《エルフさんが通ります》戦場の者
「怯むな! すすめぇ!」
炎が、雷が、風が、槍が、剣が、弓矢が飛びう中で怒號、悲鳴、鼓舞の聲が響き渡る。
様々な種族がり混じる『魔王絶対許さない同盟』が全戦力を投した戦場。それを迎え撃つのはメイド服にを包んだ異形の魔王軍、アリエルメイド軍団である。
メイドが一糸れぬ隊列を組みながら前進し、武を巧みにり進軍する様は一種の蕓品のようなものに見えるが実際の戦場ではただの恐怖の塊にすぎない。
アリエル軍団は前衛は剣、槍をり、後衛は弓と魔法を使うといういたってシンプルな布陣である。ただし、それは恐怖をじなければというものである。現に『魔王絶対許さない同盟』も同じような布陣であり、左翼、右翼、中央から包囲殲滅をする予定であった。
しかし、彼らはをじる生き。対してアリエル軍団は命じられるままに前進を続ける。例え正面、橫で自分と同じ顔をした人が倒れようとも顔ひとつ変えることなく進み続け、目の前の敵を屠り続けるのだ。
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そんな歩く殺戮人形キリングドールを前に対敵していた中央軍が揺するのも無理はないというものだろう。
揺は焦りへと変わり、やがと焦りは恐怖へと変わる。そして恐怖によりきが鈍った中央軍をアリエル軍団が見逃すはずはなかった。
「中央軍が突破されます!」
「各國の魔法騎士団を中央を立て直したのちに遊撃に回せ! ここで遊ばせていては敗走するぞ!」
ひるむことなく司令部に向かい進軍を続けるアリエル軍団を見て取った『魔王絶対許さない同盟』の総司令は各國の保有する虎の子の騎士団を迷わずに投する。
すでに総崩れとなりかけている中央軍だったが魔法騎士団の參戦により完全な崩壊は間逃れ、かろうじて迎撃を続けることができた。
「伝令! 左翼前方にスケルトンの軍勢!」
慌てて駆け込んできたその伝令の報告を聞き、総司令は口元に笑みを浮かべる。
「みろ、敵もモンスターの中でも最弱のスケルトンをだすほどに追い詰められている。ここを乗り切れば我らの勝利が見えてくるぞ!」
『おお!』
「それで、その規模は?」
総司令の言葉に周りの將たちも希に満ちたような表を浮かべ始めていた。ただ、その報告を持ってきた伝令をのぞいてだが。
「スケルトンの軍勢の規模はおよそ…… 三萬だと思われます」
「さ、三萬だと⁉︎」
三萬、それは左翼に布陣する冒険者、兵士の混合軍団五萬には及ばない數である。だがそれはアリエルメイド軍団を相手にしていなければである。
いかに弱いモンスターといえども數を揃えれぼ恐ろしいものへと変わる。しかも敵は死を恐れないアンデットなのだ。
しかし、それだけで兇報は終わらない。
「報告! メイド部隊が徐々に後方に下がりつつあります!」
「変わり前方にモンスターの群れが見られます!」
「まさか、モンスター手懐けているのか?」
基本モンスターは群れることはあっても言うことを聞かすのは無理だと言うのが一般である。
だがシェリーに限っていえば圧倒的なまでの武力を持って従えらしているだけなのだがここにいる將校達にそれを知るすべはない。
「く、右翼に伝令を走らせろ! 中央に合流し前方のモンスターに攻撃を集中させろとな!」
「し、しかし右翼にもモンスターの大軍がきていますが……」
「くそが!」
悪態をつく総司令だが彼がそうなるのも無理はない話。『魔王絶対許さない同盟』の総合戦力は二十萬。しかし、魔王シェリーの率いるメイド隊は約十萬。本隊同士の數ならば同盟側が勝っていたことだろう。しかし、敵のメイドは數の不利をメイド一人の質で補い、さらにそこに新たな敵の援軍、モンスターの大軍である。メイド隊を包囲するつもりが実際は自分たちが包囲されているという狀況が出來上がっているのだ。
「こうなれば一點突破しかあるまい! 全軍に通達! 前のみをめざせとな!」
「しかし、それは……」
「わかっておる」
現狀、前に進もうと後ろに退こうと大差はない。
前に進めば突破はできるかもしれない。だが魔王を相手にする戦力は殘らないだろう。
後ろに下がれば持ちこたえれるかもしれない。だが全軍で攻めてくる魔王軍に対抗する力はないだろう。
「勇者様さえいれば……」
勇者がオリハル山に聖剣を覚醒さそうと赴き、姿を消したという話をここまで恨んだことはないだろう。
聞けばオリハル山は消し飛び、殘った場所にも激しい戦闘の跡があったという話である。捜索隊が出されたが死もみつからず生きてはいまい、そう考える者が大半であった。
「全軍、突撃ぃぃぃ!」
『オオオオ!』
無いねだりをしてもしかたがない総司令は頭を振り、決死の覚悟を持ち號令をだす。
それに答えるかのような全軍が前に向かい前進を開始、
しようとして音とともに立ち上がった炎の壁に立ちすくみ、きを止める。
「何事だ⁉︎」
「壁です! 炎の壁が突然姿を表しました!」
轟々と燃え盛る炎の壁を呆然と立ち盡くしている『魔王絶対許さない同盟』の面々。炎の中からの焼ける香ばしい匂いが立ち込める。
「で、伝令!」
「今度はなんだ⁉︎ またモンスターか⁉︎ もう多のことでは驚かんぞ!」
「空からドラゴンからのブレスです! あと何かが空から飛び降りてきています!」
「なんだ…… これは」
伝令に言われ空を見上げる。
するとそこには幾つもの炎弾を打ち出す青く煌めくドラゴンと、
「休日出勤バンザァァァァァァイ!」
訳のからない言葉をびながら落下してくる禍々しい黒騎士の姿が目にったのだった。
「世界の終わりがきたのか……」
総司令は疲れたように目の前の死が形取ったような黒騎士を見るしかなかった。
【書籍化】斷頭臺に消えた伝説の悪女、二度目の人生ではガリ勉地味眼鏡になって平穏を望む【コミカライズ】
☆8/2書籍が発売されました。8/4コミカライズ連載開始。詳細は活動報告にて☆ 王妃レティシアは斷頭臺にて処刑された。 戀人に夢中の夫を振り向かせるために様々な悪事を働いて、結果として國民に最低の悪女だと謗られる存在になったから。 夫には疎まれて、國民には恨まれて、みんな私のことなんて大嫌いなのね。 ああ、なんて愚かなことをしたのかしら。お父様お母様、ごめんなさい。 しかし死んだと思ったはずが何故か時を遡り、二度目の人生が始まった。 「今度の人生では戀なんてしない。ガリ勉地味眼鏡になって平穏に生きていく!」 一度目の時は遊び呆けていた學園生活も今生では勉強に費やすことに。一學年上に元夫のアグスティン王太子がいるけどもう全く気にしない。 そんなある日のこと、レティシアはとある男子生徒との出會いを果たす。 彼の名はカミロ・セルバンテス。のちに竜騎士となる予定の學園のスーパースターだ。 前世では仲が良かったけれど、今度の人生では底辺女と人気者。當然関わりなんてあるはずがない。 それなのに色々あって彼に魔法を教わることになったのだが、練習の最中に眼鏡がずれて素顔を見られてしまう。 そして何故か始まる怒濤の溺愛!囲い込み! え?私の素顔を見て一度目の人生の記憶を取り戻した? 「ずっと好きだった」って……本気なの⁉︎
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