なじゃないんですか?」

「大切だ。とても…懐かしく、古き友人の寫る寫真、思わずあの時に戻りたいと思ってしまうほどに…だから君に貰っていてほしいんだ」

「…分かりました。この寫真は自分が大切に保存します」

「すまないな…ありがとう」

エイダンの脳裏には止めることの出來なかったウキが倒れていた。

以前までは靜まり返っていた雲砅の屋敷に騒がしさが現れた。

「…」

グレイは何も言わずにハイネに飛びついた。

「く、苦しいよ」

ハイネの言葉など1つも聞かないグレイの背中をイグニスが引っ張った。

「サラ指揮、離してあげてください」

「うわ…」

「うわとはなんですか!?人をあれだけ脅しといて!」

「あー、そういえば君死にかけてたね」

「はー!?貴方ね…!」

イグニスの話など聞かずグレイは微笑ましそうに笑っていたアイとメコに抱きついた。

「2人とも元気だった?」

「元気だよ」「もちろん」

嬉しそうにグレイは笑い、ヴェルザの前に立った。

「ありがとうね…ヴェルちゃん」

「いえ…自分はそんなっ…」

ヴェルザは不思議と涙が出始めて顔を隠した。

「良かった、本當に…皆さんを見つけ出せた。半分諦めそうになっていた時もあったけど…頑張ったかいがありました…」

震えた聲でヴェルザは話した。

あぁ…この出會いがあったことが凄く幸せだ。

こうやってもう一度皆さんと話すことが出來る…これ以上のみはもう無いや

そうヴェルザは思うのだった。

その後の屋敷はどんちゃん騒ぎになった。

京子は忙しそうに屋敷中を歩いたが、グレイの笑顔を見てどこか嬉しそうに働いていた。

「グレイ」

「なに?」

しだけヴェルザを連れて行きたい場所があるんだ。例の海だ…」

「…気をつけて言っておいで」

グレイはヴェルザの「どこに行くのですか?」と言い出しそうな顔を見て微笑み2人を見送った。

「あ、あの!どこに行くのですか…?」

「行けばわかるよ。行ってらっしゃい」

アイやメコも手を振り見送った。

「海上団の誇り高き団員達が眠る海…彼岸海」

メコは酒を片手に言った。

「マリーや副団長、アイクはどうしているんだろうね…」

アイは悲しそうに言った。

「近いうちに私も花を渡しに行きます…」

「そうね、メコ サラも行かない?」

「そうだね」「んー…まぁ行ってもいいかな」

ハイネはヴェルザを連れそう遠くなかった海岸で止まった。

「ここだよ」

「ここは…?」

「ここは彼岸海。マリーや副団長、アイクが眠っているんだ」

「え…副団長やアイクさんのは…沈んだんじゃ…」

「グレイが回収したらしい…「腐っても死なせてしまった私の部下と上司だ」ってね」

「…海墓ですか」

「……」

ヴェルザは海岸に建てられている碑に近付いた。そこには多くの名前が書いてあった。

そして見つけ出した。 

                           勇敢なる者達

        2016年 

                 マリー・ミラー(実良 舞璃)

                 ハル・アマミヤ(雨宮 )

                 アイク・ザック(佐久 藍空)         

     

                ヒロト・イシカワ(石川 弘樹)

                 リアム・ミラー(実良 俐亜武)

                 アスカ・セオ(瀬尾 明日花)

                                     :

                                     :

碑の周りには多くの花束が置かれていた。

「…」

ヴェルザは碑に額をあてた。

「どうだった?」

「自分には…何とも言えません」

イグニスはめるようにヴェルザの肩に手を置いた。

「さぁ、宴はまだ終わっていないよ?僕を楽しませてよ」

ハイネはヴェルザを見て言った。

「そうですね、まだ宴の途中でしたね。自分も…飲みます!」

ヴェルザはグレイが飲もうと口に運ぼうとしていた酒瓶を取り一気に飲んだ。

「おー」

全員がヴェルザの飲みっぷりに聲をあげた。

「え、え?それ私の酒…」

グレイは唖然としていたが酒瓶を取り返そうとヴェルザに飛びかかった。

「あーあー始まった!私は料理所でツマミを作ってくるからそれまでにイグニス何とかしといてくれ」

「はぁ…」

「ふふふ、お疲れ様だね」

アイは気が重たそうなイグニスを笑った。

ハイネは微笑みながら様子を見て呟いた。

「…うん、これが良い」

「何か言いましたか?」

気付いたヴェルザが応えた。

「いいや、何でもないよ」

「隙あり!!」

グレイは油斷していたヴェルザから酒瓶を取り返し広間から走り逃げた。

ヴェルザは酒瓶をまた取り返そうと追いかけ回した。

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!そんなに走り回ったら酒瓶落として屋敷を汚してしまいますよ!」

イグニスは2人を止めようと走り出した。

夜でも宴は続いていた。

「ねぇハイネ!寫真撮ろ?」 

グレイは古いカメラを京子に渡し言った。

「いいですね」

「じゃぁ、ほら皆並んで~」

真中にハイネ、左にアイ、右にイグニス、左上にメコ、上にヴェルザ、右上にグレイ。

京子の合図と共にフラッシュがった。

本のページが風によって捲られ表紙に戻った。表紙には「No title」、「雲砅」と書かれ 本の置かれた機の上には寫真がたくさん飾ってあった。

寫真の中には6人が酒を持って寫っているや灰の髪のと向日葵のように綺麗な男が白い服を著て幸せそうに寫っている寫真、黒い瞳と髪が綺麗なの子がランドセルをからい「學式」と書かれた看板の前で両親に挾まれ寫っている、緑の髪をした男が小さな箱を差し出し大人しそうなに膝まづいているがが去っていく寫真、診察している様子のの寫真、新しい店の料理所で嬉しそうに寫っているの寫真、皺やほうれい線が笑った時に素敵に見えるの寫真。

扉が叩かれる音がした。

「雲砅さん 皆さんがいらっしゃっています」

この話に名前をつけることなんて出來ない…そう考えながら「皆さん」の元へ微笑みながら向かった。

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