エチゴ製薬の実験施設で発が起こった。表面的には事故として処理されたこの事件がエチゴ製薬とこの街の爭いの始まりであることはごくわずかの人間にしか知られていない。

実験施設の発にどさくさに紛れて一臺の車が走り出た。中に乗っているのは六人の赤ん坊と施設の研究員だったカラクリ夫妻、そして「試作強化人間」ゼロ。

車は街を出て港で停車する。

「この子たちは俺が育て上げる。カラクリ博士は逃げることに集中してくれ」

メイド・カラクリ氏は赤ん坊の乗っている車を見た。

「すまない。君だけに危険な役目を擔わせて」

ゼロは首を振る。

「俺に人間の心を與えてくれたのはあんたたちだ。謝してる」

そこへエチゴ製薬の刺客が現れた。ゼロは腰のガンホルスターから二丁のリボルバー拳銃を抜くと刺客達の脳天を抜く。

「急げ、ここも既に安全ではない」

夫妻は船に乗り込み、遠く離れていく。ゼロは夫妻が見えなくなるまでそこへ立ち続けた後、車を走らせた。

それから五年の月日が流れた。六人の赤ん坊の姿は既に十五歳位の年に長している。そう。この六人の子供たちは「完型強化人間」なのだ。ゼロと子供たちは山の中腹にある教會にを潛めながら暮らしていた。