《久遠》第13話 死慘々

鬼が彼に向かって突撃する。しかしその鬼に向かって誰かが飛びかかった。

「直江逃げろぉ!誰でもいい!助けを呼んでこい!」

吾郎だ。勇猛果敢に刀を振るい鬼のを削いでいる。

かなりの剣速。鬼も骨を構えて防ごうとしているが対処できていない。

しかしダメージが通っているのかと問われればそんな風には見えなかった。

吾郎の顔にも疲労のがうかがえる。反撃の機を見つけた鬼が骨を振るい、それを吾郎は刀でけるが衝撃を殺しきれず飛ばされる。

折れた刀の先が宙を舞って地面に突き刺さった。

……だめだ……吾郎もやられた……。

直江の手が震えだす。

もうなすすべがない……。

鬼がゆっくりと直江に歩み寄る。

けない。

鬼がもう目の前まで迫っているというのに直江はその場でペタンと座りこんでしまう。

に力がらなかった。

きっとこれは罰なんだ。直江はふとそう思った。

僕が甘いで仲間を騙していた罰。

結局……僕は何者にもなれなかった……特別な存在にも……誰かを守れる強い人間にも……。

「直江」

隣で聲がした。

目を向けるとそこに祭が立っている。

「……ま……祭ちゃん……だめだ……だめだ!逃げるんだ!」

手には四ノ宮の我寫髑髏が握られている。

戦うつもりなのだ……。

しかし手は直江同様震え、その額からは冷や汗が流れている。

「うちが……うちがやらな……」

祭がぎこちないきで刀を構える。

だがその構えを直江は一度見たことがある。

……これは………この構えは……。

記憶に浮かんでくるのはある日のバンピールとの會話。

「あんたにこの剣を教えてあげるわ。といっても初めは真似できないでしょうけど」

その最初の構えを今目の前にいる祭がやっている。

ふっと辺りの空気が冷たく、張りついたものに変わった。

祭が一歩踏みこむ。

「〈死慘々〉」

次の瞬間、青い鮮が舞っていた。

両手、両足。そして首からを噴出して鬼は地に伏した。

大量のが発火し、ゆらゆらと鬼火のように宙を漂う。

その中に祭が佇んでいる。

泣いているのか……微笑んでいるのか……奇妙な表浮かべている。

そんな彼の橫顔から直江は目が離せなかった。

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