《山育ちの冒険者 この都會(まち)が快適なので旅には出ません》81.星人の代行者
『星々の輝きよ 流星の世界よ この掌より來たらん』
ステルは知るよしもないが。この時放ったのは星の魔法使い、アーティカ・ディマードにとっても最も強力で危険な魔法であった。 『星』の呪文を詠唱するのは人間のでありながら神の力を扱うということだ。
詠唱中は完全に無防備。魔法の制に失敗すれば、強すぎる力がそのを焼く。
しかし、ステル達のおかげでアーティカは魔法を完させた。
アーティカは青白い輝きを燈した杖を手放す。
魔法の影響だろう、杖はその場に浮いたままだ。
そして、杖から溢れた無數のが、アーティカの掲げた両手の中にどんどん集まってきた。
まるで手の中に小さな星空が包されたかのよう景だった。
星、としか表現できない。小さな輝きだ。指先のほどの青白い。
無數のそれらは彼の手の中でしばらく漂った後、一方向に向けて、広がりながら飛び出した。
倒すべき敵、『落とし子』に向かって。
アーティカの生み出した小さな流星雨は進路上にいた黒い獣を一瞬で吹き飛ばし、そのまま『落とし子』に殺到した。
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○○○
ステルは魔法が炸裂する瞬間を目の前で見た。
の本流が『落とし子』のに吸い込まれていく。
小さいが強く、どこか懐かしいが、『落とし子』の黒いをで覆っていく。
『落とし子』はくことはおろか、悶えることすらできない。
ステルの目の前で、徐々に『落とし子』がその存在が薄れていくのがわかった。
自分に向かっていた殺意や敵意というものが薄まっていくのがわかる。
時間にして20秒もなかっただろう。
アーティカの『星の魔法』は終了した。
星のは薄まり、室は元の燈りに照らされる。
「終わった?」
ステルがそう呟いた時だった。
こちらに向かって黒い拳が振られてきた。
「…………っ!」
反的に盾を構えたのは幸運だった。魔導としての力とステルの力が合わさった盾がその一撃をけ止めた。
黒い拳の一撃は、尋常な力では無く、小柄なステルは大きく吹き飛ばされた。
その一瞬。ステルの視界、視線の先、一回り小さくなった『落とし子』がみえた。
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アーティカの魔法をもってしても倒しきれなかったのだ。
「ぐっ……くそっ。魔法に見とれちゃった」
一撃で吹き飛ばされ、部屋の隅の壁に激突したものの、ステルは無事だった。
その代わり、リリカに貰った盾が破壊されていた。むしろ、よく保ったといえるだろう。
「後で謝らなきゃ……」
言いながら壊れた盾を捨て、前を見る。
そこでは、グレッグとアマンダが『落とし子』と渡り合っていた。
後ろからヘレナ王とイルマが援護している。
渡り合えている。
一撃でも攻撃をけたら危険な『落とし子』とあの四人は互角に戦っていた。
弱ってる……?
『落とし子』のきは明らかに悪くなっていた。
アーティカのあの魔法をけて、ただで済むわけがなかったのだ。
「今なら……倒せる……」
そう思い、幸いにも手放していなかった炎の小剣に力を込める。
虹の輝きが寶玉から溢れ、炎が刃に纏う。
今回は、そこから更に変化があった。纏う炎のが、赤から青白い輝きになったのだ。
「最後の魔法よ。慎重にね」
「アーティカさん……」
見れば、苦しそうな顔で、額に汗を浮かべたアーティカが杖をこちらに向けていた。
「……よし」
この一撃を確実に決めなければならない。そう思い。ステルは慎重に、確実に、全に魔力を回す。全ての力を、この攻撃に込めるために。
グレッグ達の戦いぶりは悪くない。しかし、決め手にかける。ならば、それを自分が為さねばならない。
決めてに欠ける。そのことがわかっていたのか、グレッグはすぐに賭けに出た。
魔導斧と王家の護符の力を重ねた必殺の一撃だ。
彼の斧が、黃金のに包まれる。
「おおおおお!」
グレッグの雄びと共に放たれた一撃は『落とし子』の右手によってけ止められた。
「覚悟ぉっ!」
しかし、それで終わらない。
今度はアマンダが魔導剣を輝かせ、一撃を見舞ったのだ。
グレッグと同じく、黃金の輝きを帯びた一撃が、『落とし子』のを捕らえた。
しかし、それで終わりだ。武が保たない。
二人の全力の攻撃は『落とし子』に対しての致命打とはならなかった。
「ちっ」
「危ない!」
それぞれが砕けた武を捨てながら、距離を取る。
追撃するように『落とし子』の黒い槍が黒い槍を放ったが、ヘレナ王の魔導によって防がれた。
二人の攻撃は失敗したかに見えるが、そうではない。
ステルには見えた。『落とし子』のきが更に鈍くなったのを。
今の攻撃は、無駄ではなかった。
今なら、屆く。
アーティカの魔法、グレッグとアマンダの攻撃。それによって『落とし子』は弱化している。
ステルは腳を踏み出す。狹い室だ、彼の腳力なら、一瞬で距離は詰まる。
黒き疾風と化した年が、戦場を駆け抜ける。
「………っ!」
いきなり橫を通り抜けたステルに、グレッグとアマンダは反応すらできなかった。
青く輝く炎の小剣を手に、ステルは『落とし子』の目の前に到著し、
「終わりだっ!」
の中心にその刃を突き刺した。
青白い炎が『落とし子』の広がっていく。
「……しつこい」
「…………!?」
そんな一言と共に、ステルの両手が握られた。
竜の革で作られ、ステルの魔力で強化された服が、じわじわと黒に浸食されていく。
前回は、ステルはここで逃げた。
しかし、今回は違った。
「あああああああ!」
ステルはそのまま、自分の持てる魔力を全て炎の小剣に回した。炎が吹き上がり、徐々に『落とし子』の力が弱くなっていく。
例え腕が使いにならなくなっても、ここで剣を手放すつもりはなかった。
「……おのれ」
そんな一言と共に、ステルの腕への力がいきなり弱まった。
同時、『落とし子』がの側から青い炎を吹き出した
ステルの手の中で、炎の小剣が輝く砂となって崩れていく。母から託された魔剣も限界のようだ。
ステルは距離を取って、見據える。
落とし子は燃えていた。しかし、まだいている。
「面倒な奴らだ……」
燃える『落とし子』がそんな言葉を発した。
燃えさかる腕を振り、黒い刃がステルを襲う。
「うわっ」
いきなりの攻撃に驚きつつも、ステルは回避。
しかし、隙は生まれた。その間に『落とし子』は駆け出し、部屋の一畫に向かっていく。
それは、出り口だ。恐らく、二日前にステル達が最初にった安全な方の道に出るのだろう。
そちらに向かって『落とし子』は逃走を始めていた。
「……逃がさない」
低く呟き、ステルは腰の後ろに手をばす。
取り出したのは、組み立て式の弓。そして、この時のために作られた人工ミスリルの矢だ。
矢には既にアーティカによる魔法がかけられている。
魔法は、ステルの呪文によって発する。
威力の程度がわからないこともあり、最後の切り札として、今まで使わなかった。
だが、使いどころだ。
弓に矢をつがえ、ステルは呪文を唱える。
星人(ほしびと)のを分けられたステルにしか使えない魔法を発させる呪文を。
『僕はターラの子ステル。星人(ほしびと)の代行者として、ここに悪神の欠片を討つ者なり!』
びと共に、矢に変化があった。
魔法と親和が高い人工ミスリルは、星人の魔法にけて矢は白銀に輝かせる。
こちらの様子に気づいているであろう『落とし子』は振り返りもしなかった。
だが、問題ない。
傷を負った『落とし子』のきは遅い、狩人であるステルなら絶対に外さない獲だ。
「いけっ」
言葉と共に、矢は放たれた。
矢は銀の流星となって空間を駆けた。
一條の閃が、逃げる黒い『落とし子』を貫いた。
『落とし子』のが、一瞬だけ跳ね上がる。
「……っ」
流星をけて、その場に倒れ伏す落とし子。
白銀の矢は『落とし子』ので止まっていた。
そして、矢の刺さった箇所から徐々にその黒い全が崩れていった。
星人(ほしびと)の魔法は、確かに効果を現したのだ。
「ぐ……あ……」
しの苦悶のきと共に、まるで、そこにいるのが間違いであったとでもいうかのように、『落とし子』はゆっくりと、斷末魔も殘すことも無く、この世から消滅した。
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