《久遠》第2話 真実
「がッ!」
聲が出ない。
奴だ。吸鬼の冷たい手が直江の首を覆っていた。
爪が皮に食いこんでいる。
苦しい。嗚咽と浮かんでくる涙。
吾郎に目をやると、既に泡を吹いて気絶していた。
……ならこれで……
直江は右手をあげてハンドシグナルを示した。
『他に仲間はいない。作戦終了』
吸鬼が彼の首から手を離す。
「直江、おつかれさま」
「あー。首痛っ。強く締めすぎな」と直江は彼の肩を軽く毆る。
「あらごめんなさいね。演技に力れ過ぎちゃったかしら」
オカマ口調で話す吸鬼はそう言ってから倒れた吾郎の方へ向かう。
「バンピール」直江が彼の名を呼ぶ。
「ここでもう食べるの?」
「そうしようかしら。今日はあんた達二人で來たんでしょ?人目もないし……」
その時、かすかなうめき聲が聞こえた。
見ると、吾郎の目がうっすらと開いている。
……こいつ……もう目覚めたのか……?
「ちょっとバンピール。催眠効いてないよ」
「あら。効き目甘かったかしら」
「なお……え……これ……どういう……」
どうやら吾郎は一連のやりとりを全て聞いていたらしい。
……こりゃもう正直に話してしまうか。どうせ彼の記憶はこの後消すんだし……。
というわけで直江は彼の前でしゃがむと真実を話してやる。
「ごめんな。吾郎。おれこっち側なんだわ」
こういう時は笑ったほうが相手は落ち著くのだろうか。そう思って、直江は一杯の笑顔を見せるが吾郎の表はどんどんと悲痛なものに変わっていく。
「こっち側って……」
今にも吾郎は泣きそうで、直江は見てられない気持ちに襲われた。
「そいじゃあ、あとよろしくお願いしまーす」と直江は彼に背を向ける。
「噓だろ直江。お前まさか裏切って……っ!」
バンピールが吾郎の顔に手を當てる。不思議な力が使われたのか彼は今度こそ意識を失った。何を摑もうとしたのだろうか、直江のほうにばしていた手も地面に落ちた。
いただきます、とバンピールが彼の首元にかぶりつこうとしたので直江は目をそらした。
「吸いすぎてうっかり殺さないでね。あとちゃんと記憶も消して」
「わかってるわよ。一応言っとくけど私のほうが立場は上なんだから指図しないで」
そう言ってオカマの吸鬼はをすすり始める。ジュルジュルと。この音は気持ちが悪い。のがよだつ。
攜帯を確認すると、別の仲間から連絡がきていた。安否確認だろう。
『対象は取り逃がした。吾郎が負傷。命に別狀はなし』と直江はメッセージを送る。
「疑われずにうまくやれてるみたいね」
口元をにまみらせたバンピールを見ると、どれだけ人間の姿をしようともやはりこいつは人間とは違う別の生きなのだなと再確認させられる。
「この調子で頼むわよ。私の平穏な食事のために」
「あんたも約束は守ってくれよ」
「ええ。わかってるわ。時がたてばあなたを……」
直江はれっきとした人間だ。しかし人間の天敵である吸鬼と手を組んでいる。その理由は一つ。彼には葉えたい夢があった。絶対に普通の方法では葉えることのできない夢。
「我が同族に迎えれてあげる」
なりたいのだ。人外の存在、吸鬼に。
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