《久遠》第10話 麻上流鬼葬剣 教えの參 二連椿

流暢に日本語を話して見せた男はその手に生えた爪を10センチほどばした。

心臓が高鳴り、警笛を告げる。今更になって張や恐怖といったが押し寄せて來た。

……安心しろ、僕。敵はそこまで強くないはずだ。

直江はまともにサイコキネシスを喰らってもすぐに立ち上がることができた。

これがバンピールのものだったなら最悪四肢が千切れ飛ぶ可能だってある。

鬼となってまだ日が淺いか、エネルギーの源であるが足りていないのか。

ともあれついている……。

奴が勢を低くした。飛びかかるつもりか。

空中では自由にかせないというのに力の勢いを優先したのだろう。

直江が見習いだと知って油斷している。

ならこれはチャンスだ。

刀を大きく振り上げて、その姿勢のまま止まる。

上段の構え。力をこめた攻撃をすぐに繰り出すことができ、なおかつ隙をわざと見せて相手の攻撃位置を意図的に腹部に限定させる構えだ。

だが逆にいえばこの構えは相手の攻撃速度が予想より早いと深手を負ってしまう諸刃の剣。

勝敗は一瞬で決するだろう。

死ぬのは吸鬼か、それとも直江か。

この勢から出せる剣は主に3つ。

そのまま振り下ろす〈弧月〉か、面を割る〈穂刈り〉か、攻撃してきた手を落とす〈虛〉。

しかし直江のスピードから出せる〈孤月〉や〈穂刈り〉は予想されて回避される可能が高く。カウンターの〈虛〉は一歩間違えればこちらの攻撃が遅れてそのまま腹を貫かれる。

……ならあれを使おう。教本には乗っていない4番目の剣

直江はバンピールという吸鬼の師から唯一教えてもらった技の手順を脳で反芻する。

「いい?これは私に傷をつけたものよ。嫌でも覚えているわ」

知る限りカウンターであるのに先にこちらからく型はこの一つだけ。

「はあッ!」

掛け聲とともに直江は駆ける。放つものは〈孤月〉と寸分変わらぬ振り下ろし。だが男は大きく上を仰け反らせてそれを回避した。

ヒュッと音がして刀が空ぶると男がニヤリと顔を歪ませその爪を振るう。

だが遅いぞ!

剎那、直江は刀の刃を上に向けて切り上げた。

男からが散って、それは宙で青い炎となって消える。

攻撃を終えたと思わせて続けざまに次の攻撃を放つ型。

麻上流鬼葬剣 教えの參〈二連椿〉。

斬撃は相手の腰から頭にまで達したようだ。

重傷とまではいかないが刃が相手の目を切ったようで、男は顔を抑えながら後退っている。

空振りに終った一度目の斬撃の時點で既に二度目の攻撃をおこなう勢を整えるのがこの型だ。直江には絶対に相手より早く攻撃を放てる自信があった。

「まだやるか?こうもり」

息は荒く、はっきり言って余裕なんてなかったが直江はそう言ってやった。

有利な時點で格好をつけることはいいことだ。相手の闘爭心を削げる。逆上させればなおよし。正常な判斷を奪える。

だが格好つけた意味はあまりなかった

「何をしている!早くこいつを殺れえ!」

男がび、その瞬間直江の背後から大きな音とともに何かが現れた。

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