《骸街SS》1話 日々
プロローグ
『ザ…ザザ…今日は、新政府誕生から丁度150年!それを記念して山村総理にインタビューを……』
「…………」
ピッ
『いつも私達を守ってくださる軍の方々に謝の言葉を……』
「…………」
ピッ
『今年は山村総理と有田元帥の対話を記念して……』
「…………」
ピッ
『……………………』
一旦ラジオをつけた俺だが、全ての番組に面白味というものが存在しないので電源を消す。
なんだよ、皆政府を褒め稱えて。こっちの苦労はほども知らずに……。
「まあ、そんな事より、今日は早く寢なきゃな。」
そう呟き、俺は喫いかけの煙草の火を消してテーブルに置く。そして、崩れる様にソファーに座り、背もたれに寄り掛かってスーツのまま寢る準備をする。
「また明日も、日常たいくつが始まる。」
そう呟くと俺は、いつしか深い眠りについた。
骸街SS
ジリリリリリリリ!
部屋中に目覚まし時計の音が響き、俺は目を覚ます。家賃も電気代も水道代もガス代も無事に払えたからか、昨日は安心してぐっすりと眠ってしまったらしい。
まだ半開きの右目をりながら俺は布団を出、ゆっくりと立ち上がる。そして、眠りから覚めきっていないに鞭打って布団を畳み、部屋の端へと運ぶ。
まだ眠い右目に加え、今度は左目もりながら洗面所へと歩く。
鏡に映る自分の顔が見えると、し重たい気分になる。白い髪を社會で生きていく為に黒く染めている、それがし息苦しい。
蛇口を捻ると冷たい水が勢い良く放出される。その景が俺にはとても心地良い。今日みたいな暑い日だと、尚更心地良い。
顔を洗い、うがいをして歯を磨く。冷たい水が顔に染み渡り、気持ち良い。
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すぐ側の臺所へと足早に歩き、冷蔵庫から牛を取り出してカップに注ぐ。
牛を冷蔵庫へと戻すと、流し臺に置いてあるレジ袋から昨日コンビニで買ったサンドイッチ(ハムとレタス)とわかめサラダ(ミニ)を取り出す。
「いただきまーす。」
これが俺の毎日の朝食。いつもこのメニューという訳ではないけど、総額は大同じだ。株の儲けによって食費が上下する事もあるけど、そんな事はそうそう無い。
「ごちそうさまでした。」
食事を終え、制服に著替える。そういや俺、もう中3なのか。時が経つのは早いものだ。
ピンポーン
丁度俺が著替え終えた時、玄関の呼び鈴音が鳴る。ああ……あいつ・・・は今日も早いな。
別にこの國では珍しい事ではないが、期から親がほぼ居ないに等しい俺にとっては、自宅の呼び鈴を押す存在など數える程しか居ない。
ピンポーン
しつこいな。これで隣の住民に苦をつけられるのは俺なんが。まあ、そんな事でいちいち怒っていても仕方が無い。
俺は鞄を背負うと駆け足で玄関へと向かう。そして靴を履き、鍵とスマホを持ってから玄関扉を開く。
「おはよー、孤白。」
「ああ、おはよう。」
そして扉の先に居た友人に挨拶を返す。
それが俺の日常ひび。
2005年2月、日本は正不明の外國のものと思しき軍隊から北海道や関東南西などの政治的要所に撃をけ、その事件で國會や閣は大きく混し、國家そのものが大きく衰退してしまった。
しかし、日本という國はそこで終わらなかった。
英雄が現れたのだ。北海道にて住む町を燃やされ、ただ1人生き殘ったとされる英雄・有田奈月ありたなつき。彼は自の持つ財力、人脈を駆使し、2ヶ月と待たないに私兵団『Struggleストラグル』を作り上げた。私兵達の個々の能力は自衛隊にも匹敵するもので、彼は滅びかけていた政府に自衛隊の無力さを北海道の撃事件の実験をえて提示し、自の私兵達を見事に"自衛隊に代わる新たな防衛機関"として國際化させたのだった。
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その後、有田の熱心なアプローチによって、國家は國民を守る為に「三権分立を破壊する」事を決めたのだった。衰退した日本國を立て直すには、政治機関が1つに纏まって大きくなり、力を一點に集中させるしか無かったのだ。
そうして日本國の政治の実態は大きく変わった。政治の実権を握った閣総理大臣の役職名からは「閣」という過去の政治機関の名が取り除かれ、『総理大臣』となった。政府は、日本國憲法施行からこれまでの日本國やその政府と、今のそれらを比較し、それぞれ『舊日本國・舊政府』『新日本國・新政府』と名付け、日本國憲法と取って代わる新たな憲法である『新日本國憲法』を6月に施行した。
また、國家はStruggleを正式な國家防衛機関とするにあたって『新日本國軍』と改名した。新日本國軍の元帥、つまり最高司令には元からの指導者である有田が任命され、新日本國は、総理率いる新政府と有田率いる新日本國軍によって大きく発展したのだった。
しかし、その半分獨裁じみた政治に批判する聲もあった。
新日本國の存在が正式に國民へと発表された5月半ばぐらいから日本各地でデモ隊が現れ、6月下旬にはテロ事件さえ起こった。
その様な政治犯の集団の中で特に勢力が強く、統制の取れているものはいつしかこう呼ばれる様になっていた。『反新政府組織アンチトゥーニュー』と。
東南下層南街4區 渥附中等學校
『えー……では、この數式を展開すると…………』
4時間目の授業中、あまり響かない教師の聲が俺の耳にる。
俺の名前は隅川孤白すみかわこはく。髪が白い事以外は至って普通の中學生だ。
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んで、何だっけ?數式を展開?あの程度の數式の展開なら、わざわざ授業で確認する必要など無い気がするんだが。
『隅川、目が泳いでいるぞ。』
「ああ、すみません。4時間目なので疲弊してるんです。」
教師は俺が授業をける気がないと考えて(正解)か、俺を注意する。俺は授業をけていないのではなく、聞く必要の無い話を聞いていないだけなのだが。
『では、この問①を……中田、答えろ。』
「はいっ!……えっと…………」
で、今教師に指されたのは中田瞳なかたひとみ、俺がこのクラスで唯一ある程度の流を持つ人間だ。
「うぅ…………」
問題の答えに悩んでいるのか、瞳が唸っている。問①は選択肢が4つある選択問題。問題を全く読まないで番號だけを適當に選んで回答しても25%の確率で正解できるアレだ。
他にも消去法や、試験中は前後ろの選択問題の正解の番號からも推測できるという、問題形式としては極めて簡単な選択問題なのだが、瞳は全然答えが浮かばない様だ。
『えー……では、次の人に……』
「待ってください!もうしで解けますので!」
教師が他の人にパスしようとして発した言葉を瞳自が遮る。出た。瞳のスキル「馬鹿だけど負けず嫌い」発。さて、瞳はどう答えるのやら。
「むぅ……これは①、②、③、④のどれかですね。」
もはや答えじゃ無い。
『當たり前の事を言うな。お前が今求められているのは問題への回答だ。』
教師もやはり俺と同じ事を考えたらしく、瞳にそうツッコミをれる。教室の數人の生徒がクスクスと笑っているのも見える。
「分かった!④です!」
『不正解。正解は②だ。』
今度は普通に間違えた様だ。
「えー?何でですか?」
『では、この問題の解説だ。まず、選択肢①は…………』
教師が問題の解説を始めたのだが、瞳はそれを聞かずにノートに何かを一心不に書いている。恐らく分からなかった問①を解き直しているのだろう。それが先程のスキルの正しい使い方なのだから。
それにしても、既に殘りの授業時間は約5分。瞳のせいで數學の問題1問に隨分と時間を使ってしまった様だ。
なぜあんな人間と流を持ったのかが自分でも分からない。俺の利にはならないし、容姿は良いかもしれないけど際相手じゃないから関係ないし。
『…………と、なるので正解は選択肢②に……おや、もう時間切れか。では、これより授業を終わりとする。』
教師が授業終了を宣告した瞬間、教室中の生徒が椅子を立って教室から出て行く。そんなにこの教室の空気は悪いのか、もしくはそんなにトイレに行きたかったのか。ああ、そういえば今終わった授業は4時間目。晝休み恒例の購買パン爭奪戦でも始まるのか。
すると、その瞬間俺は背後に何者かの気配をじる。
「ねえ、孤白。」
俺が振り向くと、やはり気配の主は瞳だった。
「何か用か?」
俺が用件を聞くと、瞳は後手に持っていた弁當箱をこちらに見せてこう言う。
「一緒にお弁當食べない?」
「無理。今日は學食だから。」
俺は何も悪い事はしていない。
「もー……何で私が折角勇気出してった日に限って學食なの!?」
「俺に言うなよ。それに、結果的には一緒に食べれてるから別に良いだろ。」
瞳がぶーぶー文句を零しながら持參の弁當を食べている景を眺めながら、俺は學校の食堂でベーコンエッグ定食を食べている。
なぜか瞳は俺と一緒に食事をしたかったらしく、俺が一緒に學食に來るよう提案した。
それで俺と瞳が正面で向かい合う形で晝食を取っているのだ。自分から俺の提案をけれた瞳がなぜか不機嫌なのだが……。
俺が定食を食べ終えた頃に、カポッと弁當箱の蓋を外す音がする。瞳も大きい弁當箱の中を食べ終え、摂取対象を小さい弁當箱のデザートへと移行した様だ。
俺は食べ終わって何気なく瞳の方を見る。その時、不思議と俺は食を片付けるという事が頭から抜けていたのだ。
こうしてよくよく見ると、瞳はかなりのではないかと思えてくる。背は低くやや顔な為年齢よりく見えるが……って、それは俺も同じだけどな。
すると、視線に気付いたのか、瞳が顔を上げ、こう言う。
「む?孤白何で私の顔見てるの?あ、まさか私に惚れちゃったとか!」
「黙れ。どうすればお前みたいな馬鹿になるのか、標本観察してただけだ。」
「ひどい〜。」
こんなじで俺は晝休みを瞳との雑談で潰したのだった。
周囲から何やら刺さるような視線をじたが、恐らく気のせいだろう。
キーンコーンカーンコーン
6時間目の終了を告げるチャイムが鳴る。4時間目に鳴らなかったのは、チャイムを鳴らす機械が壊れているからだ。
「ねえ、孤白。」
「今度は何だ。」
瞳は暇さえあれば俺に話しかける癖がついているらしい。他にも友人が居るだろうに。…………俺と違って。
そんな疑問を口に出す事も無く俺が瞳の方を向くと、突然瞳が俺の耳に口を近付けてこう言う。
「……放課後4時前に、育館裏まで來てくれない?(小聲)」
ほう。この學校の育館裏といえば、學校でかなり人目につかない場所。仲間と一緒にカツアゲでもするのか。今まで俺に近付いて來たのはカツアゲの相手探しかなんかだったのか。って事はこの馬鹿な格も地じゃない可能もあるが、今はどうでも良い。ここは冗談で反応を見よう。
「……何だ。告白でもするのか?(小聲)」
「ふぇっ!?」
図星反応だと!?こいつ……何て凄い役者なんだ!疑う俺の裏をかこうとするなら、俺は更に裏をかくだけだ。馬鹿め、選ぶ相手を間違えたな。
「……って事で!」
そう言って瞳は早足に教室から出て行った。見事に自然な流れで掃除當番を押し付けられた人が可そうだ。
まあ、一応行くか。自分で言うのも何だが、俺は見た目より戦闘能力は高い筈だ。最低限ヤンキー數人に囲まれてもギリギリ戦える程度の戦闘技と力はに付けている。
俺は親が居ないも同然なのだが孤児院にもれてもらえない狀況にあったので、期から社會で生きる為の能力はある程度に付けているのだ。
「……でも、本當に告白だったらどうしたら…………」
可能は低いが、あれ・・が本當に図星であると言われても否定する要素が無い。殘念ながら瞳の思考回路は俺とは違うものの様で、俺は瞳の考える事を予想すると、どうしても実際より俺の考え方に寄ってしまう。
なので、行ってみないと分からない。俺も掃除をサボる事にしよう。
「ふう……ここまで來るの大変だったな。」
この學校でいう育館裏とは、育館とコンクリートブロックに挾まれた橫幅65cm強程度の隙間で、育館が校舎からやけに離れた場所に建てられているせいで、歩いて行くと割と疲れる。
「……これで後は瞳を待つだけ…………あ、もう來た。」
萬が一カツアゲだった時の為に俺は予定時間の約15分前にここに來た。敵に待ち時間を與えると厄介な陣形を組まれる可能があるからだ。
その為、そんな俺の考えに対抗して瞳が早く來る事自はおかしく無い。だが、瞳は誰も連れずに1人でここに來た様だ。
気を付けろ、俺。背後から來るかもしれない。いや、上から?いやいや、それは無理……
「ねえ、孤白。」
「ッ!?」
「ご、ごめん。驚かせて。」
突然の瞳の聲に俺は驚いてしまった。もうこんなに近くに來てるとは……。
「ま、まあ、それは置いといて……。」
瞳がいつに無くぎこちない喋り方で俺を驚かせた事実をどこかへと置く。顔にも若干の張と焦りが見られる。もしかしてこれは……
「孤白……1年生の頃から、君に伝えたい事があります……。」
そう言って瞳は顔を赤らめてこちらを見る。
まさか本當に告白なのか!?いやいや、それは無い。……じゃあ何で瞳はこんな表を…………でもいきなり告白されても、俺も困る……。
そんな事を頭では考えている筈の俺も、ばくばくと心拍數が上がっているのが分かる。何だろうこの。今までの人生を振り返ってもやはり初めてじるこの気持ち。全く人間の心理はとても難しいもので……
「君のことが好きです!」
分かったから思考を遮らないで!
どんな狀況においても瞳は空気を読めないらしい。
「え……?あ、はい……。」
対する俺も流石に(?)瞳の告白が本當の事になるとは思っていなかったので、し反応に困る。しかし、そんな事を気にする瞳ではない。
「……あと……もう一つ伝えたい事が……。」
「な、何だ?」
揺しつつも俺が聞くと、し間を置いてから瞳はこう言う。
「ごめんね。」
その瞬間、俺は瞳に聞き返す間も無く意識を失った。
「……これで良かったの?」
「それで良い。良くやったよ。」
「うん……。」
「じゃあ、瞳。最後の仕事へと向かおうか。」
しかし、彼は何か思い殘しがあるのか、歩く足取りは重々しいものだった。
「う……ここは……?」
いつの間にか意識を失った俺が目を覚ますと、俺はまあまあ広い、壁や天井、床や扉すら真っ白の部屋の中で、部屋に優位つ置かれている""であるベッドに寢かされていた。
「う……頭が痛い……。」
俺は頭痛を堪えながらベッドを降りる。學校の制服はがされたのか、俺の今の服裝は青緑のTシャツとズボンらしきもので、質はテレビドラマによく出てくる手著のイメージに似た様なものだった。
く冷たい床を踏む俺の足。どうやら靴や靴下さえもがされた様だ。
「しかしここは……。」
しかも、俺の今居る謎の部屋が、俺にはどうにも研究所の1室に思えてならない。
そんな事を考えていると、部屋にある唯一の扉がし近未來的な機械音を立てて開く。
そして、扉の奧からは何者かが部屋に侵して來る。その人の容姿は前髪で左目の隠れたやや細の青年だった。
すると青年は、扉を閉め、そして俺の方を見るなりこう言う。
「やあ、初めまして。隅川孤白君。」
この時の俺は知らなかった。この日を境に俺の人生そのものに大きな変化が現れる事を。
【2話へ続く】
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