《チート能力を持った高校生の生き殘りをかけた長く短い七日間》もう一つの語.14

「り、凜君」「もう一度聞く、和葉!これはどういう事だ!おまえがやったのか?」

リンからは、和葉がを破壊しているように見えてしまっていた。鑑定するまでもなく、ナナから聞いていた特徴がぴったり當てはまる人だ。

「ちっちがう。」

和葉は、今すぐにでもリンに抱きつきたい衝を抑えている。目の前に居る狂おしい程におしい人は、自分に向けて殺意にも似た目線を投げつけている。そんな目線をけて何も言えなくなってしまった事で、余計に悲しくけなく思えてしまっていた。

和葉は、立ち上がって、リンの方に向き直った。和葉も鑑定を使うまでもなく、目の前に居る人が神崎凜であり、リン=フリークスだという事は解る。ニグラで見かけた時から記憶に焼き付けている。

「和葉。おまえは、なんでここに居るんだ?」

リンは、質問を変えた。和葉が正面を向いて、自分と目線をあわせた事で、冷靜さを取り戻した。”リン。いいか、魔でも獣でも人間でも、目線を合わせてきたら、冷靜に対処しろ。しっかり相手を見極めろ”ニノサからいわれた言葉を思い出していた。イスラ大森林を歩く中で散々いわれた事だ。それに、マガラ渓谷で鍛えた事で、自信がついている。逃げる位はできるだろう・・・と、そんな考えから、和葉の様子を観察する余裕が出てきた。

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青く長い髪のは、土埃で汚れ、顔も同じように土埃で汚れている。手は、っていたのだろう、片だけではなく、燃え殘りが有ったのだろう煤で黒くなっている部分もある。膝は長時間膝立ちでもしていたのか、土やで汚れている。來ている外裝も左側だけが土で汚れているのが解る。疲れきった顔と困った視線。泣きそうな目。全てが、自分がやったのではないと語っている。服や持っている武も汚れては居るが、返りを浴びている様子はない。魔法で綺麗にできるとはいっても、の汚れだけ綺麗にする意味はない。何よりも、和葉に、ポルタ村を全滅させる意味など無いことは、今のリンなら理解出來ている。

「和葉。おまえ・・・。」「ミトナル=セラミレラ・アカマースです。リン=フリークス・テルメン様ですよね。私は、貴方に伝えなければならない事があって・・・。」「解った。ミトナル。僕の事は、リンでいい。その方が話しやすい。絶対に、様なんて付けるなよ。それは約束だからな。」「はい。ありがとうございます。リン君?」「リンでいい。それに、敬語も必要ない。ミトナル。いいね」「はい。それなら、私の事は、ミルと呼んでください。」「あぁ解った、ミル。それで、なんでここに居るんだ?」

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「それは・・・。」「ふぅ・・・ミル。いい。いいたくないのなら、無理に聞かない。それよりも、ここには、立花達はもう居ないのか?」「え”?」「あぁナナから聞いてやってきた、ミルが、ナナからの依頼をけて、ポルタに向かったのは知っている。でも、それだけじゃ説明が付かない事が有るよな?」「・・・・うん。僕・・・私は・・・。」「いいよ。ミル。話しやすい言葉で話せよ。」「うん。僕は・・・」

「そうだ!ミル。一緒に來て」「え”?」「ミル。話は後でゆっくり聞きたい。まずは、僕の家に一緒についてきてしい。いや、ついてこい。」「うん。」

リンの家は、林の中にある。村からはすこし離れている。リンは、ゆっくりとした歩調で、先を歩いている。ミルは、そんなリンの背中を見ながらついて行った。會話する事もなく、リンの家が見える位置まで來た

ミルが急にリンの手を引っ張った「ミル!何を・・」「しっ誰か居る?」「え”?僕のオヤジやオフクロと弟が居るはず」「違う。魔・・・だと思う。でも、なんか違う。」

リンには一つだけ心當たりがある。ミルを制して

「ドラウ。ヒューマ。居るんだろう?」「え”?ダークエルフとリザードマン・・・違う。ドラゴニュート?」

ミルが驚くのも無理はない。ドアから、ドラウとヒューマが姿を表した。そして、リンの下までゆっくりとした歩調で歩いてきて、跪いて「リン様。」「やはりな。何を隠している。全部話せ!」「はい・・・。リン様。お連れの方は?」「あぁミトナル。俺と同じだ。気にしなくていい。」「解りました。それでは・・・。」「あぁ先に家に行こう。ニノサとサビニとユウも居るんだろうな!」「・・・・あっいえ・・・はい。」「わかった、そういう事なのだろう?」

リンは、ドラウとヒューマの表から察している。そもそも、家の中にドラウとヒューマ”しか”居ない事は、ミルから言われて分かっている。

「ドラウ。ヒューマ。知っている事を全部話してもらうぞ」「はい。」

リンは、ミルとドラウとヒューマを連れて、自分の家にった。そこは、何が有ったのかすぐに想像できてしまう狀況だった。ユウとサビニとニノサと朝食を食べて、馬鹿話をしていたリビングは誰のが解らないが、壁一面にが飛び散っている。食事をしたテーブルは破壊されている。食類は、割られて床に散らばっている。備え付けていた家も全部と言っていいほど壊されている。多分、他の部屋も同じようになっているのだろう。

(ニノサ。サビニ。ユウ。ただいま。遅くなっちゃったね。もしかしたら、僕は、また一人になってしまったの?)

リンは、意識しているのか解らないが、ミルの手を握っている。握った手からが垂れているのも気がつかない。変わり果てた部屋の様子を見ている。ミルは、そんなリンをけ止めるかのように、握られた手が壊されてもよいと思っている。足元に、リンととミルのが溜まっている。ドラウとヒューマは、後ろから聲を掛ける事もなく、リンの背中を見つめている。

「ドラウ。ニノサとサビニとユウはどこに居る?」「はい・・・。」「何度も言わせるな。どこに居るんだ!ヒューマ。答えろ!どこに居る。」

ミルと繋いでいる手ではなく、開いている手で壁を強打する。壁が悲鳴をあげる。リンの拳も砕けた木が刺さってを流す。

「ここにはおりません。儂たちが來たときには、すでに・・・」「そんな事分かっている。お前たち二人が居て、且つニノサとサビニが居てむざむざ負けるわけがない。だから、ニノサとサビニとユウは、今どこに居るんだ?」「リン・・・。」「俺は、俺は、こっちでも、父親と母親と弟を看取る事も出來ないのか?答えろ。ドラウ。ヒューマ!教えてくれよ。別れくらい言わせろよ。頼むよ。知っているのだろう。たのむよ・・・。」

リンは、そのまま床に座り込んでしまった。支えたのは、ミルだ。肩を抱いている。ミルの腕には、小さく振るえるリンが寄りかかってきている。小さな、小さな、肩が震え始める。ミルは、自分がここに居ていい人間ではない事は分かっている。でも、そんな事でリンを突き放す事が出來ない事も解っている。小さくなってしまったリンを抱きながら、ミルは、ドラウとヒューマを見つめた

ドラウが全てを観念したかのように語りだした。「リン様。儂たちが來たときには、すでにこの狀態でした。」「そうか・・・。」「ニノサは、表で息絶えておりました、サビニはユウ殿を抱きかかえて、息絶えておりました。」「ユウは?」「はい。ユウ殿はサビニに抱かれたまま、息絶えておりました。」「そうか、一緒に逝けたんだな。」「・・・・はい。」「ニノサは?」「・・・・四つん這いになった狀態で手を何かで貫かれて、を滅多刺しにされて、息絶えておりました。」「・・・そうか、それで、3人は?」「儂とヒューマで、前にニノサと會った時に話を聞いた、丘に埋葬いたしました。申し訳ありません。」「ありがとう。そこまで案してくれるか?」「はい。こちらです。」

靜かな語り口調のまま変わりが無いように思える。しかし、ミルには解ってしまった。握られた手に力がって震えているのが、そして、ミルから見える。リンのが、小刻みに震えているのが・・・。

ヒューマを先頭にリンもよく知る場所まで移した。そこは、よく家族で來ていた場所だ。ポルタ村からすこし離れた場所を流れている川の畔で、すこし丘になっている。そこに、石が積まれた場所が出來ていた。

「リン様。ここです。」「ありがとう。ドラウ。ヒューマ。すこしだけ、教えてしい。」「何でしょうか?」「ニノサは戦ったと思うか?」「いえ・・・。」「サビニは?」「それも・・・」「リン様」「なんだ、ヒューマ?」「はい。私とドラウ殿がこちらに來たときには、この狀態だった事にはウソがありません。しかし、誰も居なかったわけではありません。」「どういう事だ!ヒューマ!」「はい。私とドラウ殿はポルタ村に転移する事は出來ません。その為に、この場所に最初に転移してきました」「あぁ」「ここで、”助けて”という聲を聞いて、そちらに向かいました。」

▲▽▲▽▲▽▲▽「ヒューマ。何か聞こえなかったか?」「はい。”助けて”と・・・。ドラウ殿?」「あぁ急ごう。ヒューマ。ニノサとの繋がりは切れているんだろう?」「あぁ場所はわからないのか?」「大の位置は解る。聲がした方向と同じだ」「そうか急ごう!」

二人は、聲がした方向に急いだ。數分進んだ時に、前から子供が二人何かから逃げているように見えた。

ヒューマは二人に駆け寄って「どうした?」「あぁあがかあ・・・。あぁぁたすけて・・・殺される・・・。殺された・・・助けて」「何を言っている。しっかりしろ!」「あぁぁぁテルメン夫妻とユウ君が殺された。逃げな・・殺される。サビニさんが逃げろって、ニノサさんが私達を匿って、殺された。ユウ君が私達を逃してくれた。殺される。殺された。怖い。」

ヒューマとドラウは、お互いの顔を見てから頷いた。二人のを、ドラウが抱えて、魔の村に転移した。その間に、ヒューマが周りを調べる事にした。ヒューマは、達を追いかけてきたと思われる3人の男子を発見した。

「おい。逃したのか?」「わからん。見つからん。」「知らないぞ、山崎がしがっていただからな。」「んじゃ、アイツが自分でやれよ。」「それにしても傑作だったな。あのオヤジ。武を捨てて、土下座なんてしやがったんだぞ。」「あぁ本當にそれで逃げられると思ったのかね。」「でも、あのオヤジ強かったぞ。多分、俺等3人じゃ勝てなかっただろう?」「あぁだから、子供を人質にしたのだろう?」「あぁそれで、子供離してしければ、”土下座しろ”と、いったら、簡単だったな。手を串刺しにして、後は滅多刺しで終わりだからな。」「そうだな。馬鹿だよな。その後、子供とも殺したのだろう?」「當たり前だ。俺等を傷つけたのだから當然だろう?」「あいつ、ニノサって言って、このあたりじゃ有名なのだろう?」「へぇあんなに弱かったのに、か?」「まぁ武捨てさせて、地面に手をい付けりゃ誰でも簡単に殺せるだろうな」「それもそうか、たんまり経験値をもらえたぞ、あのオヤジ殺しただけで、レベル2上がったからな。」「お、おまえそりゃぁ得したな。もすごかったのだろう?」「あぁすごかったぞ。殺すにゃもったいないけど、子供産んでいるような年増は俺の守備範囲外だし、子供かばって死ぬなんでつまらない死に方だよな」「そうだな。自分が死んだら、子供も死ぬってわからんのかね。馬鹿だよな」

(あいつら・・・)

ヒューマは、殺気を押さえるのに必死だった。そのまま突っ込んでいくのもいい。だが、ニノサから”リンを頼む”といわれた事を思い出して踏みとどまった。

▲▽▲▽▲▽▲▽

リンは、ドラウとヒューマの話を聞き終わって、ニノサとサビニが立花達の誰かに殺された事を理解した。

「ドラウ。助けた、はなんて名前だ?」「サラナとウーレンと言っています。今、魔の森で強制的に寢かしつけています。」「そうか、ありがとう。」

リンは、そこで初めて、自分がミルの手を握りつぶしていた事に気がついた。

「あっミル。ゴメン。」「ううん。いい。リンの好きにしていい。僕は、リンの為に生きている。」「え?」「いい。後で僕の懺悔を聞いてしい。」「・・・解った。この件とは関係ないのだな」「うん。地球での事。」「解った。」

「ミル。ドラウ。ヒューマ。ゴメン。すこし家族だけで話がしたい。」「うん。」「かしこまりました」「解りました」

3人は、石が積まれた丘から距離を取った。

(ニノサ。サビニ。ユウ。ただいま。間に合わなかった。でも、帰ってきたよ。なぁどうしたらいい?俺、復讐していい?)

勿論、誰も何も答えてくれない。

▲▽▲▽▲▽▲▽

「リン。」「ミトナル殿行きましょう。」

ドラウは、ミルの背中を優しく支えるようにしながら、でも、力強くその場から離れるように歩きだした。

「ミトナル殿。」「ミルでいいよ。ドラウさん。ありがとう」「ミル殿。リン様とはどういう・・・。」「ん?難しいな。でも、僕はリンの為に生きる。その為にここに居る。」「そうですか・・・。」「手。治しましょう。」「・・・うん。でも、傷は消さないでしい。リンが僕に付けてくれた傷は僕の寶だから・・・。」

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