《久遠》第34話 じゃあね

「……どうして祭を切ったんですか……」

直江の聲は震えている。

「どうして切ったんですか!」

摑みかかろうとした直江を鳴華は蹴り飛ばした。

「気持ちはわかるがそいつはもう処分対象だ」

冷たい目を直江に向けていた鳴華はすぐに背を向ける。

とて揺していないといえば噓になる。

だが彼は滅鬼師として私というものを完全に捨てきっていた。

使命は一つ。殺せといわれているものを殺すのみ。

……そんな自分がよもや洗脳されて敵の手駒とされるとは……。

最後に覚えているのはロンドンでシルヴィアと対峙した記憶。

洗脳された人間を使われがなかったのだ。

人を殺すということに躊躇いはない。

ただ、られているとはいえ人間を殺すことは本局にじられている。規則を重んじる彼にとってシルヴィアは相の悪い相手だったといえるだろう。

……忌々しい。気が収まらん……。

苦渋に満ちた顔を浮かべる鳴華だが、ふとあることに気づく。

目の前には先ほどしとめたはずのシルヴィアの死がある。

洗脳が解けた瞬間、彼の意表をついて首を切りとばしたのだ。

しかしその飛ばしたはずの首がどこにもない。

気配をじてその先に目を向けると一つの影が消える。

「そこで待機しておけ」

そう直江に言って彼はこの街に潛む殘りの吸鬼を殲滅するためにその場を去る。

祭の息はまだある。

だが出がひどい。

「おい……直江」

聲をあげたのは吾郎である。

刺された箇所がまだ致命的ではないのか彼はまだ祭よりも生命力が衰えていない。

「祭は……助かるのか……?」

直江は表を暗くする。

既に本局には四ノ宮が連絡して今醫療チームが向かってきているのだがそれでも間に合わないだろう。

直江は地面に拳を打ちつけた。

見ているだけなのか……僕は何もできないのか……!

自分に対して怒りが増してくる。

冷たい……彼からどんどん溫もりが消えていく。

「助けてくれ……誰か……誰でもいいから祭を……」

「……なおえ………」

聲がする。

祭だ。

まだ意識がある……!

「祭ちゃん!」

「……なお……え……」

直江は彼に顔を近づける。

その息は小さく、そして細かく切れていた。

きっともう呼吸するだけで辛いのだ。

そんな彼が直江の肩を摑み、ぐっとを寄せる。

が直江にれた。

冷たい口づけだった。

「…………じゃあね」

§第1章クライマックスの35話から40話はnote(ノート)というサイトにて掲載しています。

お手數おかけして申し訳ありません

あちらでの作者名は『カンジ』ですのでお間違いなく。表紙イラストが目印です。

ぜひぜひ読んでください。

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