《僕と狼姉様の十五夜幻想語 ー溫泉旅館から始まるし破廉恥な非日常ー》第18節26部ー神様の嫉妬ー

と、いうことで僕はあぐらをかいた銀の腳の間にすっぽりとおを収める形で、後ろから抱き締められることに。

黒狼様はそれを見て笑いながら……。

「幸せもんだな年よお。そこはな、數多の男神共がどんなに頭を下げても、泣いても喚いても手にらなかった場所なんだぜ」

「えっ……」

「うぬも含めての、黒狼」

にやにやとそう言った銀に対して、苦蟲を噛み潰したような表を浮かべて肩を竦める黒狼様。

黒狼様も昔は銀のことを想っていたのかな。銀だって、そりゃ神様として生きてきた期間がめちゃくちゃ長いわけだし……そういうことだってあっても不思議じゃない。

「くっそ、あん時の俺はどうかしてたんだ! 今思い返せば後悔しかねェ!」

「ほう? ワシは多なり楽しかったのじゃがな。隨分寂しいことを言ってくれるものじゃ」

「お、おい、そいつぁずるいってもんだろ……」

がやけにしおらしくなってそう言うと、黒狼様は見るからに揺しながら言う。

「山5つ越えて、やたらめったら大きな鹿を獲ってよこされた時などは、さすがに引いたがの」

「あああああああ!! このクソ雌はぁああ!!」

「かかかっ! 食いで釣ろうとするたわけほど、扱いやすいものじゃ」

はこう言ってるけど、黒狼様をからかってとても楽しそうだ。言い伝えに、銀狼に惚れるお偉い様のお話もあるくらいだから、銀はそれはもう、相當な數の男の人に心を持たれていたんだろうな。

僕としては複雑な気持ちなんだけど……。

「こういった話で嫉妬する男の子も言わずもがな、じゃが。の、ぬしよ?」

「してないし!!」

「くふふ、素直でないのう。いつものぬしはこちらが心配になる程素直じゃというにっ」

「ふぃてなふぃ……!」

後ろから、銀に両頬を摘まれてばされた。

ほんと、銀はこういうとこあるからなあ。でも、こういうところがあるからこそ、男はその魅力に取りつかれてしまうんだろうね。

「ったく。ま、今はどっからどう見てもにしか見えんからな。他の男神共が騒ぐこともないだろう」

「そうじゃ、そのことじゃ千草。ぬしからあのいけすかん狐の匂いがするのは……そういうことでよいのじゃな?」

「え? そ、そういうことって……?」

「……浮気者」

後ろから、が僕の耳に當たるくらいの位置で、一文字一文字ゆっくりと間を空けて囁くように、妖艶な聲でそう言われた。

その気に當てられてぞわぞわと、全に鳥が立つのをじながら僕は反論した。

「ちっ、違うよ! つく……九尾様に助けてもらったんだ。僕が大通りで遊さんに囲まれてたから……」

「よりにもよってあの九尾狐に助けられおって……まったく、不愉快じゃ」

僕の反応をいたずらに楽しみたいわけじゃなくて、案外本気で怒ってそうで僕はしばかり罪悪を覚えてしまった。

別に僕と銀の間にそこまで強い関係があるわけでもないはずなのに!

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