隣りの港町からイギリス系ヴァンパイアが上陸してこの街にやってきたとの報を摑んだ。

吸鬼特捜隊の面々は対象を狩るために行を開始する。

吸鬼が潛伏しているとされる廃校についた時刻は日付の変わる數分前。

廃校を囲む家々もいくつかは明かりが消えて就寢時間を迎えているようだ。

太ののある晝を狙ったほうがよさそうに思えるが、明日は曇りだ。潛伏先を変えられて姿をくらます可能があるのでしでも早く狩ったほうがいいというのが彼らの見解だ。

直江たち四人は建の影から廃校の様子を確認する。

吾郎が「おい、あれ見えるか」と學校の正面玄関を指さした。

數十メートル離れているのでうっすらだが、靴箱が並んでいる場所に明らか人間ではない獣のような何かが蠢いている。

……おいおい。使役してる鬼を隠しもせず番犬代わりに使っているのか……。

一般人に発見されればそれだけでパニックが起こるというのに。

そうなれば困るのは、ハンターを呼ばれる吸鬼の方だというのにバカなやつだ……。

「まあいいや。祭ちゃん。撮っちゃえ」

直江が指示すると、特殊な小型カメラで鬼を撮影する祭。

滅鬼師見習いが殺傷能力の高い武裝を使用するには、そこに確かに敵がいるということを《本局》に示さなければならない。

祭の攜帯を覗くと『抜刀許可を申請中です』と畫面に表示されている。

直江は所持している日本刀を確認した。柄にロックがかかっていて抜くことができない。

量産型封魔〈赤刀〉(しゃっけつとう)。本局で借りることのできるこれは造刀で刃は潰されている。しかしその刀には異界の存在のみを滅する要素が含まれている。

「早く斬りてえ……高ぶってきたぜえ……」

吾郎が手に包帯を巻いて白いをやたらつけている。ヤバい薬をやっているわけではない。り止めだ。その様子を見る限り、もう貧の心配はなさそうだ。

「ふはは。僕と我寫髑髏がいる限り君達は大船に乗ったつもりでいるといいさ」

四ノ宮は刀を既に抜いている。本局のものではないので柄にロックなどかかっていないが、許可も出されていないのに市街地で抜刀するのは犯罪である。

なんか刀に寫る自分の姿を眺めてほれぼれしている様子だ。

ちなみに、プロでもない滅鬼師見習いが造刀でもないガチの日本刀を裝備すること事態アウトである。

「そういえば……」と吾郎が口を開く。

「直江っていつもどっから報もってくんだよ。ここに吸鬼隠れてるってツイッターでも流れてんのか？」

「……ま。僕の報網は々複雑で」

今回の報を直江に教えたのはバンピールだ。

彼は自らの使役する小さな死霊を街全域にはびこらせて監視している。だから同族の存在に気がついたのだ。

思い出すのはバンピールの鬱陶しそうな顔。

「私のテリトリーにってくること事態がタブーなのよ」

自らの領域を犯すものは例え同族であろうと殺す。しかし自らが手を下すことは面倒くさくてしない。そんなわがままな主人に従うのが直江の務めだ。

そのとき、カチリと音がして刀のロックが解除された。

『申請を理しました。抜刀を許可します』