「ハッ、赤目の娘ってのはそう言う事か。」

 「ついにお出ましか、榎本。」

 夜の空の下に、二人が対峙する。

 「これで會ったことは無いはずだが？」

 「こちとら、今回はスポンサーが付いていてなぁ。」

 スポンサー。何者かが報を渡したのか。

 だが、異能力自が機報。知れる人間は限られるはずだ。

 「出資者様は核がしいとか言ってたが、んなもんどうでもいい。俺はお前を殺すためにあんな気悪りぃ化け使ってまできだしたんだ。」

 「……それも、その出資者ってのから出されたのか？」

 「まあな。それと、核の取り出しは殺してからでも遅くねぇしな。」

 「……」

 (…おそらく、核をすると言うことは、異能兵でも造るんだろうが、それよりも、問題は、あいつがAstralbeat α について、どれだけ知ってるかだ。)

  核とは、嶺夜の異能力の力の源であり、霊力循環の中樞である。

 つまり、核を取り出す＝“の崩壊”となる。

 (まあ、死ぬ事は無いけど。)

 破壊されないかぎり。

 榎本は、そこら辺が分かっていない様子だ。

 スポンサーも知らないか、或いは意図的に隠したか。

 この場合、後者が正しいだろう。

 殺すためには、核の破壊が必要。だが、そんな事をされれば困る。

 (まあ、核の破壊で死ぬのも、一過のものだが。)

 正直、自分の死に方が分からない。

 「とにかく、今はこの狀況をしないと。」

 一方その頃、他の者は、ノメアロDの討伐をしていた。

 「やっぱり、嶺夜はこの辺りにいないわ。」

 「あいつの事だ。どっかで寢てんだろ。」

 「…って言うか、一人だけ遠くに吹っ飛ぶってドユコト？」

 此方はかなり余裕がある。

 それぞれ、ノメアロDの後ろの頭、もとい、食頭の攻撃をかわし、立ち回る。

 「……もしかしたら、釣れたのかもな。」

 「「「「確かに。」」」」

 彩香が食頭を反転させながら

 「じゃあ、こんなのさっさと倒して迎えにいきましょう！」

 と言う。そして、飛んできた飛沫や片をかわす。

 「主を冠す我が名の下に、禍の者に破滅の願いを、黃金の涙と翼を贄に、風の熱を払い魔を打ち払う矢となれ。《アイシクリルアロー》！」

 千奈のが、ノメアロDの顔面に刺さる。

 ノメアロDは、地面にぐちゃぁと脳髄と臓をぶちまけて、絶命する。

 「汚ねぇ花火だ。」

  「さてと、じゃあ罠の確認にいきますか。」

 嶺夜の右腕から出た粒子霊核が、一振りの刀を構する。

 この刀は、霊脈が発達した、異能新生

〔青桜アオザクラ〕から掘り出された異能聖である。

 青桜とは、花弁が粒子霊核で蒼く輝く桜である。また、地面の鉄を吸収し、細胞壁を合する特を持つ。

 この刀が掘り出された青桜は、樹齢30000年のものであった。その木が枯れたことで偶然発見されたそれは、どういう訳だか刃のついた刀の形をしていた。

それを研ぎ出したものがこれだ。

 霊脈がすでに張られているので、恩恵付與(エンチャント)がしやすい。

 そして、ウエポンバッグに収納しやすい。

 武の収納。これがこのスキルの正しい使い方だ。決して食材を収納するスキルではない。

 この刀、《蒼桜ｱｵﾉｵｳｷ》に、霊力を循環させる。

 蒼桜が輝き出す。

 (さてと、焼き付けの剣が何処まで通用するか。)

 嶺夜が構えをとったのを見て、榎本も臨戦態勢にる。

 剎那、蒼い閃と鉛の閃が火花を散らしてぶつかり合う。

 「ッ！なかなか重いな。だがこのくらい、」

 そう言って、嶺夜を弾く。

 それに対し、後ろに飛んで対応する。

 すかさず、嶺夜を刃尾が襲う。

 (…剣みたいな切れ味の癖に、鞭のようにしなりやがる。先を弾いたとしてもッ！)

 尾の先を蒼桜で弾く。だが、慣の法則は、覆る事なく尾をかす。

 頭を打っても腹が襲う。腹を打ったら頭が帰ってくる。

 「このじ、まるで蛇腹剣じゃないか！」

 「ご名答。刃尾こいつは空想技ファンタジアテクノロジー《大蛇牙ｵﾛﾁﾉﾀｲｶﾞ》特殊形型だ。」

 「誰か僕に《天羽々斬ｱﾏﾉﾊﾊﾞｷﾘ》を！」

 だが、そんな事を言っていても何も変わらない。

実際、天羽々斬は見つかってなどいない。そもそも、存在すら怪しい。

 信仰が集まれば、製させることもあるんだが。

 嶺夜は、蛇の檻から、地面を転がる事で抜け出すと、蒼桜に熱の恩恵を付ける。

 その瞬間、空気が凍り付いた。

 比喩にあらず、訂正は無い。文字通り、``理`的`に凍った。

 「なっ！」

 空気中の水分はおろか、二酸化炭素までもが凍り始める。

 その時、蒼桜が炎に包まれる。

 どうやら、空気にマイナスの熱を與え続けているらしい。

 このままでは、きが鈍るどころか凍死する。

  「糞がッ！」

 屬とは、自然からける恩恵で、特殊攻撃や、等の土臺となるだ。

 炎、水、地、熱、、雷、霊、無。この八つが屬としてける恩恵である。

 ちなみに、アニメによくある、草や土は地、闇は、風や氷は熱に統合される。

 同系統、又は対立系統の屬では、必ず互いの効果を打ち消し會う“屬相殺”が起こる。

 あいにく、榎本は熱屬の恩恵を持っていない。

屬相殺が出來ないので、者を倒す他無い。

 「おらぁぁぁぁぁぁぁああ！」

 心拍數を上げ、溫を上げて尾を出する。

 嶺夜は、それを燃え盛る蒼桜で迎え撃つ。

 榎本の尾が嶺夜の蒼桜に當たったその時、

尾が凍り付き、砕けた。 

 「は？」

 榎本の口から呆けた聲がこぼれる。

 嶺夜は、その隙を逃さず蒼桜に溜めた熱を一気に放つ。

 散々冷やされた空気が突然急速に暖められたことで、空気が高速で膨張し発する。

 轟音と共に、辺り一帯が吹き飛んだ。

 森の奧まで吹き飛ばされた榎本は、防を解き立ち上がる。

 刃尾でを囲うのがもうし遅ければ、こんがり炭になった臓とが辺りに散していただろう。

 「……今回は敗けといてやる。これで一勝一敗だ。次で決める。」

 「や、ぶっぱなしすぎた。」

 蒼桜をウエポンバッグに収納し、嶺夜は呟く。

 『やあ、これはまた、ずいぶんと遊んだね。』

 嶺夜は聲がした方向を向く。

 が、誰も居ない。

 正確には、黒貓が一匹居るだけだ。

嶺夜が辺りを見回していると、

 『ちょっと、お姉さん。こっちだよこっち。』

 その聲は、さっきと同じだった。

 それは、その黒貓から聞こえた。

 『やあ、はじめまして。僕は西園寺 白錬サイオンジ ハクレン第二班の能力貓さ。』