《骸街SS》3話 夜明

気付いたら俺はどこかの路地裏に立っていた。と服をだらけにし、一丁の拳銃を握りしめていた。

「は…はは……。」

背後からは數人の足音が迫る。俺は振り向き、拳銃を構える。

骸街SS

パァンッ!!!

『は?』

その瞬間、兵士の1人が呆気に取られる。

「はぁ……はぁ……殺す殺すころすコロス…………。」

俺は中の思いを全て口に出し、手に持つ拳銃をリロードする。

『……対象は錯狀態だ、子供とはいえ十分に注意しろ。』

『ああ、解っている。防弾チョッキを著ていなければ俺は死んでいたかもしれないしな。』

そんなことを口々に言って兵士達は手慣れたきで拳銃を構える。何なんだよ……こっちが先に撃ったとはいえ、政府の人間が國民を容赦無く殺すか……?

『撃て。』

兵士の1人が仲間に向けて聲を掛ける。

今更俺が兵士より早く撃った所で殘った他の兵士が俺を撃つだけだ。その狀況に俺が死を覚悟する、その瞬間だった。

ガギィゴゴゴゴゴゴォンッッッ!!!

突然、俺の目の前にそんな音を立て、左手に大型スコップを持った1人の男が現れる。いや、違う。男が現れ、音を立てたのだ。速すぎて一瞬順番がわからなかった。

『な……貴様!まだ生きて……』

兵士が何か言おうとした瞬間、男が駆け出し、スコップを前方に大きく薙ぐ。すると、鈍い打撃音と共に數人の兵士が倒れる。

『チッ……貴様ァッ!』

1人の兵士の聲で、殘った兵士3人全員が拳銃を構える。しかし、男は手に持っていたスコップを突然ブーメランの様に回転させる形で兵士達に向けて投げる。

ゴッ

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またしても鈍い音と共に兵士が2人倒れる。

『貴様ァァァッッッ!!!』

怒り狂った最後の兵士は男の方へと拳銃を向け、発砲する。しかし、男は素早く屈んでそれを避け、近くの兵士の死を縦にしながら先程投げたスコップを取ろうと屈んだまま走り出す。

俺はへなへなと地にへたり込み、その様子を傍観していた。

パァンッ! パァンッ!

2度の発砲音と共に盾用の死骸からが流れる。

次の瞬間、兵士が近くに落ちていたスコップを男より先に拾い上げる。そして、両手でしっかりと握ったスコップを屈んでいる男に向けて大きく振り被る。

パァンッ!

しかし、男は盾用の死骸の腰辺りから拳銃を抜き取り、兵士に銃口を向けて撃った。

『がはッ!?』

首辺りに銃弾をけた兵士はを吐き、地に崩れた。

男は倒れた兵士が手に握っていたスコップを拾い、橫へとシュッと音を立てて振り、付いたを払う。

その次の瞬間、男が俺の方へと振り向き、こう言う。

『お前、この國を変えないか?』

「……は?」

意味の分からない男の臺詞に俺は困する。男の方もそれを理解した様で、今度は言葉を変えて言う。

『反新政府組織アンチトゥーニュー……知ってるよな。』

そう言うと男は被っていた上著のフードをとり、顔を見せる。するとそこには、鋭く、そして強い意志をじる三白眼の眼を持った中年の顔があった。

『俺等……『反政府組織S』に、お前はらないか?』

「…………」

男の言葉とその眼ので俺は確信した。この男は、本當の反政府組織の構員で、本心から俺を組織自分達へと勧していると。

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「……はい。」

その時俺は何を思ったのか、何も聞き返さずに組織への加を希した。

すると、俺の回答に納得がいったのか、明るい表で口角を吊り上げ、こう言う。

『俺は大原拓男おおはらたくお、『反政府組織S』の一員だ。』

當然俺も名前を名乗り返す。

「俺は……隅川孤白すみかわこはくです……。」

後になって思うと、この日は俺にとって人生最大の出來事であったかもしれない。

カツ カツ カツ カツ

狹い路地裏で、そこに居るたった2人の人間が足音を立てて奧へと進んで行く。

あの出來事・・・・・から俺の覚で1時間後、俺は拓男の言うがままの方向へと歩き、この場所へと辿り著いた。

「…………」

路地裏をある程度進んだ所で拓男が突然立ち止まる。俺も當然それに合わせて立ち止まる。

すると、拓男は自の真下にあるマンホールの蓋を開け、その中にってゆく。俺もそれに続く。

「…………」

拓男が俺にマンホールの蓋を閉めるようジェスチャーしてきたので、その通りにする。

ガコォンッ……

マンホールの蓋が閉められ、そんな音が真っ暗な空間に響き渡る。

カチッ

拓男が懐中電燈のスイッチをれ、また歩き出す。俺は懐中電燈のを頼りについて行く。

それからしばらく歩くと、拓男がある地點のマンホールを懐中電燈ので指し、そしてそれに掛かっている梯子を登り始める。

「……著いたぞ、東南中層南街7區だ。」

拓男がそう言ってマンホールの上から俺に手を差しべる。

マンホールから出ると、そこはどこか知らない街の路地裏だった。拓男は中層街と言っていたが、確かに俺の住んでいた下層街より裕福そうな街並みだ。

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路地裏を出るとそこにはかなりの人混みが待っていた。人混みを構する人達の服裝も何やら俺達よりしっかりとしている。

下層街と中層街の境界には簡単な関所があるのみで、上層街と比べたらそこまで厳しく仕切られてはいないが、住民の金銭格差は俺が想像していたものより大きかった。

「…………」

拓男は何も言わずに人混みの中を歩いて行く拓男を見失わないよう、全力で拓男へと付いて行く。ここで逸れたらこの先は絶的だ。

またしばらくしてなんとか人混みを抜けた俺は隨分と遠くまで行ってしまった拓男を見失わないよう、歩くペースを上げる。

そういえば、なぜあの時俺は、大原拓男を信じてここまで付いて來たのだろうか。俺がこの男を信用出來る要素は見當たらない。なぜ……

いや、違う。信用というのは何も理屈のみに沿って描かれるものでは無い。拠もその考えに対する自も無いが、俺は直という要素のみから・・・・・・・・・・・この男大原拓男を信用していた、そして信用しているのだ。

そんな事を考えていた俺を他所に拓男は歩き続けた末、ある地點で立ち止まる。

「……來い。」

拓男が俺に手招きし、一言そう言うと近くのやや大きなビルの正面玄関からその中へとって行く。

「……俺だ。後ろの白髪は新參だ、一緒に通せ。」

そんな聲がビルの正面玄関の中から聞こえて來る。

「…………」

その數秒後に俺は正面玄関から顔を出した拓男にジェスチャーで「早く來い」と伝えられたため、急いでビルの方へと向かう。

「……急ぐぞ。」

そう言って拓男はビルのホールへとるなり、正面玄関から見て右側の階段の方へと向かって走って行く。

俺もそれを追う。隨分と急いでいる様だが、ここまでの道中で走らなかったのは周りの目を気にしていたのだろう。反政府組織って言っていたし、布に包まれた何か(スコップ)を背に擔いでいる姿は結構目立つし。

まあ、俺の白い髪も目立つんだけど。

「著いたぞ。」

俺がやっとの思いで拓男に追い付くと、拓男は丁度今居る7階で階段から左側の廊下へと出、會議室の様な立派な扉がある部屋でそう俺に言った。

「……ここは……?」

俺がそう聞くと、拓男はこう返す。

「多目的ルームその5だよ。」

用途を決めていないのか。

「さあさあ、れ。」

「うぉっ!?」

俺が中でツッコミをれた一瞬の隙に拓男は多目的ルームその5の扉をバンと音が出る程勢い良く開け、いつの間にか俺の背後に回していた左腕で俺の背を押す。

『……拓男だ!拓男が帰って來たぞ!』

『そんな事見りゃ分かるわ!』

『……あんな……子供ウチに居たか?』

付で拓男と居たじゃん。』

思ったより広い多目的ルームの中には大10人位の人間がそれぞれ好き勝手に寢転がったり座ったりしており、部屋の造りそのものはし広い會議室の様だったが、部屋の雰囲気は會議室とは程遠いだった。

そんな多目的ルームの中の人達へと拓男が向き直り、こう告げる。

「皆聞け。この年は偵察中に見つけた政府被害者であり、今この瞬間にSの仮構員となった隅川孤白だ。後、今日の指定活には特に変わった事は無い。以上。」

そう言うと拓男は多目的ルームへとずかずかって行く。そして、ドアを勢い良く閉める。

……何だ、何なんだ、この集団は。反政府組織の癖に雑過ぎでは無いか?いや、どうせこの場に居る人數にだけ予定を伝えてもしょうがないし、適當でも良いのかもしれない……って、予定を伝える、だと?

「まさか……拓男の立場って……。」

1つの可能を確かめるために俺は拓男に質問する。すると、拓男は大方予想通りの返答をする。

「何って……俺はこのSの首領だが。」

やっぱり。首領か何かでも無ければ勝手に俺を仮構員になんて出來ないからな……。余り組織のリーダー的なじがしないのは別として。

すると、拓男が俺に何かを思い出した様子でこう言う。

「あ、言い忘れてた。絶対に窓に面している部屋や廊下には出るんじゃ無いぞ。」

「なぜ?」

俺は質問で返す。理由が分からなければ拓男が何に気を付けているのかも分からない。

「……カモフラージュだ。一応外側から見た姿は普通のビジネスビルになる様努力している。アジト本部が軍に見つかっちゃあ一環の終わりだからな。」

「なるほど。」

結構ちゃんと考えているみたいだ。

しかし、この會話の流れを見るだけでも、『反政府組織S』の異様さが分かる。

この多目的ルームは先程から多くの他の無い雑談と笑い聲によって明るい雰囲気を構している。なぜ、ここSに居る人間達はこんなにも明るく居られるのか?彼等には俺の様に政府に人生を奪われた者も多い筈だ。そんな奴は街にだってごろごろ居るのだろう。俺みたく逃げ出す訳でも無く、心を閉ざして生きている奴が。

この反政府組織はそれの対極に相當する存在なのだろう。自を支配する者達と戦う為に表社會から逃げ、自の考えを決して他人に任せない。そんな人間の集まりなのだろう。

しかし、この國の人間の殆どは生まれ育った環境故に、自より強大な力へと反抗するという行為に強い抵抗を覚える筈だ。この組織の人間だとしても、殆どが最初はそうだろう。

多くの人間にとってその抵抗常識を上回る強力なは、基本的に1つしか存在し無い。そう、絶と憤怒だ。

ここに居る多くの人間がそのを持っているのだろう。勿論俺もそうだ。しかし、彼等はなぜあんなにも楽しそうに笑っていられるのか。それとも、生きる意味すら失った俺には分からないのか?

そんな事を考えていると、突然床から立ち上がったSの構員と思しき男が會話に飽きたのか俺へと顔を向けてこう語り掛ける。

『おう、新人。凄いじゃ無いか、拓男に選ばれるなんて。自己紹介か何かしてくれよ。』

「…………は?」

突拍子も無い自己紹介要求に當然俺は困する。いや、突拍子が全く無い訳では無いのだが。

「いや……俺は……その……」

俺は言葉に詰まる。果たして俺にあの・・空間に混ざる権利があるのだろうか。生きる意味ひとみを失った、人生を失った俺の中には果たして何かが殘っているのか。

いや、失ったんじゃ無い、捨てたんだ・・・・・。

俺は生きる意味と言いながら彼を見殺しにした。本當に俺がそれに執著していたのならばあの時一緒に死ぬ選択をしていただろう。

なぜ、俺は逃げたのか。

いや、俺にとっては人生そのものこそがどうでも良いだったのかも知れない。

すると、俺がどんな事を考えていたのか察したのか否か、1人の構員がこう語りかける。

『……お前に何があったのかは知らないが、ただ1つ言える事がある。』

「…………」

俺は黙っている。何が言える事だ、今の俺にとっては全てがどうでも良い。

『事実を悲劇と解釈するかどうかはお前の自由だ。お前が悲劇と思わなければ決してそれは悲劇では無い。』

「…………え?」

しかし、構員が続けた言葉は、俺の脳にはっきりと刻まれた。

『だから、その「悲劇」を「悲劇」として完させるにしても、そうで無いにしても、お前が人生を全うする必要がある。やるんだったら、最後までやれ。』

員の言葉の一字一句が俺の中へと浸してゆく。所詮他人の価値観、俺には関係無い。俺がいくらそう思っても、その"価値観"は"俺"を上書きする程の影響を俺自に與えた。

「…………なぜ……何で……何でお前等はそこまで笑っていられる!?お前等が奴等に奪われたはそんなにも小さいだったのか!?」

俺はいつしかそうんでいた。

八つ當たりだって事は分かる。これこそ俺の自己価値観だって事は分かる。

しかし、そんな俺の戯言に対してすら、言葉は返って來た。

『確かに俺等は々奪われた。奪われたものの重さは俺等にとって決して小さいものでは無かった。しかし、どれだけ嘆こうと奪われたものは戻らない、全く嘆かなくてもバチは當たらない。だから俺等は笑っていられる。』

その瞬間、俺は怒りを覚えた。自の愚かさに・・・・・・・怒りを覚えた。

「…………そうか……そうなのか……。」

俺は一旦神を落ち著かせる為、深いため息を吐く。そして、吐き出す様に言葉を発する。

「俺は隅川孤白、2日前までは下層街の渥附中學校という所で學生をしていた。好は沢庵とコーヒー。短い付き合いになるかもしれないが、よろしく頼む。」

次の瞬間、突然場が靜まったかと思えば、急にその中から笑い聲と共にこんな聲が聞こえて來る。

『はははははっ!その年で沢庵とは、中々変わっているな。』

「む、何か悪いか。」

俺がむっとしてそう返すと、今度は場の全が笑いに包まれる。沢庵が好きだなんて珍しくも無い筈だ、何が可笑しいのだろうか。

『いや、何が悪いとかでは無い。単純にお前が面白いだけだよ。』

俺の疑問を打ち払う様にある構員がそういった。……やっぱり苦手だ、こいつら。

「んで、あいつらとは結構打ち解けたのか?」

「いや……そもそも打ち解けたくは……。」

その日の夕方、俺は談話室にて拓男とそんな會話をしていた。

あの事・・・からまだ半日しか経っていないのにも関わらず、段々と俺はその事げんじつを全て夢とも思えて來てしまう。しかし、あったからこそ俺はここに居るし、ここにも瞳は居ない。それは紛れもない事実だ。

「……拓男は、なぜ俺を助けた、なぜこの組織に勧したんだ?ずっと理由を知りたかった。答えてくれ。」

俺は気を紛らわす為に會話を続ける。しかし、それで気が紛らわせる程俺の神は屈強では無かった。

「お前の目が良かったからだ。丸くなってもいない、研ぎ澄まされてもいない新品同然なナイフの様な目の。俺はそんな目をするお前を見て勧したんだ。」

「…………」

目の?新品のナイフ?何を言っているんだこの男は……。

段々と俺はこの"夢"から覚めたくなって來た。死にたい。彼の後を追いたい。そんな気持ちが溢れんばかりに湧いてくる。

「……加テストだ。明日けてもらう。」

すると、突然拓男はそう言いながら俺へ何かがった小袋を差し出す。

「…………は?」

考え事をしていた最中であった事も相まって、俺は突然のそのテスト宣告に頭が追い付かない。

「これを使ってテストに打ち勝て、それがお前の加條件だ。」

しかし、拓男は話の理解が追い付いていない俺を他所に「テスト」の容を告げた。

しかし、その「テスト」が何であろうと今の俺には必要が無い。

「……俺はけない、ここで死ぬから。」

瞳の後を追う。それが1番楽で完璧な解決策だ。なぜ今まで俺はそれを拒んでいたのだろうか、今になっては不思議に思えて來る。

しかし、そんな俺を諭す様に、拓男は一言こう言う。

「……お前が死んでも誰にも會えないぞ。」

そして、拓男は部屋から出て行った。

その後、俺はただ小袋を見つめていた。

【4話へ続く】

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