《久遠》第4話 滅鬼師の責務

「―――せッ!」

突然、直江はその一文字をんだ。

「な……なによ」

首につきたてられようとしていた牙も止まる。

「せ……責務があります……滅鬼師には……責務が5つあります……」

滅鬼師とはハンターの正式名稱である。

気づけば直江はその場で滅鬼師の責務について語っていた。

なぜか死の間際に思い出したのは、教本の序文に書かれていた數行だったのだ。

「滅鬼師は、狩りに関する知識と技を習得し、その改善と発達に盡力しなければならない……けれど、僕は勉強なんて不得意だからきっとそれは守れない……」

「…………それで?」

「二つ目は、滅鬼師は狩りの際に合理的に行し、賭けを行ってはならない……だけれど、僕は合理的じゃない行も、賭けも必要だと思う」

「つまりなんなのよ」

「つ、つまり……」

息もたえたえに直江は次の言葉を口に出す。

「僕は、ハンターにふさわしくない……ただ僕は、特別な存在になりたかっただけなんだ……だ、だから………」

そこまで聞いて男の口元がニンマリと吊り上がる。

彼はきっと直江の言いたいがわかったのだろう。

「どうかお願いです。僕を吸鬼にしてください」

それは彼の本心であった。

ただ毎日、學校に通って同じことを繰り返す日々。退屈な日常というものを直江は心底憎んでいた。人生にはゲームのように決められは目標というものが存在しない。自分には宿命などない。何もない。

彼は何か刺激をしていた。だから滅鬼師として異界の存在を狩っていた。

けれど、なれるのなら吸鬼でも構わない。

人の道を外れ、鬼として夜を生きるのも悪くはない。

むしろ、なんかそっちのほうがカッコいい。

だから彼は懇願した。

自らを怪にしてもらうために。

しかし――――。

「ダメよ」

その願いは聞きれられなかった。

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