《僕と狼姉様の十五夜幻想語 ー溫泉旅館から始まるし破廉恥な非日常ー》第15節2部—生徒會長と怪しくなる雲行き—

溫泉から上がった銀は、石段の上にある木製の椅子に腰掛けていた。眼下に広がる旅館と庭園の佇まいを眺めつつ尾をゆっくりと左右に振り、煙管を吹かした。

「前回から3ヶ月といったところかの……うむ、いつもは汰鞠を使いに出しておったが。せっかく自由になったことじゃ、儂わしが直接行こうかの。いい加減霊山の神に顔を見せておかんといかんじゃろ……」

くあ、と。大きなあくびをした銀はある一柱の神の顔を思い浮かべる。白い狐面で顔を隠した、金の髪、金、そして九つの尾を持つ狐の神を。

「あのいけ好かん、金の九尾と顔をあわせるのは気がすすまんが……」

——……。

「へくしっ……ぬぅ。誰か噂してやがりますね」

「そりゃそうでしょう。あれだけグダグダな話を學式の場でされてしまえば……」

「あれは副會長、あなたにも責任あるんじゃないですかねー」

「カンニングペーパーくらい手元に置いておけばよかったのでは」

「あぁんッ?」

「あ、すいません……」

學式が終わり、生徒會室に戻ってきていた生徒會長九十九稲荷と、副生徒會長の男子生徒はあーだこーだと言葉をわしていたが……。九十九稲荷が突然じた悪寒にくしゃみをし……。

「うーむ、これは銀の気配が……」

「え? なんです?」

「いえ……なんでもありません。ああ、もう帰ってもいいですよ。今日の予定はこれだけですし。私はもうししたら帰りますので」

「あ、はい! では僕はこれで。お疲れさまです」

「ご苦労様ですー」

副會長は生徒會室を出て行き、だだっ広いそこに殘された九十九稲荷は一人、先ほどの學式のことを思い返す。

そして、気になったことを調べるために、今回の學者の寫真付き名簿を開き……。

「えー……どこですかね。あの可らしい男の子……顔寫真を見ればすぐに分かるはずですが」

手早くその冊子をめくっていき、はじめに見つけたのはその可らしい男の子の隣に座っていた目つきの悪い男子生徒。

「羽間一真……と、いましたね」

その近くの項目に載せられていた、例の可い男の子の寫真。その寫真の男の子のはにかみ笑顔につられて、九十九稲荷も表が綻ほころんでしまう。

「柊千草……ですか。……えへ、可い。……ではなく」

學式、壇上から離れた位置に座っていたにも関わらず彼からじた銀暴な神の気配。

顔の可らしさではなく、そこが気になっていたのだ。

(銀狼は未だ祠の中にいるはずですが……。もしかして出てきているとでも言うのですかね)

この生徒會長は、その銀狼について何か知っている……もはや顔見知りのようなことを考えている。そして、次に思考を巡らせたのは、その男の子の名前だった。

「柊……あ。柊伊代の弟君とはもしかしてあの子のことなのでは」

もう一度名簿、名前の順で言う“は行”の項目を洗い出し、柊という名が他にないことを確認した彼は、嬉しそうに笑みを浮かべた。

「あっは、伊代の弟ってこの子ですか! うわあ、似てねーですね! ってことは、柊の旅館の子ということに……うぅむ、ありえないことではないです。なんだか雲行きが怪しくなってきましたよ……?」

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