《僕と狼姉様の十五夜幻想語 ー溫泉旅館から始まるし破廉恥な非日常ー》19節ー蛇と狼ー
そんな銀狼を見て、大きな黒い蛇はしたじろいだみたいだった。
そりゃそうだろう。ただでさえ怖い狼がこれだけ大きいんだ。それだけで大抵の相手は怯むだろうし……なにより。
そう、なによりはるか昔から恐れられていた銀の狼、神である今顕現した
生前の姿だ。
「うお? うおおおお」
と、銀の狼のしい顔が僕に近づいてきたかと思うと、頬をぺろりとなめられた。
くすぐったくて、暖かくて、なぜだかいい香り。
そして襟を口でくわえられて持ち上げられた。
かと思うとぽいっと投げられて、しばらく空中を漂ったあとふわりと暖かもふもふな絨毯にけ止められた。
『共に居るのじゃろ?』
「うん!」
『かかっ。振り落とされんよう摑まっておるのじゃぞ』
そう言って、姿勢を低くして黒蛇である蛇姫様に飛びかかる準備をした時、僕は大聲で銀を呼び止めた。
「ねえ銀っ!」
《んん?》
「銀、とっても綺麗だよっ!」
《くふ、ふふふふ。阿呆じゃ、ぬしは取って食いたくなるほどの底抜けの阿呆じゃ》
そして銀は全のバネを使って地を蹴って、蛇姫様のに向かって跳躍。
あまりに勢いがあったからか、恐ろしいことにその浮島から見事に、真っ逆さまに落ちてしまった。
それも、緋禪桃源郷のど真ん中に。
それはもう大騒ぎになってしまった。いくら死角の世とはいえ、突然巨大な蛇と狼が落ちてくるなんてそうそうあることじゃない。
赤い桜をなぎ倒し遊郭の建屋を吹き飛ばしのたうち暴れる蛇姫様を、その牙を突き立てて押さえ込む銀。
最後のあがきとでも言わんばかりに、蛇姫様は銀のに巻きついて締め上げていくけれど、まったくの力不足。
本當に、一切苦しむ様子もなく銀は蛇姫様をねじ伏せて見せた。
そもそもが悪あがきだった蛇姫様はそれ以上抵抗することはなかった。
いや……でも、まだ抵抗しようと思えばできるんだろう。銀も銀で、これで終わりかと隨分拍子抜けした様子だった。
でも、それはし考えればわかることだったんだ。
この緋禪桃源郷を、誰が治めているのか考えれば。
「もう観念せい、蛇姫。限界じゃろう」
緋禪桃源郷、折れて崩れた緋禪桜。
その赤い花弁のクッションの中で、蛇姫様は元の姿に戻って仰向けに倒れてる。
銀も、銀火に巻かれたかと思えば一瞬にして元の姿に戻って蛇姫様を見下げてた。
そして……その隣で僕はいたたまれない気持ちで立っている。
大蛇になる前の蛇姫様は、確かに大人の香を漂わせる神様だった……んだけど。
今はいが橫たわっているだけ。
大人な蛇姫様を、そのままくしたような容姿ではあるけれど、威厳もなにも無くなっていて……。
そう、銀が言っていた仮初めの姿の意味がそこにあった。
本當に無理をして、蛇姫様は自分の姿を偽り神としての威厳を保っていたんだ。
「……」
「蛇姫……様」
本當に無理をしていた蛇姫様は泣いていた。
聲を押し殺して、大粒の涙をぽろぽろとこぼしながら……。
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