王立學院には図書館がいくつかあり、今回向かったのは一番古い建で中央図書館というものだ。

中央図書館は塔を改造した建築で學院の中心にある。

見た目は古いが、中は改裝されて綺麗で快適だ。各階には壁も含めたあらゆる場所に書架が並び、本棚の隙間を埋めるように設置された機で學生達が勉學に勵んでいる。

「ここが噂に名高い王立學院中央図書館。古今東西の冒険譚、英雄譚といった書が選り取り見取りなのですね。うへへ……」

「だから姫様、『うへへ』はおやめください。それはそれとして、ここには沢山の論文も保管されているのです。勿論そこには有な研究も。ぐへへ……」

「あの、お二人とも、早く中へりましょう。人が見てますから」

「ステル君、結構狀況に慣れるの早いわよね……」

何かに心しているリリカの案で一行は中にる。キョロキョロする王家の主従を連れて、向かう先は上階だ。

ステル達の目的地は、最上階に作られた特別室だった。

そこは一目でわかるくらいお金のかけられた豪華な室。

中央図書館は背の高い建だ。學院の敷地のみならずアコーラ市の景まで一できるこの部屋は學院が大切な客をもてなすために使われているという。

そしてそこに、ステルに見覚えのある人がいた。

「ベ、ベルフ教授！？」

「なんでここに！」

そこにはテーブルの上に書を並べたベルフ教授が待ち構えていた。

いつもよりも良い服にを包んだ教授は、立ち上がって落ちついた口調で言う。

「王に招かれたのですよ。初めまして、ヘレナ王。お目にかかれて栄にございます」

教授らしい隙の無い仕草で一禮。

すると、ヘレナ王が華やかな笑みを浮かべて禮を返す。

「こちらこそ、薬草學の権威であるベルフ教授にお會いできて嬉しいです。ね、アマンダ」

そう言われた橫のアマンダは、固まっていた。

文字通り、彼の表には何のきも無かった。かすかに震えてすらいる。

「アマンダさん、大丈夫ですか？」

問いかけたリリカの方を向きもせず、アマンダの視線は一心にベルフ教授に注がれていた。

「お……お……」

なんか聲がれた。

そして、今初めて歩き出しましたとでもいうような怪しいきで、アマンダはベルフ教授の前まで行く。

目の前に著くと、彼は深々と頭を下げた。

「お會いしとうございましたあぁ！　教授の學者として歩んできた道、そして研究の果、このアマンダ、心より尊敬しております！」

「えっと……。ヘレナ様？」

いきなりのことに戸ったステルが主に聞くと、王は微笑んで答える。

「ベルフ教授はの研究者に対して風當たりの厳しい時代に、道を切り開いた學者なのです。アマンダは昔から尊敬していて、學生時代は薬草學を獨學で學んでいたくらいなのですよ」

「な、なるほど」

ちょっと困っているベルフ教授と激しているアマンダを見て納得するステルである。

「アマンダ。そろそろ落ちつきなさい。教授が困っているわ」

「はっ。申し訳ありません。つい我を忘れて……」

王に言われてようやくアマンダが顔を上げた。

一方のベルフ教授の方は困り顔だが、それほど迷そうでもない様子。

「いえ、ヘレナ王から『ちょっと驚くような反応をされるかもしれないけれど、どうか見守ってあげてください』と事前に説明をして貰っていましたから」

「姫様から？」

アマンダの視線をけ、王が頷く。

「せっかく王立學院に來たのですから。日頃から私の世話をしてくれている、アマンダへの贈りです」

「ひ、姫様……」

激し、その場に跪くアマンダ。

「的な景……なんですよね」

「そうよ。……多分」

あまりのの起伏に、ステルとリリカは場の流れから完全に置いていかれていた。

「あの、ところでベルフ教授のそれ、講義の準備みたいですけれど」

機の上の書籍や書類に気づいたリリカが指摘すると、教授がこちらを向いた。

「ええ。私はここでアマンダさんに薬草學の特別講義をする予定です。リリカさんも良ければどうぞ」

「な、なんという栄な……っ」

その容を聞いて、アマンダが悶えていた。忙しい人だとステルは思った。

一方のリリカは微妙な顔だ。ここに來て講義とは思っていなかったのである。

「リリカさん、どうかお願いします。アマンダに一時間ばかり付き合ってあげてください」

様子を見ていたヘレナ王が、あろうことか頭を下げてきた。

流石にこれは斷れる狀況ではない。リリカはここに學院の代表として來ているのだから。

「構いませんけれど。ステル君もですか？」

その言葉に、ヘレナは首を橫に振った。

「私は別の用件があります。ステルさんにはそれに護衛として著いて來て頂きたいのです」

「えっ。いいですけれど。アマンダさんが……」

護衛騎士が護衛から外れるのは流石に問題なんではないだろうか。

そう思ったら、アマンダがステルと王をじっと見てから言った。

「承知しました。ステル様。姫様をお願いします」

その視線は驚くほど真剣なものだった。

尊敬する人の講義というご褒に負けた者に出來る目では無い。そう思えた。

「わ、わかりました」

思いの外強い意志を見て、ステルは承諾する。意味も無くされた話ではないのかもしれない。

「では、ステルさん、私とこちらへ」

「ステル君、い、いってらっしゃい」

々と狀況についていけてない様子だが、一応リリカが送り出してくれた。

學問の時間にった二人を殘して、ステルは王と別の部屋への扉をくぐる。