《比翼の鳥》第6話:笑顔

しばらく、…もといルナは、ずっと自分の新しい名前を呟いていた。

「ルナ…ルナ…私…ルナ」

そして、ニコーっと満面の笑みを浮かべて俺の方を見た。

不覚にもズキューンと來た。

駄目だ!そのらしさは反則すぎ!!思わず抱き抱えてローリングしたくなる破壊力だろう!!

しかし、そこは塾の講師で培ったポーカーフェイスを憾なく発揮する。

あ、今の発言は俺だけの事ね?世の中の塾講師の人を裏では何考えてるか分からないとか、変な目で見ちゃだめだからね?

「良かった。気にってくれた?」

俺がそう問いかけると、ルナは首が取れるんじゃないかと言うほど激しく首を縦に振った。

「そっか。んじゃ改めて宜しくね。ルナ」

俺はそう言いつつ、ルナの前に右手を差し出す。

その右手を見て、ルナはピタリと止まると、「んー?」と首を傾げつつ、俺の手と顔を互に見ていた。

「あれ?握手?知らない?」

ルナは首肯。多分知らないって意味の首肯だろうな。

「そっか。んじゃルナも真似して右手を出して?ああ、そっちは左手。右手は逆の手だね。」

こちらを見ながら左手を出したルナに、説明しつつ、右手を出してもらう。

「んじゃ、はい。握手―」

俺は、ルナの右手を摑んで握手したその時、何かビリッとしたものが、俺の手から脊髄を通って頭へと抜けて行くのをじた。

不快は無いが、靜電気のそれとも違う、実に奇妙な覚だった。

それと同時に、ルナがびっくりした顔で俺の顔をマジマジとみている。

初めての握手だからびっくりしちゃったかな?

「っと。これが握手ね。仲良くなろうねーっていう時に使うんだよ。こうしてらかく手を握って上下にシェイク!」

そうして、俺はし早めに手を上下に振った後、ゆっくりと手を放した。

ルナは自分の手をボーっと見つめていた。その後、しばらく周りをキョロキョロ見回すと、俺の顔をジーッと見つめて、

右手をばして

「握手」

と、一言。

俺はその手を取って、また握手した。今度はし長めにゆっくりと。

手を離すと、ルナは握手した右手をしばらく見ていたが、それを左手で包み、の前で祈るように抱えた。

俺は何も言わず、ゆったりとルナのその様子を見ていた。

ルナは、余韻を楽しんだ後、俺の方を見て、

「握手。あったかい…」

と、花の咲くような笑顔を見せてくれた。

參った。本當に參った。ルナの笑顔は素晴らしいものだ。この笑顔は良いものだー!と絶したくなる。

これは、もっと々教えて、んな表を引き出してみたくなる。

それに、やっぱりの子は笑顔でいないとね。

會った時から、余り表のでない子で心配だったが、きっかけが無かっただけの様だ。

これから々な事を知って行けば、その分々な表をするようになるだろう。

なんだか、もっとんなルナを見てみたくなってきた…。

って、あれ?これって変態紳士みたいじゃないか。

字面だけ見れば、お巡りさん!こっちです!!って言われそうだな。

いやいや?変な意味ではなく、純粋に育ててみたくなっただけだよ!?

そんな俺の葛藤など知る由も無く、悶える俺をルナは不思議そうに見ているのだった。

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