《比翼の鳥》第8話:考察

まさに嵐の後のような慘狀の部屋をルナと片付けた。

と言っても、調度品の類は無く、ただ広いだけの殺風景なリビングだったため、特に大きな被害は無かった。

壁がズタボロになってる點を除けば…だが。

謎の発ゴケがその部分だけ無くなり、寒々しい巖を覗かせている。

ちょっと煽り過ぎたもあるので、反省しなくては…。

ちなみに、びしょびしょになった床は、ルナが綺麗にしてくれた。

水が生きのようにいたと思うと奧の通路に消え去った景は、なかなかに見応えのあるものだった。

あの通路の先は湖に繋がっていた筈だ。恐らくそこに流したのだろう。

俺はある程度の大きさの石ころや破片を部屋の隅に集め終わると、ルナの方に振り返って聲をかけた。

「ふう、これでとりあえず危なそうな破片は片付けたよ。明日、外に捨てに…って寢てるし。」

ルナは壁にもたれて気持ちよさそうに寢息を立てていた。

なんか、無理させちゃったかな?とりあえず、寢所に運ばないとな。

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俺は他の部屋を軽く回りつつ、ルナの部屋を探した。

3つあった個室の全てに、寢臺と思われる場所があったのは助かった。

寢臺には何かの皮と思われるものが敷いてあり、その上にはもこもこの綿としか形容のしようが無いがあった。皮が敷布団、綿が布代わりだと思うのだが…なかなかにワイルドな景だ。

最悪、床で雑魚寢も覚悟していたので、ワイルドだろうが何だろうが、ありがたい事に変わりは無い。

3部屋の、1室だけ綿が崩れて使用されている後が殘っていた。恐らくこの部屋がルナの部屋だろう。

部屋を見渡すがあまり生活観がない部屋だった。年頃のの子が持つであろう、の子特有の生活が無いのだ。

正に『閑散』の一言に盡きる。

リビングに戻りルナに軽く聲をかける。

「ルナ。こんなところで寢ると風邪引いちゃうぞ。」

まぁ、予想通り全く起きる気配がない。

俺はルナを起こさないように優しく抱え上げる。思った以上に小さく軽かった。

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ルナを寢臺に橫たえて、綿を被せようとした所で問題に気がついた。俺のYシャツの袂を握ったまま離さないのだ。

手を解いて橫たえようとしたのだが、がっちりと摑んで離さない。

Yシャツをいで空蟬の的に行こうかとも思ったのだが、そこまでする必要も無いかな?と思い始めていた。

これがもうし年齢的に上だったら、流石の俺も駄目だったろうが、まだまだ子供だ。

いっそ微笑ましくあり、俺の父的なものを刺激するだけだった。

もし俺に子供がいたら、駄目パパになる自信が出てきた。うん。

基本、甘えられたらNOとは言えないのだ。

俺はスーツのジャケットをぎ、寢臺の端にかけておいた。ちなみに、既にルナを寢臺に橫たえた狀態だったのでかなり前のめりな姿勢でぐことになった。中々に厳しい姿勢だ。靴も同じように見ることもできずぐ。

寢臺は思いのほか広く、俺がルナを抱えながら橫になって手足をばしてもまだ余裕がある程だった。

布代わりと思われる綿を被せ、俺も橫になる。

敷布団の代わりの謎な皮は思いのほか良い弾力で、らかいながらもしっかりとを支えてくれた。

綿も繊維質なのでくすぐったかったりチクチクするかと思ったが、かけているか分からないくらいの軽さでこれまたビックリ。

異世界クオリティは馬鹿にできないなと、一人悅にる。

ルナの寢息をバックミュージック代わりに、目まぐるしかった1日を整理する。

まさかの異世界。ラノベでは人気のコンテンツで俺も好きだが、自分が験することになるとは…。

しかし、なんでまた俺が…と思いつつ、原因は一つしか浮かばなかった。

頭痛だ。

もともと強烈な頭痛持ちではあるが、あそこまで劇的に発癥し意識を失うことは今まで無かった。

もしかしたら、俺はもう死んでいるのかもしれない。そう思うと、なんだかにぽっかりとが空いたような郷愁をじる。

せっかく家族でサポートしてくれたのに、こんなにあっさりと死んでしまったら本當に申し訳が無い気持ちで一杯になる。

親父やお袋は泣くだろうか?絶対に、泣くだろうな…。

妹は俺の死にすら鞭打って、それでも悲しんでくれるんだろうな。

もしかしたらこうなった理由を自分達のせいだって思うかもしれない。そう思ってほしくないな…。

塾は大丈夫だろうか?

教室長はかなり大変な狀況になりそうだ。誰かサポートしてくれれば良いのだが…。

「佐藤先生…助けてください~」と言うイケメン教室長のけない聲が聞こえるようだ。

教え子たちも、この時期ならまだ大丈夫だろうが、不安がるだろうな。

仕事上、俺が死んでたとしてもそれが伝えられることは無いと思うんだが…。

いきなり來なくなる先生は結構多いから、生徒たちもその慣れていくんだろうけど悪い事したなぁ。

最近連絡は取っていないが、親友とも呼べる2人の顔が浮かぶ。

柴田と鈴木君。いきなり俺がいなくなると困るだろうなぁ。

9月には久々に會おうって約束していたのに申し訳ないな…。

やはり、元の世界のことを考えると申し訳なさしか出てこないな。

けど、正直、今の俺にどうすることもできない。

昔の俺だったら、恐らく、いつまでもウジウジと悩んで、自分の境遇を嘆いていたんだろうな。

けど、俺は知っている。悩むと言うことは自分のためにすることだと。

俺が幾ら悩んでも、周りの皆のためにならない事を俺は痛している。

悩んで答えの出ることなら、自分のために悩めばいい。

けど、ある程度悩んで自分のために悲しんだら、後はくだけだ。

悩んで得られるのは結局自分なりの答えと、悩んだという自傷行為の証だけだ。

これだけ悩んだのだから…こんなに辛い思いをしているのだからもう良いだろうと言う、自己弁護に過ぎない。

だから俺は、自分のためにウジウジと悩むのは止めた。考えることは止めないけどな!

うつ病患者舐めんな!伊達に10年間この病気と付き合ってない!

…けど、やっぱり悩むことは止められないので…時々、頭を掻き毟りつつも…なんとか強がっていく位は許してくれ。

こんなじの繰り返しだ。こんなものだろう。よし、切り替え!

今できる事は、異世界について知っていくことだな。

狀況を整理しつつ、俺はやるべきことを頭に思い浮かべていく。

まず、何といっても魔法だ。

初めて見た魔法はだった。是非使えるようになりたい。

ルナに教えを請ったら教えてくれるだろうか?これは明日起きたら直接聞いてみるほうが良いだろうな。

多分、俺がルナに會う前にじていた、あの不思議な覚。流れのようなあのじが重要と見ているのだが…。

次に、今まで棚上げにして、考えないようにしていたのだが…

食事と排泄だ。

あ、食事中の皆さんには申し訳ない。

今でも食は沸かない。が、多分は食べようと思えば食べれるだろう。

水も飲んではいないが、飲めそうなじはした。

そして、排泄なのだが…これも全くもよおさないのだ。

試してみないと分からないが多分、出ないんじゃないだろうか…。

そもそも、この窟住居にはトイレがないのだ。一応水場はあるのだが、あれは一応調理用だと思う。

湖に直接とかも考えたのだが、あれはどちらかと言うと水源兼風呂に近いものじゃないかと思っている。

もしかしたら外にあるのかもしれないが…。ルナも食事をとったりトイレに行ったりしなかったところを見ると、これが普通と言う可能も捨てきれない。息もしているし、汗もかいているから代謝はしてると思うんだが…。

これも明日ルナに確認してみないといけない。

さて、ルナと言えば…これからどうしようかな…。

一応、お願いしたのは一晩泊めてくれって事だったけど…。

んな事を総合して考えると、暫くはここに住まわせてもらうのが良さそうだ。

何より、俺はルナを育ててみたいと思っている。

いや、変な意味ではなく、純粋に育ててみたい。

この子は多分、常識的な事は何も知らない。

いや、異世界的な常識は俺も駄目だが、基本的な言語や計算、そして道徳に相當するものはどんな世界でも必須だろう。

あれ?そう言えば、ルナは日本語を話していたが、これがそもそも標準語なのか?これも確認しないと駄目だな。

異世界語とかあったら覚えないと何もできないぞ…。

とりあえず、朝になって起きたらルナに渉してみようかな。

よし、方針が見えてきた。全ては明日からだな。

うーん、もし斷られたらどうしよう…。

まぁ、そのときになって考えればいいかな。

最悪、近くの町を教えてもらうことができれば、そこを目指すこともできるだろう。

考えがまとまったら眠くなってきた。そろそろ寢るか。明日も大変だろうし。

ルナの寢顔を眺めながらそんなことを考えた。

ルナは「にゅふー」とか言いながら幸せそうに寢ている。

相変わらず小さな手はしっかりと俺のYシャツを握り締めていた。

「ルナ、おやすみ…。みんな、おやすみ。帰れなくてごめん…」

俺はそう呟くと、俺の意識を塗りつぶそうと襲ってきた睡魔にをゆだねた。

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