《僕と狼姉様の十五夜幻想語 ー溫泉旅館から始まるし破廉恥な非日常ー》第18節23部ー頼りっぱなしー

「なはは、ようやく抜け出せたぜ。ありがとよ、よそ者の嬢ちゃん。あそこのは気楽に連れ出せねーんでな!」

「どういたしまして……?」

大通りを歩いていると、遊さんからものすごい聲をかけられてる黒狼様。

やっぱりかっこいいからものすごい人気だな。それでもことば巧みにうまく躱しているところはとても理的に見える。

どうにも、黒狼様は自分が納める山周辺の神様たちと、付き合いでここに來ていたんだって。

「ついでに蛇姫のやつも叱ってやらないとと思ってたんだが、見つからなくてな。お前さんだろ? えらくちょっかいだされてるってぇ人の子は」

「そうです、そうなんですよっ。なぜ分かったんですか?」

思わず飛び跳ねて喜んでしまった! 僕のお耳もよくくこと!

なんだかとても頼もしい神様に會えたみたいだっ。

「にしても、まさか子おなごたあな。蛇姫あいつ、同好きだったか?」

「あっえっと……それがですね」

「にしてもえらいいい著著つけてもらえたな。九尾のやつもちゃんと面倒みてやりゃあいいのによ」

“そいつは俺が昔、九尾の奴にくれてやったもんなんだぜ“、なんてとても無邪気な笑顔で言われた。

その口ぶりから、黒狼様は九十九さんと知り合いみたいだけど……一何者なんだろう。

九十九さんのことを“奴”、なんて呼ぶくらいだから、相當位の高い神様なんだろうな! うひゃあ、たのもしい!

……かんっぜんに人、いや神様頼りじゃん僕……。銀に甘えすぎてるからかなぁ……。

「そんにしても、可いなあお前さん」

「へっ?」

と、足を止めて僕の方を向いたかと思うと、それにつられて顔を向けた僕の顎をこう……くいっと指で持ち上げられた。

「蛇姫にやるにはもったいねぇってもんだぜ」

「あ……あの……僕っ」

突然のことに驚いてしまって、うまく聲が出せない……!

僕男の子なんですけどぉぉっ!

「奧方は、元気かのう。黒狼……」

「ふぬぁ……ッ!?」

「うわ……!」

僕は驚いた。突然苦蟲を噛み潰したような顔に変わった黒狼様と……そして、後ろから聞こえてきた、僕のお目付役のどす黒い聲に。

「銀!」

「まったく、このたわけが。し目を離すとこれじゃ。帰ったら仕置きが必要じゃの」

なんて、し呆れたように言いながら、僕の手を取って自分の方に引いて寄せてくれた。

僕はその勢いで銀に抱きつく形になって、それに合わせるように後頭部に腕を回されて抱きとめられた。

「銀狼、お前さん……祠から出てきたってのは聞いてたがなんでここにいるんだ!?」

「この言うことを聞かん男おの子このを叩くためじゃ」

「……ハァ!? 男ォ!?」

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