《No title》19.VS獣

200mほど走った所で匂いの出処が見えてきた。

5人の騎士と3m程の黒いクマのような獣が戦っている。

あ、1人やられて4人になった。

「カイは水と薬草の調達!ニビはそのまま付いてこい!俺はあの獣を倒す!」

「「わかった!!」」

カイが森の中へ姿を消したのを確認し、俺はニビを置いて獣の方へと走る。

振り上げられた右腕が、今にも騎士を殺しそうだ。

「させるか!」

鉤爪が騎士に到達するより一瞬早く、俺の蹴りが獣に屆いた。

その反でバランスを崩しかけたが、すぐに勢を整えて標的を俺に変えてきた。

やるなクマさん。

「オォォォォォォォォォ!!」

無駄にでかい咆哮と拳が俺に迫る。

がでるほど遅いその反撃を律儀に避け、近くに倒れていた騎士の剣を拝借する。

「悪いけどちょっと借りるぞ!」

背後から迫っていた拳を再び避けて、今度は俺が反撃に出る。

「おらぁ!」

懐にり込み足を斬った。

「グォォォォォォォォォ!!!」

至近距離でこれは煩いな...。

上がる飛沫を避けながら、腹部に剣を突き出す。

痛みで歪んだその顔を一瞥して、手の屆く範囲まで近付いてきていた獣の首を一振りで斷ち切った。

ズドォォォォォン!!

「よしっ、こんなもんかな」

それにしても流石3mのデカブツ。

倒れた時の音も起きる砂埃も半端じゃないな。

「なんか相手が可哀想になってくる...」

「おぉニビ」

あ、そういえば騎士がいたんだった。

「オイ!あんた大丈夫か!?」

生き殘っていた4人のうち、3人は気絶したのか倒れてしまっていた。

唯一立っていた騎士に話しかける。

「......!」

この鎧の紋章...。

ウルクラグナの騎士か?

それを圧倒する獣ってどんなだよ...。

そしてまたその獣を倒した俺はどうなるんだよ...。

「あ」

最後の一人も気を失って倒れてしまった。

立っているのもやっとの狀態だったから仕方ないとはいえ、し話がしたかったな...。

「カイが帰ってくるまで俺は応急手當をする。お前は倒した獣の調理を頼む。コイツらが目を覚ましたら食わすから」

「おう」

話を聞くよりもコイツらの安全確保の方が先だろう。

「よし...」

深呼吸の後、俺は10人の重軽傷者の応急手當を開始した。

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