《チート能力を持った高校生の生き殘りをかけた長く短い七日間》幕間 パーティアック領

「西沢。間違いないのか?」「あぁ。橋本は死んだと考えていいだろう。生きていたとしても、片腕と片足が切られた狀態だ。死んでいると思った方がいいだろう。」

立花達に取っては、初めて明確になっている”死”だ。三塚と川島と森中に至っては、捕えられていると思っている。それも、パーティアックからの神託で”白い部屋”に居る者はいないという話から、捕えられているだけで死んではいないと思っていた。

「そうか・・・暫く、一人で我慢してもらうか・・・。」「そうだな。」「それよりも、奴らの言っている”神殿”に送り込んだ奴らが帰ってきたって本當か?」「あぁ本當だ」「話は聞けたのか?」「ダメだ」「死んでいるのか?」「いや、生きているが、奴隷紋が刻まれている」

奴隷紋が刻まれてしまっている人間が何を言っても信頼できないのは當然だが、何かしらの意図が有って解放したのだろう。

「全員か?」「いや、半數だ。立花。どう考える?」「おまえはどう思っているのだ?」「そうだな。いろいろ考えられるが、無視していいと考えている。」「無視?」「あぁ神殿が本當に大事なら、奴らは奴隷として解放しなかっただろう。でも、半數は捕えたままにしている事から、なにかしらこちらの報を取得しようとしているとかんがえられる。」「そうだな。」

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立花と西沢は黙ってしまった。それから、何も語らないで西沢は席を立って、部屋から出ていった。

西沢は話していない事がある。今から、その話していない事を確認しに行く事にしている。奴隷になってしまった者達は、いくつかのを持ってきている。置かれていたから持って帰ってきたと話している。

奴らは、神殿から放逐される時に、食料を持たされた。神殿から、パーティアック領までの間に植えて死なないように最低限のだったようだ。城壁から出てすこし行った所で、馬車と馬が有って、それを奪って馬車に乗って帰ってきた。馬車の中には、食料や水がった狀態だったようだ。奴らは、それらを使って、逃げ帰ってきたのだという。奴隷紋も主人が設定されていないので、解放する事はできる様だ。

いろいろ不自然な狀態だが、まずは馬車をミ見に行く事にしている。馬車は、先日自分が拿捕してきたと同型の様だ。食料も大量に積んでいる。そこには、『ナウエルン公國へ』と書かれていた。救援資なのだろう。

西沢は自分に與えられた部屋に戻って「誰かいないか?」「はい。何でしょうか?」「北方連合國ノーザン・コンドミニアムの國の中に、『ナウエルン公國』という國はあるのか?」「はい。ございます。ここから更に西に向かった所にある小國です。」「そうか、あの神殿という街からどうやって行くのが早いのだ?」「はい。あの場所からは直接行くと湖と川に阻まれます。したがって、大きく迂回して、一度街道を北にあがってから西におれる事になります。」「そうか・・・・。ナウエルン公國はどんな國だ?」「はい。領地の三方向を自然に囲われた自然の要害です。空いている部分も山脈を切り開いた場所です。」「三方向?」「はい。南をアウメール湖に面しておりまして、レイクサーペントの巣になっています。西側を湖にり込む大河になっていまして、ここも同じようにレイクサーペントとグリフォンやハーピなどの魔が巣食っています。渡河は事実上不可能です。北側はウムベルク連峰がそびえていて、それを超えるのは不可能な狀態です。唯一人の行き來ができる場所が、西側のロルロットと名付けられた山道だけになっています。」「そうか、どんな人間たちが住んでいるのだ?」「・・・・。亜人の集落です。先々代が攻め込みましたが、ロルロットで待ち伏せされて・・・。」「何か、うまみがあるのか?」「はい。亜人の奴らを奴隷にする事が出來ます。それに、ウムベルク連峰は、銀やミスリルの生産地でもあります。あと、高知に咲く花のをすりつぶして作ったが高値で取引されます。連峰には巖塩が採掘できる場所もあります。」「そうか、そこを攻め滅ぼして、亜人達を奴隷として使って採掘できれば、よいと思ったのだな。」「はい。それに、あの國は我がパーティアックとは違う神を信仰しているので、攻め滅ぼすのもパーティアック様の意なのです。國境を接しているのも、我が國だけですので、奴らを攻め滅ぼしても我らに何を言ってくる國はございません。」「そうか・・・解った、下がっていい。」「はっゴーチエ様。もし、ナウエルン公國を攻める時には、是非私にお命じ下さい。」「あぁ解った。ウォルシャタにもそう伝えておく。」

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従者は一禮して部屋から出ていった。

西沢は、パーティアックの食糧難をどうにかしないと攻め込む事も難しいと考えている。今の人間だけを食べさせるのなら、十分だが數年に渡って戦爭を仕掛ける事は出來ない。電撃作戦で幾つかの國を攻め滅ぼす事になってしまう。出來ないとは思っていないが、好ましくはないと思っている。モンゴル帝國と同じ事ができるかと言われれば、補給が間に合わなくなった時點で終わりだと思っている。

ドアがいきなり開いた。「西沢!橋本が死んだって本當か?」「ほぼ確定だと思う。急いだが間に合わなかった。腕と腳だけが殘されていた。」「そうか・・・それで、復讐には行かないのか?」「復讐?なんで?」「そりゃぁ仲間だからな。復讐で、1萬人位殺せば、奴も喜ぶだろう?」「おまえ、な・・・誰を殺す?」「そんな事決まっているだろう。トリーア王國の奴らか、なんか新しい國を作ったテルメン王國の奴らだろう?」「・・・それは無理だ。停戦協定がある。それに、今戦っても勝ち目は薄いぞ。負けるとは思わないけどな。」「そうなのか?俺たちだけで出ていって、皆殺しにしていけば勝てると思うけどな」「そうだな。負けるとは思わないけど、奴らの兵力が6萬だとして、一人で1萬人殺す必要があるからな。それも抵抗してこない奴隷とかではなく兵士を・・・だぞ。あなり現実的な數字じゃないと思うぞ」「そう言われるそうだな。俺たちも不死ってわけではなさそうだしな」「あぁ橋本がそれを証明してしまったからな。」

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俺は、西沢の部屋から出た。西沢の部屋に行ったのは、たしかに、橋本の事を確認したかった事もあるが、俺の所に屆いた手紙の確認をしたかったからだ。直球で聞くほど俺も馬鹿じゃない。西沢や細田と違って、俺はそんなにいろいろ考える方じゃない。でも流石に、屆けられた手紙の容はやばい事位理解です。

手紙は、川島から俺に充てた手紙だ。俺が使っている寢室に置かれていた。誰が置いたのか解らないが、男の字で”日本語”で書かれていた。茂手木と神崎も生きているから、奴らの可能もあるが、容は、俺と三塚と加藤しか知らない事が書かれていた。筆跡も変わって居る事を考えて、”千葉久”をイジメていた事が書かれていた。

手紙の容は『俺は殺されないように逃げている。冴木。俺たちの中に裏切り者が居る。神埼達に寢返って、自分だけ助かろうとしている。誰か解らないが、俺は”そいつ”に売られた。茂手木も生きている。』『おまえは、そんな裏切るような事はしないと思っている。もし誰かから単獨で戦いに行くような事を言われたら、そいつが裏切り者かもしれない。神託は俺も聞いた。5年待てば、神崎と茂手木はもっと力を付ける。』『たちもどうやら一緒のようだ。神崎と茂手木の部下らしき奴らが話しているのを聞いた。今度、裏切り者から依頼されて、食料を渡す事になっているらしい。裏切り者はそれを獨り占めするつもりのようだ』

俺は、橋本も裏切り者に殺されたと思っている。それを、西沢の所に確認しに行った。西沢は、橋本が死んだ事を確認したような口ぶりだったが、理攻撃がほとんど効かない橋本をどうやって腕と腳を切斷できるのか・・・。そんな事ができるのは、俺たちしかいない。それに、西沢ならテイマーとして、魔を使役できる。魔に襲われた狀況を作る事もできる。

さっき西沢に確認して確信した。裏切り者は奴だ。話を合わせるフリして出てきたが、奴は橋本を見殺しにした。三塚と川島と森中が居なくなった時も、奴が頼んだという話だ。それに、拿捕してきた食料も奴が一人で全部隠してしまっている。

神殿から逃げてきた奴らに話を聞いたら、馬車の中には大量の食料や酒がっていたらしい。それも、奴らはそれを食べている。白いらかなパンやどうやら炭酸飲料もあるようだ。酒もこっちにあるぬるくてまずいビールもどきではなく、薄いワインもどきではなく、しっかりしたワインやウィスキーまで有ったようだ。

それとなく、立花や山崎に聞いても、知らないと言っていた。西沢にまかせていると言っている。西沢が黒だが、まだ灰という段階では誰にも話が出來ない。あと、怪しいと思っているのが、細田だ。橋本が、商隊が近くを通ると橋本に言ったらしい。3人の時にも、細田が、しんがりが必要といいだした。加藤と山崎は違うだろう。立花はそもそも神崎と手を結ぶ必要もない。考えれば、細田も怪しい。実は、細田が裏切っていて、西沢が手を貸している事も考えられる。

部屋に戻って、手紙を読み返してみる。やはり、西沢か細田が怪しい。

ドアがノックされた。「冴木。すこしいいか?」「加藤か?」「あぁすこし相談したい事があってな。」

ドアを開けて、加藤を招きれた。加藤は、そのままソファーに座って持ってきた手紙の様なを投げてきた。「これは?」「読んでみろよ。」「あぁ」

加藤から渡された手紙には、細田と山崎がアゾレム領で行った詐欺行為の時に搾取したレインを溜め込んでいると”日本語”で書かれていた。

「これは?」「俺の部屋から・・・クローゼットから出てきた。署名を見てみろよ。」「ん?え?そんな、死んだはずじゃ・・・。」「あぁ橋本からだ。多分、死ぬ前に書いたのかもしれない。」「なんで、そんな事を・・・あ!ちょっとまて、加藤これを読んで見ろ」

加藤に、川島からの手紙を渡した。

「なっ!でも、これで納得できた。俺たちの敵は、神崎や茂手木だと思っていたが、こっちに居るという事だな。」「そうだな。」

俺は、今考えていた事を、加藤に話をした。

「そうか、西沢か細田が裏切り者か・・・。たしかにな。地球に居る時も、奴ら二人でつるむ事が多かったな。」「あぁそうだな。実際に、奴らがやった事も俺等の責任になっている事も多かったからな。あぁ前に橋本に聞いた事がある。『萬引きをした所を、見られたオヤジを殺した事がある。』とな、細田と西沢が実際には殺したらしいが、それも俺等の為って事になっているらしいぞ」「なんだそれ、俺等は何もしていない。確かに、千葉久をイジメていたけど、そんなの誰でもすることだし、子供の時の話だろう?」「あぁそうだな。」

「それで、冴木。どうする?」「どうするも、最悪なのは、立花も知っているかもしれないって事だろう?」「あぁそうだ。俺とおまえ二人じゃ4人に勝てない。」「間違いなくな。それに、まだ裏切り者が西沢か細田って決まったわけじゃない。」「そうだな。それでどうする?」「俺に考えがある。西沢が奪ってきた食料を、黙って街中で困っている奴らにばらまこうかと思う。それで文句を言ってきたら、そいつが裏切り者だろう。自分の為の食料を好き勝手にされたのだからな。」「そうだな。でも、それじゃ立花や他の奴らも怒るかもしれないぞ?」「俺等がやったってわからないように、やればいいだろう?」「そうだな。やってみる価値はあるだろうな。」「あぁそれに、奪ってきた奴らが言っていたが、相當味いらしいぞ。」「そうなのか?」「それを、西沢が黙っていたからな。」「後、多分山崎もだな。」「山崎もなのか?」「あぁ西沢が持ってきた荷を、山崎と確認しているのを俺は見ているからな。」「そうなのか?」「あぁ間違いない。」「西沢・細田・山崎が裏切り者か?」「そうなるな。もしかしたら、西沢だけが実際の裏切り者で、細田と山崎はそれに従っているのかもしれないけどな」「そうだな。でも、いま気がついてよかったな。」「そうだな。まずは、食料と飲みを調べてみよう」

俺と加藤は、西沢が奪ってきたと言っている馬車から食料と酒をすこしだけ取り出して、俺の部屋で食べてみる事にした。奴隷に落とされた奴らの話が本當なら味いはずだ。

実際に食べてみて、味いか不味いかで言えば、味くはないが不味くもないと言った所だが、たしかに、地球で食べていた記憶に近い味がする。酒に関しては、こっちの世界のじゃないのはすぐに解った。俺と加藤は、これで確信した。西沢が裏切りだと・・・。酒に関しては、立花にも飲ませた。最初は何か疑っていたが、一口飲んだ後は全部よこせと言ってきた。どこから手したのかしつこかったがまだ教える事は出來ないと突っぱねる事にした。最初は、街中でばらまこうかと思ったが、確認の為に何日か食べていると、そんなもったいない事をしないで、俺と加藤で獨占する事にした。幸いな事に腐りにくいがほとんどだ。木箱にっているが多い。酒は樽の中にっている狀態だったので、中だけをすり替えた。食べも全部すり替えさせた。作業は、加藤の奴隷にやらせて、全部の積荷をれ替えた段階で、奴隷は殺した。もし、西沢とかに何か言われた時にも、奴隷が勝手にやった事にするつもりだ。煙草の様なと酒は立花にも渡した。何も言ってこない所を見ると、立花はこの件には関わっていないようだ。

◆◇◆◇◆◇◆◇

「リン様。奴らは、”薬”漬けの酒と煙草と食料に手をつけました。」「そうか、全員か?」「いえ、ブレディ・アンジョロとヴィヅット・ジャスティンとウォルシャタ・フォン・アゾレムです。」「そうか。ウォルシャタまで口にしたのだな。手紙が効力を発揮したようだな」「はい。手紙は、眷屬が回収して処分しましたが、よろしかったのですか?」「あぁそれでいい。それから、定期的に、酒と煙草を屆けてやってくれ。」「かしこまりました。どのような方法で送りましょうか?」「そうだな。『ベンタット王國』からの貢として、アンジョロとジャスティン宛に送って、中に、『マルビン・オットー』と『クンジナ=ユルワーフ・フォン・ドワイト』に依頼されたとしておくか。」「かしこまりました。でも、よろしいのですか?」「なにが?」「『クンジナ=ユルワーフ・フォン・ドワイト』は死んだと思われているのですよ?」「大丈夫。それさえも疑い始めるだろうからな。実際に死んだと思わせているのは、ロラ・ゴーチエだけだからな」

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