《久遠》第21話 鬼神

「麻上流鬼葬剣 型の陸 螺旋水蛇(ねじれみずち)」

次の瞬間、衝撃に襲われたバンピールは宙を旋回しながら舞い、そして地面に叩き付けられた。

彼のとるべき戦は逃走一択しかなかったのだ。

目の前にいる相手は、麻上一族率いる剣客集団麻上流の門下生であり、その天才的な太刀筋からいずれはあの剣豪を超えるともいわれた、〈鬼神〉立花 祭なのだから。

に切り傷をけて、左腕も切り飛ばされたバンピール。これを満創痍とよばずして何とよぼう。

それでも這いつくばって逃げようとする彼に祭は刃を向けた。

「ひっ」

あのバンピールが怯えている……。

直江は目の前で繰り広げられた信じられない景に絶句していた。

祭の表は見えない。しかし彼の背からは怒気とよぶべきものが放たれているのをじる。

バンピールが直江に目で訴える。

……撃ちなさい!

祭が殺気をこめた刃を振り上げる。

ここで撃たなければバンピールが死ぬ―――!

「待ってくれ!!」

刃がバンピールの鼻先で止まった。

直江がその手にもつ銃を構える。

だが対象は祭ではない。自分自に彼は銃口を向けていた。

「その人が死ねば……僕も死んでしまう」

自らのこめかみに銃を押しつける直江はそう言った。

祭やバンピールにはその行が理解できない。

「僕は……られている。今ここで祭ちゃんがその人を殺せば……僕も自分で自分を撃つことになる……」

それは1%も混じりけのない噓だった。

だがしかし、その噓が自分に対しての助け舟だとバンピールは解釈した。

「殘念ね、お嬢ちゃん。私のほうがしだけ上手だったってことよ。ふふふ……」

不敵に笑うが演技である。

もしこの瞬間、祭が刀を突き刺しても直江に危害など一切加われない。

しかし祭にはそれが看破できない。

揺して今にも泣きそうな表浮かべている。

「……やめて……を解いて……!」

「そうねえ。なら今のお返しをたっぷりさせてもらってから解除してあげるわ……」

バンピールが殘った片方の手に力をこめて、爪を鋭利にばす。

だがそれを「やめろ」と直江が制止した。

……頼む……このまま引いてくれ……。

直江はバンピールを睨みつける。

バンピールはギリッと歯を噛み締めた。

……この中途半端な狀況が……あんたの出した答えってわけね……。

「じゃあね。人間ども」

バンピールの傷口から大量のが噴出した。

おそらく切られてから今までずっと吸鬼のもつ異能の力で止していたのだろう。それをわざと解除したのだ。

シャワーのように吹き出すは青い火のの群となって宙を旋回する。

これには思わず祭も後退。

それを機にバンピールは逃走し、風のようにその姿を消した。

直江も銃を下ろす。

「……直江!」

祭が刀を捨てて彼の元に駆けよる。

「だ、大丈夫なん……?」

両手でペタペタと彼のって、どこか傷がないか、まだられておかしくはなってないか探ろうとしている。そんな彼に直江は頭を下げた。

「……ごめん。足でまといになった……僕のせいであいつが逃げた」

「直江が無事やったら………別にええもん……」

顔を上げるとそこには微笑む祭の姿があった。

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