《No title》25.フォルセティア
「すまん、遅れた」
待たせた事への謝罪を済ませ、彼の隣に腰掛ける。
の最奧部は案外広くて涼しかった。
「あまり長話するつもりはないから手短に済ませよう。聞きたい事は大きく2つ。報源とニビに教えた理由だ」
俺の問いかけに彼は素直に答えてくれた。
偽の報を言う素振りが見えればニビと同じ要領で真実を吐かせようと思ったが、どうやら杞憂だったらしい。
「報源はウルクラグナの現王、フォルセティア様です。ニビくんに教えたのは私の獨斷です」
「じゃあなんで教えたの?」
「ニビくんに生きてしかったからです。才能は強く願わなければ発現すらしないとされています。発現している以上、彼は料理の才能を強くんだはずなんです。それを思い出してほしくて、そこから生きる活力に繋がればと思いました」
まぁニビのあの様子を見れば口外する恐れもないだろうしな。
俺が一人で思考を巡らせていると、「そしてこれはお願いなのですが...」とし言い難そうにルミスが言った。
「察するにフォルセティア様は私に良からぬ事をしたのかもしれません。しかしフォルセティア様は私利私で悪事を働くようなお方では決してないんです。どうか信じて下さい。お願いします」
そう言って彼は深々と頭を下げた。
強さは俺の方が上と言えど、年齢で言えば俺のが下なのは確かだ。しかも他人のために躊躇いなく頭を下げた。
これは驚いたな...。
てっきり「私が言ったことはに・・・」とかだと思っていたが。
フォルセティアという奴は隨分といい部下を持ったらしい。
俺はし微笑み、騎士にしては些か小さいその肩を軽く叩いた。
「報提供ありがとう。王の事は心配すんな。あんたの上司なんだ。きっと良い人なんだろ?」
そう言うと彼はバッと顔を上げ、嬉しさと驚きがり混じったような目を俺に向けた。
「は、はい!有難うございます...!」
目の端には涙さえ浮かべて笑っている。
そんなに不安だったんだろうか?
ここまで慕われる王というのも珍しいもんだな...。
才能の件とは無関係にフォルセティアという人に興味が出てきた。
「じゃあ話も終わったし戻ろうか。カイが待ってる」
「は、はい!」
若干腫れた目をゴシゴシとるルミスを待って、俺達は出口へ向かって歩き出した。
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