《久遠》第15話 資格停止中

わめく四ノ宮と、それをただの虛栄だと思って聞き流す吾郎。だが実際に直江のせいだということは當たっていたので、直江はランニングに集中するふりをした。

「おい直江。脂肪ばっかり落としても筋つけないと力出ねえぞ」

かれこれ30分は同じことをしているので、そろそろ代ということで直江がダンベルを持つ。もちろん吾郎ほど重たいものは持てないので三分の一ほどの重さで。

それでもかなりキツいもので、ふくらはぎが悲鳴をあげているように痛い。

しかし強くならなければならない。直江の頭に浮かんだのはあの日鬼を前にしてけなかった自分と、それを助けたの姿。

「なあ、吾郎。そういえば聞いたことなかったんだけど、祭ちゃんを特捜隊にいれたのはどうしてなんだ?」

「そりゃ元プロだからな」

「え?」

「え?」

衝撃の発言に力が抜けて、肩にのせたダンベルの重みで崩れそうになる。それを吾郎が慌てて止める。

「おいおい。知らなかったのかよ……」

「し、知らなかったっていうか。噓だろ?」

「いや、噓じゃねえよ。見ただろ、あの時の強さ」

「でも吾郎。前に言ってたじゃん。この特捜隊にプロはいないって」

「おう。現役のな。祭ちゃんは元プロ。今は資格停止中」

それ元っていう?と直江は疑問に思い、同意の目を四ノ宮に向けたが、どうやら彼も知っていたようで特に変わりなく瞑想に勵んでいた。

…………ふわっ。

浮いた!

「ふふふ。吾郎くん。直江くん。今のを見たかい?この僕ともなれば宙に一瞬浮くことも可能……」

「資格停止中ってどういう意味だよ」

「いや。それは俺も聞いてねえけど……ともかくあいつは急時以外規則で刀を抜けねえ」

「……二人とも見ていなかったようだねえ……」

四ノ宮はさておき、

「知らなかった……てっきり祭ちゃんも僕たちと同じ見習いなのかと……」

トレーニングにらないので直江はダンベルを置く。

「特捜隊作る時に見習いだけだと許可が《本局》から降りなかったからな。プロをメンバーに一人加えろって言われたんだけどこの街にはいないしアテもなかったから特別に元プロの立花祭を加えて大目に見てもらっている」

「でも教本には、チームに必ずしもプロがいる必要はないって……」

「ふっ。バカだねえ直江くんは。その場合殺傷力の高い武の攜帯は止されるし、鬼や死霊を見つけた時も戦はカテゴリー1までに限定されるのさっ。そんなことも知らなかったのかあい?」

「…………チッ」

「!?」

苛立った直江に殺気を向けられたので四ノ宮は瞑想に集中することにした。そして再び一瞬浮いた。が、二人はまたしても見ていなかった。運部の連中が「あいついま一瞬浮いたっぽくね?」と騒いだが、見間違いだということで片付いた。

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