炎の力はとっくに限界を超えていた。

 「どうした、兄ちゃん！まだ始まってすらいないで～！ガッハハハハハ！！」

 豪鬼の大笑いが響く中炎はゼエハアしながら足を一生懸命かさそうとしていた。

 「す、すいません！これはちょっと…流石…に…」

 息切れしながらけ答えする炎。足には20キロの重りを付けているせいで歩くのもシンドイ。

 「うだうだ言うてても何も始まらんで～！この街一周するのに50キロはあるんやで！」

 「ご、50キロ！！」

 サラッと言われた衝撃の発言に驚愕の顔を隠し切れなかった炎。

 「せや！中途半端な距離測るよりもそっちの方が分かりやすくてええやろ！ガッハハハハハ！！！」

 (最早、笑いどころじゃない…)

 炎の心の中ではそう思っていた。

 「ホラ、ボサッとしとらんで早よ走り～や！時間は待ってくれへんでー！！」

 どうやら豪鬼は本気でやらせようという腹積もりの様だ！

 (…やるしかないのか…)

 炎は諦めた様子で走り出そうとしたが…

 「ハア…ハア…ハア！」

 重りが重過ぎてし走っただけで息切れしてしまった。

 「何や、早過ぎやろ！兄ちゃん、どんだけ力無いねん！！！」

 豪鬼は炎の力のなさに逆に驚いていた。

 「流石にイキナリこのトレーニングはちょっとキツイんじゃないかと…」

 「だらしないの～、こんなモン気合いで何とかせいや！」

 「…え～～！」

 適當なアドバイスを送る豪鬼。

 (気合いで何とかなるものではないけど…っていうか俺ってこんなに力無かったの！一(記憶のある)前の俺ってどんだけ…)

 そう思ってた時だった！

 「…また記憶が無い事を言い訳にするんか？」

 「え？」

 不意に問われた炎は豪鬼の方に振り向くと豪鬼は真剣な面持ちで炎を見ていた。

 「お前さん、柑菜と戦ってた時もそんなこと考えっとたやろ！だから、最初は逃げはってた」

 「あ、あの…」

 豪鬼は真顔で語り出し炎の言葉も聞かず話続けた。

 「ええか！今の自分は今の自分や！分かるか？」

 「？」

 豪鬼の質問の意味が分からず首を傾げる炎。

 「過去の自分に戻る事は出來ん！なら今の自分がどうしたいかが大事なんやろ！！今の自分の気持ちはどうや！本當にココで終わりたいんか？」

 豪鬼は炎に近づき熱く語った。炎はいつも過去の自分がどんな人間だったのか？そんな事をいつも考えているうちにやがて出來ない事を記憶喪失のせいにしていた。

 「俺の今の気持ちを言えばいいんですか？」

 炎は豪鬼の目を真っ直ぐ見つめて問いかけた。豪鬼は黙って小さく頷いた。

 「---お願いします！俺を強くして下さい！！」

 炎は豪鬼に深々と頭を下げた！

 ---そして炎の地獄の強化月間を再開したのだった！