《王は自由の象徴なり》05.大翼竜

 「ねえサリア、今どの辺まで來てるの?」

 「今は25階層ですね。そろそろ帰りますか?」

 うーん、どうしようかしら?もう大分魔法石も集まったし言われた通りそろそろ帰ろうかしら。

 「あそこのボス、強かったな……。全く歯が立たなかった…」

 「ああ…また鍛え直して來よう」

 すれ違った冒険者がその様なことを言っていた。その冒険者達は裝備がすす汚れ、欠損も多く見られた。

 ボス……ねぇ……。

 「ねえ…サリア」

 「何でしょうか、ユリナ様」

 「ボス、倒しに行きましょうよ」

 折角25階層まで降りたのに全然強くなくて退屈だったし、ボスが強いなら戦ってみたいわ!

 「…まあ、ユリナ様ならそうおっしゃるとは思っていましたが…。まあいいでしょう。そのボスとやらを倒したら今日の探索は終了にしますよ」

 「分かってるわ。危なくなったらすぐに帰るし倒したら真っ直ぐに街に帰る。約束するわ」

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 私は約束は守るなのよ。

 「分かりました、約束です。では行きますか」

私達が冒険者達が來たと思われる方角へ進んでいると大きな扉があった。

 「いかにもボス部屋ってじね」

 「まあここですね、ボスがいるのは。早く行きましょうか」

 大きな扉を開け中にると燭臺に火が燈った。すると、ボスの姿が見えた。

 「あれは…」

 「大翼竜グラントドラゴンですね。竜種の中でも特に大きな部類のことですね」

 大翼竜かぁ。どのぐらいの強さなのかしら?

 『また人間か。お主らも好きよのぅ』

 「うわっ!ドラゴンが喋った!」

 「知あるドラゴン…しかも言葉を話せるとなると中々の大ですね」

『今回はが二人か。よく二人だけでここまで來れたのぅ』

「私達、強いから」

 『よくそんな自信満々にを言えるな…』

 え、だって強いもん。事実しか述べてないわよ。

 『まあよい。お主らは戦いに來たのだろう?なら早く始めるとしよう。お主らから攻撃してきてよいぞ』

 「あら、そっちも中々の自信ね。その自信、へし折ってやるわよ」

 ドラゴンが挑発して來たので乗ってやることにした。あの自信満々な顔、絶対に參ったって言わせてやるわ。

 「行くわよっ!」

 とりあえず一発目の攻撃はけてくれるらしいから剣で叩き込む。

 「ッ!流石にいわね…」

 「確かにあの鱗は厄介ですね」

 『どうした人間。その程度か?來ないのならこちらから行くぞ』

 今度は大翼竜が翼をかして暴風を起こした。暴風で私達が足を止めさせてその間に大翼竜が突進してくる。が大きい分きはあまり速くない。だがが大きいということは威力も高いということだ。

 「よっと!」

 「ふッ────!」

 私とサリアは相手が起こした暴風にわざと巻き込まれ突進を避ける。サリアはその際自前のナイフを投げつけ大翼竜の背中に突き刺していた。

 『ほう、わざと巻き込まれ直撃を避けるとは。中々やるではないか』

 大翼竜はクツクツと愉しそうに笑っていた。

 『だがこんなナイフ如きではダメージなど通らぬぞ?』

 「小さい事からコツコツと、ですよ。せっかちさんは嫌われてしまいますよ?」

 サリアと大翼竜がやり取りをしている間に私は魔法を完させていた。詠唱たっぷりしたから完全版だ。

 「《アネモスインフィジャール》」

 風の発。風弾、とでも呼べるようなものを飛ばし発を引き起こす。

 『ぬぅっ!!………中々やるではないか…。これほどの魔法を撃つものは今まで見たことないぞ』

 「どーも」

 「嘆きの雨よ我が聲を聞け。全てを我に捧げよ。《アイルペイン》」

 今度はサリアの魔法だ。水の斬撃。大翼竜のをどんどん切り刻んでいく。

 『…………よいぞ。久々に味わったぞ、痛みというやつを』

 「お褒めに預かり栄です」

 『中々楽しめた。だがそろそろ決著を著けさせてもらう。覚悟しろ』

 大翼竜が口に炎を溜めている。恐らくブレスを放つのだろう。恐らくこのブレスはこのルームを全て覆い盡くす程の規模になる。あのブレスを中斷させるには魔法で気を逸らすしかないが生半可な攻撃は大翼竜にとって蚊に刺されるようなものだ。

 『これで終わりだ!』

 大翼竜が口を開く。

 「いいえ、負けるのはあなたよ」

 「いいえ、負けるのはあなたです」

 『ぬっ!!!クハッッッッ!!!』

 次の瞬間、大翼竜はブレスを放てず、膝を折り、苦しそうにいていた。

 『お主ら……!何をした!』

 「し能力使っただけよ」

 「しナイフで刺しただけですよ」

 『な、何だと……。ナイフ……?』

 「あのナイフ、私がブレンドした災厄級の猛毒が仕込んでいたんです。流石にあなたほどのサイズとなると毒の回りも遅いですし効き目も薄いですけどね」

 「私は自分の《仕事ラボロ》の能力を使っただけよ。あなた、私が戦う姿を見て素晴らしい、とか綺麗だ華麗だ、とかしでも思ったでしょ?そこにつけ込んだの。それにサリアの毒も回ってたから抵抗力が落ちてたのもあるわ」

 『………なるほどな。私の負けだ、認めよう。さあ煮るなり焼くなり好きにしろ』

 「サリア、こいつどうする?やろうと思えば今すぐやれるけど」

 「そうですね…別に殺す必要は無いのでは?多分そんなに悪いドラゴンじゃないですしさっきの冒険者を見るに殺せてもわざと殺していないようですし」

 言われてみればそうかも。これだけの強さならあの程度の冒険者は楽に葬れるだろう。しかし冒険者達は傷を負っていたものの命まではとられていなかった。

 「ねえあなた。今まで人を殺したことってあるかしら?あとついでに名前教えて」

 『今まで數えきれない程戦ってきたが殺した事は一度も無いぞ。私は熱き戦いを求めている。その芽を摘み取っては意味が無いからな。あと私に名前は無い。この際だ。私に名前を付けてくれ』

 「へー、そうなんだー。じゃあ私が名前付けるわ。えっと、グラントール。あなたは今日からグラントールよ。そう呼ぶことにしたわ」

 『分かった。これからはグラントールと名乗る事にしよう。それとお主らの名前を聞いておらんかったのぅ』

 「私はユリナ・エクセラ・ラーフェル。今は家出してるけどラーフェル王國の第一王よ。今はユイナって名乗ってるわ。よろしくね、グラントール」

 別にドラゴンになら正を言っても構わないだろう。

 「私はサリアと言います。ユリナお嬢様お付きのメイドです。以後お見知り置きを、グラントール様」

 『うむ、よろしくのぅ二人とも』

 ドラゴンの友達が出來ました。

 

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