《エルフさんが通ります》急いだ方がいいですよ?
誰もいない魔王城最上階。
だらけのその部屋に唐突にが開き、そこから「のぁぁ」と悲鳴をあげるようにして長い金の髪を巻き込むようにしてリリカと瓜二つの容姿をしたアルガンテロアが転がり出てきた。しかし、あわてたようにして起き上がるとすぐさま広げたを塞ぎ、そこでようやく息をつく。
「な、なんなのあれ、イレギュラーどころじゃないよ。バグだよバグ!」
苛ただしげに髪をかきあげながらアルガンテロアは悪態をつきながらもびをした後に歩き始める。
「でも固有空間にとじこめたわけだしね。しばらくは出てこれまい」
固有空間は普通は理的、魔法的なもので破ることはほぼできない。それが元は魔神と呼ばれていた自分のものであることからアルガンテロアはまず破れないと確信しているのである。
「あとはリリカの開けた道で僕は帰れるわけだしね」
そう、自分で言ったことに疑問を持たないアルガンテロアは上機嫌で歩みをていく。
みしり、という音が聞こえた。
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だがそれは機嫌がよく、さらには鼻歌を歌いながら歩くアルガンテロアには聞こえない。
みしり、という音がさらに大きくなった。
ここでようやくアルガンテロアは鼻歌を歌うのをやめ、背後を振り返った。
なんのことはない、ただ嫌な予がしたからだ。
しかし、振り返ったその顔はリリカと同じ顔でありながらも、褐のという違いがあったにもかかわらずそれを見た誰もが見てわかるほどに恐怖に歪んでいた。
そして最後に何かが割れるような音が響いた。
その瞬間にアルガンテロアは全力で駆け出していた。いや、どちらかというとすでに音が耳にる前に駆けていたように見えた。
音が響き始め、しばらくして空間の一部がまるでガラスが破れたかのようにが空き、そこから細っそりとした腕が現れたと思うと周りの空間をさらに叩き割り始める。
「さーて、リリカちゃんの違いはどこかかしらぁ?」
空間を割り姿を現したの全が鎖に覆われ明らかにけるような狀態ではないにもかかわらず普通に歩くフィーエトロンシアであり、満面の笑顔を浮かべながら元の世界に理不盡の塊が帰還した瞬間であった。
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そんなフィーが周りを見渡してみると必死に駆けて逃げているアルガンテロアが目にり、口元を歪め笑みを浮かべ、今度は姿が消える。
「み・つ・け・たぁぁぁぁ!」
「わぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
姿を消したフィーが次に姿を現したのはアルガンテロアの腰に手を回し、抱きつき、完全に捕獲しているような制だった。これにはさすがにアルガンテロアも悲鳴をあげようと抱きつかれた反で姿勢を崩し、床を転がり回る。その間、フィーも同じように転がっているのだが手を離す様子は一切見られなかった。
「ゲヘヘヘ! リリカちゃんとおんなじような匂いだぁ。妹じゃないから問題ないよねぇ」
アルガンテロアを押し倒し、そのに鼻を押しつけるようにして頰を緩めている。
「おまえ! というかおまえらというかさエルフみんなおかしくない⁉︎ 変態なのか!」
フィーの奇行に若干引きながらもアルガンテロアは聲とをバタつかせながら抵抗するが変態フィーは簡単には手を離そうとしない。
「リリカちゃんならこれくらい簡単に抜け出しちゃうけどまだ慣れてないアルちゃんはすぐに逃げれないでしょう」
「こ、このはぁ!」
悪態をつきながらも必死にを床に空いた大へとかし、かなりの時間をかけて落下することにアルガンテロアは功する。さすがにいきなり落下始めたことによりフィーも手を離した。
そのまま落下していった二人は特に防の姿勢をとることもなく床へ直撃。音を響かせながら床を瓦礫へと変えていく。
しかし、砂煙が上がる中二人の影はまるで落下の衝撃などなかったかのように素早くき、再び追いかけっこを開始する。
(どこだ! どこに作ったリリカ!)
駆けながらアルガンテロアは周りを注意深く見渡し自分の目的を探す。
「にがさなーい!」
そしてそれを當然落下のダメージなど知るわけがないかのような無傷で活力が漲りまくっているフィーが疾走し追いかける。
「くるなぁぁぁぁぁぁ!」
悲鳴をあげながらも目當てのを目にしたアルガンテロアは方向を変え、目的に向かい全力で駆ける。
魔界へ続く道へ向けて
「やばいやばいやばい! 僕はエルフとかいうのをバカにしていたかもしれない! というかあれはもはやエルフじゃないだろぉ⁉︎」
そして必死に駆けるアルガンテロアの視界に魔界のがみえてくるわけだが途中で妙なものを発見していた。
それはゆっくりとき、魔界へ通じる道の前へと移し、アルガンテロアの行く手を阻む。
(やなじだなぁ)
アルガンテロアの目の前に現れたはアルガンテロア自と同じ魔力を発した人型である。
それに警戒するようにアルガンテロアは足を止め、さらには後ろから迫っていたフィーもそれに気づいたかのように足を止める。
「あら? あれは」
「リリカ人形?」
前方で待ち構えていたのリリカそっくりの姿をしたどこでも自くん。
この狀況でのリリカが一番愉快に、そして効果的に使ってきたものが現れたことによりこの場になんとも言えない不穏な空気が流れ始めていた。
「やぁ、アル。このメッセージを聞いている時、私はもうこの場にはいないでしょう。あ、死んでませんよ? このばにいないというだけでね」
そんな空気を気にしないかのようにリリカ人形は本人が浮かべるであろう邪悪な笑みを浮かべながら言葉をつぐみはじめる。
「いろいろと考えた、というか五秒くらいだけどね。その結果、魔界への道はなかなかに危険じゃないかなーと考えたわけです」
やれやれと言わんばかりに肩をすくめながら話すリリカ人形。
その異様さにアルガンテロアは違和をじ、フィーはどうやったらこの人形も手にるかしら? と思考を巡らしていた。
「結果、このはぶっ飛ばすことに決めました。なんか魔界五天? とかいうのが攻撃してきた時にやり返したらだいぶ不安定になっちゃったんだよね。あと契約は道を作るってとこまでだったから問題ないはずですよね?」
「ちょっ⁉︎ なにしてるの⁉︎」
「だからちょっとした衝撃でもは消し飛ぶと思うんでね。だからアル、あなたにもチャンスとしてこのリリカ人形が喋ってる間に道へ向かうことをすすめます。あ、律儀にこのリリカ人形が喋っているのを聞いているのなら急いだ方がいいですよ?」
全く悪びれた様子のないリリカ人形の言葉を聞き終えた瞬間、アルガンテロアは歩みをかなり速めて再開する。
同時にフィーもリリカ人形とアルガンテロアを手にするべく駆け始めていた。
そしてリリカ人形の橫を通過しようとした瞬間、
「この人形はしゃべり始めて大三分くらいで吹き飛ぶ仕様にしてあるかりますので。あ、あとアルから貰った魔の欠片はこの人形の起剤扱いになっていますので。かなり変質さしといたから取り込んで無効果なんてできないですよ? そして流石に近距離で魔の欠片全ての魔力を使ったとなると不安定な道は維持できませんよね?」
「なっ⁉︎」
「うん? まだ喋れるということはまだ三分じゃないのかな? あ、そうだこのメッセージは全て聞いたあとに自的に削除される! 一度言ってみたか……」
リリカの言葉を今まで淀むことなく紡いできたリリカ人形が唐突に口を開くのを止めるとどんなに危機を覚えるのが鈍いのが見ても危ないとじるほどに不自然に揺れ始めていた。
「ま、にあえぇぇ!」
後に魔神が語る。
「あれほど必死に逃げて生きたことを安堵したことはない」と。
そう語り継がれるほどの必死さを出し、元魔神アルガンテロアは駆けた。
必死にリリカ人形の発からから逃げるために。
必死にリリカ姉から逃げるために。
「これはこれで良いものよ!」
しかし、予想外なこと? にフィーは逃げるアルガンテロアよりも手前で不気味に振を続けているリリカ人形の腰へとタックルを決めるかのように飛びつき地面に押し倒すと煙が上がるほどの速度で頬ずりを開始していた。
「はぁはぁ、これもまたリリカちゃんぽいが!」
もう完全に危ない人にしか見えないフィーのテンションが最大限に上がりきったその瞬間、リリカ人形が震をやめ、そして。
緋の閃が煌めいた。
それは抱きついていたフィーも驚いていような威力、熱量で。
それは必死に駆けるアルガンテロアを飲み込まんとするほどの速度で。
赤く紅く、一瞬にして魔王城最上階は目を覆わんばかりの真紅の輝きに包まれる。
必死い駆けたアルガンテロアが不安定な道にった瞬間に魔界への道は塞がり、這い回る紅はいくつも開けられたというから魔王城全を部から焼き盡くし、一本の巨大な火柱と化し戦場を驚くほどの熱量で覆い盡くしたのだった。
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