《エルフさんが通ります》相手をしましょう

「弱すぎじゃないですか? それとも勇者一同あちらさんが強すぎるんですかね?」

を構え、こちらに向かい敵意むき出しの勇者さん一同を再びしっかりと視界へと捉えながら首をかしげます。

『いや、仮にも勇者だからね? あと聖剣だよ?』

私の言いに呆れたような目をしてくーちゃんが反論してきます。

あ、これは誤解しているじですね。

「ああ、言い方が悪かったですね。私が言ってる意味としては勇者が強すぎるという意味でです」

「強すぎる?」

「ええ」

ゼィハが疑問符を浮かべながら聞き返してきたのに私は頷きます。

「勇者は確かに魔と付くものには天敵となりえます。ですがそれは完璧に引き出すための武、聖剣がきっちりと機能してのことです」

魔王すら殺すことのできる聖剣。

しかし、それはオリハルコンを吸収し、覚醒しなければ真の力を解放することができません。そのために私はカズヤの邪魔をしに行ったわけですしね。

オリハルコンドラゴンは私が乗りとして使ってましたし死んでいないわけですから聖剣が真の力を解放できているわけがないんですがね。

「確実に強くなってます」

シェリーをぶっ飛ばすための準備期間である三ヶ月。

この間は勇者一同も私たちと同じように努力を積みさ重ねていたのはわかります。そのためどれくらい強くなったのかはある程度把握していると思っていたのですが。予想を上回る強さです。

「それは簡単だ。オリハルコンなら斬ったからな」

「はぁ?」

カズヤが自信ありげに言ってきますがそんな事はないはずなんですがね。

だってオリハルドラゴンは生きているわけですし。他にオリハルコンを斬るタイミングなんてなかったはずです。

それにですね、

「カズヤ、あなたがオリハルドラゴンを切れるだけの技量があるとは到底思えません」

「斬ったのは俺じゃねぇ、いや正確にはは斬ったとは言わないか」

何が面白いのかカズヤは聖剣を構えながら笑います。

私は全く面白くありませんが。あいつの笑みは不愉快度しか上がりません。

そんな不愉快そうにしている私をみたのが楽しいのかカズヤはさらに笑みを深めます。

「この聖剣でオリハルコンを突き刺したのはな! お前の姉ちゃんだよ! フィーから直接聞いたからな!」

あぁ、まぁ予想はしていましたがね。

しかし、いつ…… あ……

いつ突き刺したのかというのを考えると頭の中に魔王城に突っ込む前にオリハルドラゴンが加速する瞬間、聖剣をオリハルドラゴンに突き刺していたフィー姉さんの姿が思い出されます。

「はぁ」

また面倒なことが増えたことからか自然と大きなため息が溢れます。

またと言っていいのか面倒を増やしたのはフィー姉さんなわけですからね。エルフには全くもってまともなのがいない気がします。

「ゼィハ、あなたであの狂信者と暗殺者の相手は可能ですか?」

獣のような唸り聲を上げながらこちらの隙を伺うククと同じように無言で武であるナイフを構えるヴァンを指さします。

「いやいやいや、無理ですからね? あたしをあなたがたのような狂った戦闘力を持った人たちと一緒にしないでくださいよ!」

顔と手を高速で左右に振りながらゼィハは何気に失禮なことを言ってきますよね。

「さりげなく私のことも狂った側に數えましたね?」

「わざとですよ? 自覚が足りないようでしたのでね。あ、あたしは戦う気はありません。あくまであたしは研究者なんでね」

まぁ、敵対する気がないのであれば問題はないわけなんですが。

仕方ありません。

「はぁ」

再び大きくため息をついてしまいます。

一応眷屬? も倒されてしまったわけですしね。

それに考えようによっては悪いことばかりではありません。

ここで、勇者を潰しておけば後の障害は全て排除されるわけですし。後で楽するための布石と考えればまだやる気は起きるというものです。

そう考えた私は口角を吊り上げるような笑みを浮かべ、勇者一同の方へと魔の欠片から引き出した魔力を全にみなぎらせながら一歩踏み出します。

「では、仕方なしに魔神リリカが相手をしましょう」

腰の魔剣、退屈を塗りつぶす刺激カーニバルの柄に手をかけることなく私は芝居かがった仕草で両手を広げ宣言するのでした。

うん、今の私は魔神というより魔王ぽいですよね〜

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