「はあああーーー！！！」

 炎は豪鬼に向かってまた走り出した。

 (今度はどう來る？)

 豪鬼は炎の姿をしっかりと見つめていた。

 すると炎は豪鬼の半徑5m前で突然、橫に跳んでいった。そしてそこからあちこちに跳んでいく炎。

 豪鬼は尚も炎の姿を追いかけていた。

 「なるほど、撹かくらんするつもりか」

 炎はひたすら跳び続け隙を伺っていた。しかし豪鬼の目線は一向に外れない。

 (クソ、もっと速く！)

 炎は跳ぶスピードを上げた。

 (まだダメか？もっともっと速く！！)

 更にスピードを上げた瞬間、豪鬼の視線が外れたのが見えた。

 (よし！今だ！！)

 瞬時に豪鬼の方に向かって跳んでいく炎。剣を構え向かっていく炎。

 「やっぱり乗って來よったか！」

 「！！」

 すると豪鬼は炎の方に振り返った。

 (しまった、われた！)

 勢を立て直せない炎に対して豪鬼の拳が飛んできた！

 「ふんっ！！」

 豪鬼の振り被った拳は炎にクリーンヒットした。

 「ぐうっ！」

 炎のは壁に向かって勢いよく飛んでいった。

 「今のはええのったのう」

 そう言うと炎の方を見る豪鬼。炎は一撃を喰らっただけでがボロボロになっていた。

 「がはっ！！」

 吐をする炎だが壁伝いに手をつきながら立ち上がる。

 「ほお、まだ立てるか」

 だが一撃でボロボロになっている炎は下を向いていて立つのが必死な様に見て取れた。

 (さて、どうするか？もうあそこまでスピードは出せないぞ！)

 窮地に囚われた炎は知恵を振り絞った。もう同じ手は使えない。

 (クソッ！今のまま近づくには厳し過ぎる！俺にも柑菜みたいに遠距離攻撃を持ってれば…)

 ふとそんな事を考えていた時、ある作戦が思い浮かんだ。だが作戦というよりほぼ賭けに近い作戦だった。

 炎は壁から離れると剣を後ろに構えた。

 「…今度は何する気や？」

 豪鬼は構えながら炎の行を伺っていた。

 「はあああああーーーーー！！！！！」

 すると炎の剣から黒い炎を纏っていた。

 「飛炎ひえん・焔ほむら！」

 炎の剣に纏っていた黒い炎は斬撃の如く豪鬼に向かって勢いよく飛んでいった。

 「遠距離攻撃やと！聞いとらんぞ！！」

 だが言葉とは裏腹に豪鬼は冷靜でいた。豪鬼は右腕を後ろに構えた。

 「嵐空らんくう！」

 豪鬼は炎の斬撃が飛ぶ前に後ろに構えた拳を振った。すると豪鬼の振った拳で強烈な風圧が生まれた。

 その風圧は炎の斬撃とぶつかり合った。ぶつかり合った２つの攻撃は相殺し大きな煙が出た。

 トレーニングルームは煙に覆われて何も見えなかった。

 「…んん？」

 豪鬼は煙の中で何かがいた影を見逃さなかった。

 「そこか！！」

 豪鬼はいた影に向かって拳を振った。

 「…ムウ！」

 しかし豪鬼の振った拳は炎の殘像に當たった。

 「はあああ～～～！！！」

 すると背後から炎の聲が聞こえた。

 「しまった！」

 「飛炎・焔ー！！」

 振り返る途中の豪鬼にゼロ距離の斬撃がった！