《エルフさんが通ります》エルフ式魔法戦闘訓練(地獄式)仕込み

冒険者Dランクに上がった次の日、

「さあ、アレス! 最後の試練よ」

『試練よ!』

ティスタニアの南門を出てすぐのところにで私、くーちゃん、アレスの三人はいた。

私とくーちゃんはやる気満々で、アレスはというとどんよりした表を浮かべていた。

「朝早くからなんですか、ボクはまだ眠いです」

あれ? また一人稱がボクに戻ってるな。だが容赦はしませんよ。

「起きなさい」

私は素早く魔法のカバンマジックバックから鏃の付いていない矢を取り出し、弓を放つ。

「がばぁ⁉︎」

寸分違わずにアレスの鳩尾にりアレスが膝を付き顔を真っ青にする。

口をパクパクさしているところをみると完璧にったようだ。

「あなたは二日間でそれなりの魔法使いになりました。そこで最後の試練です」

「が……ざいごの試練?」

私を見上げるアレスの顔には苦悶の表と疑問の表が浮かんでいます。そんなアレスの顔を見て私はニヤリと笑います。

「あなたにはミノタウロスと再戦してもらいます」

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「それ位ならなんとか」

ようやくまともに呼吸ができるようになったのかアレスは立ち上がると澄ました顔で答えてきました。ふふ、二日前とは別人ですね。いいじに危機をじる覚が壊れているみたいですし。

「昨日、冒険者ギルドで聞いたんですがミノタウロスを一人で狩れるならCランク相當の冒険者らしいです」

「え! 本當ですか!」

今までのブスッとした表から一転し年相応の年の笑みを浮かべるアレス。

やはりランクには興味があるみたいですね。まぁ、この年頃の年は英雄願があるものですからね。

『リリカは何歳なの?』

「十六歳ですけど?」

『……』

くーちゃんの無言の沈黙は何を意味するんですかね?

「とりあえず、試練は明日! 準備は萬端にしておくように!」

「はい!」

アレスの元気な聲を聞いて私はニヤリと笑みを浮かべるのであった。

その日の夕方、私とくーちゃんはムトゥの森の中層にいました。

そう、アレスは勘違いしている。私は唯のミノタウロスをけしかける気は全くない。一度も普通のミノタウロスとは言ってないし噓は言ってないんですよ。

『リリカ、何するの?』

「里を出る時に悪友から貰ったを使おうと思ってるんです」

くーちゃんに答え、見えるように黒い寶石を掌に乗せます。あ、寶石だから素手ではりませんよ? ちゃんと防用の魔法を幾重にもかけていますしなんか痛みそうですし。それを見たくーちゃんは顔を顰めました。

『これ、凄く嫌な魔力だね』

「ええ、友達が『これを私だと思って大事に持ってて! 私の全魔力を込めたこの寶石で必ず殺してやるんだから!』と言って私に押し付けた寶石です。照れ屋さんだったので素直に言えなかったんでしょう」

『……これ、呪詛かかってるよ』

「あとこれも使いましょう」

次に私が魔法のカバンマジックバックから取り出したのは漆黒の大剣です。これはなかなかに綺麗な裝飾がされているので気にっているんですが私の力では振り回せないので魔法のカバンマジックバックの中で眠っていた一品です。

『……これもすごい呪詛だよ?』

「これも別の友達から頂きました。『里にいる間に貴様の首をとることはできなかった。だが、この剣が必ず貴様の首を撥ねるからな! 覚悟しろよ! ケケケケ』と將來の決闘まで申し込まれましたね」

『…………リリカ、本當に友達だったの?』

「ええ、友達でしたよ。主に私が弓で一方的に攻撃する側でしたが」

達は元気でしょうか。

達も本気で私に戦いを挑んできましたからね。ついつい本気で相手をしてしまいましたし、ああ、人口呼吸や急手をしたのも今ならいい思い出ですね。

漆黒の大剣をしまいながら染み染みと思い出します。

「聞いた話ではの魔力を帯びたものを死なない程度に食らった魔は変異種と呼ばれるものに変わるらしいです」

『そうらしいね』

これだけの魔力の塊です。それはもうすごい変異種が生まれることでしょう。

あとはこれを喰らわす魔ですが、

「見當たりませんね」

『いないね』

すでに森の深い場所まで來ていますが魔が見當たりません。気配はじますがまるでなにかに怯えているみたいに隠れているみたいですね。

それににまとわりつくようななんともいえない嫌なじが周囲に充満しているようですし。

「くーちゃん、この嫌なじの出処わかります?」

『んー、こっち?』

くーちゃんもこのじがわかるのか私の言ったことを理解してくれました。

くーちゃんがふわふわと向かう方について行くと窟が見えました。

ふむ、嫌なじはここからきてるみたいですね。

窟のり口に立ち、中を覗き込みますが外の月のすららない中は完全な暗闇に覆い盡くされているようです。

「こんにちはー」

わーわーと私の聲がに反響しています。そして中には何かがいると確信します。

『なんかいる』

くーちゃんに言われるまでもなく私はすでに警戒します。

「GAAAAAAAA!」

から咆哮が響く。そして何か重いが音を立てながらり口であるこちらに向かってきているようですね。

すぐさま私は橫に避ける。すると巨大なものが橫を通り過ぎそのまま目の前の大木に突進し衝突。私の倍位は太いであろう大木をへし折ります。

大木をへし折ったのは角。その巨大なものはゆっくりとこちらへと振り返ります。

「ミノタウロス…… しかもあの時逃げたやつですね」

降り返ったミノタウロスには右腕が存在しませんでした。當然です。私が吹き飛ばしたんですから。

ミノタウロスは憎悪に染まった瞳をこちらに向けてきます。いやなじの正はこの悪意ですかね。

「いや、そんな目で見られましてもね。所詮私達、狩る狩られるの関係ですよ? 命あってこそじゃないですか?」

「GGGGAAAA!」

咆哮が再度響き渡り周囲の空気が振する。ビリビリしますねー

「ふむ、こいつにしましょう」

『こいつ?』

私とくーちゃんが話をしている間にミノタウロスは角を突き出し一気に突進を仕掛けてきます。

「GAAAAAAAA!」

當たると危ないけど當たらないと意味がないんだよ。しかも突進ってスピードがでてないと意味がないからね。容易くかわせるんですよ。

「ほい」

私の橫を通り過ぎたミノタウロスの無防備な背中に黒い寶石を投げつける。すると寶石はを張るようにミノタウロスの背中にくっ付き、赤黒いを漆黒のへと変さしていきました

「BOOOON⁉︎」

驚愕とも苦痛とも取れるようなび聲を上げ、ミノタウロスは大地を転がり回っている。どうやら痛いみたいですね。やがての全てが漆黒に染まると苦しんでいたのが止まったのかかなくなりました。ただし、周囲に発する圧力のようなものは明らかに増しています。

「どうなったかわからないけど、ここに武を置いておけば使いますよね」

魔法のカバンマジックバックより取り出した漆黒の大剣を大地に突き刺しときます。あとはこれを手にしたミノタウロスとアレスを戦わすだけですね。

「楽しみです」

『契約霊だけど言わして。リリカ絶対ロクな死に方しないよ?』

「ははは」

私は鼻歌を歌いながら倒れるミノタウロスを放置してティスタニアに向かい歩き始めます。

予想外の変化が訪れるとも知らずに……

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