《比翼の鳥》第9話:センタク
目を覚ましたら、そこは元の世界だった…とかなら夢オチですんだのだが、殘念ながら薄暗い窟の天井だった。
ん?なんか妙に腕が痺れて…る?そう思って橫を向いたらルナがコアラのように俺の腕にしがみついていた。
なんという抱き枕狀態…。しかし、幸せそうな顔をして寢ている。
起こすのも忍びないので勢は変えずにそのまま、部屋に視線をめぐらすものの、外のがってこないため今がどの位の時刻なのが判斷できなかった。
そもそも、1日24時間かどうかも定かでないのか…。全く…異世界ルール難しいな。
どうしても俺の常識で考えてしまうので、どこかで大失敗しそうで怖い。やはりこの世界の知識は何とかして手にれないと々困ったことになりそうだ。
そんなことを考えつつルナの様子を伺うと、しぎした後、パッチリと目を開いた。
それを見た俺は、ルナに笑顔を向けつつ
「ルナ、おはよう。」
と、聲をかけた。
ルナはパチクリと目を瞬かせ、「んー?」と首を傾げる。
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あー…これは、あれか。朝の挨拶も知らないのかな。
「もしかして、おはようの意味が分からないとか?」
恐る恐る聞くと、首肯。ビンゴでした。
「んとね、朝に目が覚めたら、他の人にする挨拶だよ。ちなみに挨拶って言うのは…」
朝から挨拶の説明をする事となった。
とりあえず、「ありがとう」と「ごめんさない」。「おはようございます」と「おやすみなさい」は教えた。
分かっているのかは微妙だったが、これは長い目で見ていこうと思う。
「と、言うわけで、改めて…。おはよう、ルナ。」
ルナを見て、再度挨拶。
「おはよう?」
疑問系ながら挨拶を返してくれた。例のごとく、コテンと首を傾けながらだ。まぁ、疑問系が取れれば免許皆伝だろう。
朝の挨拶をすませたルナは、寢臺を降りて俺の腕を引っ張った。
ちなみに、降りる際に思いっきり俺の腹の上をズリズリと這って行ったのはごだ。
「ん?著いていけば良いのかい?」
コクコクと、ルナ。
俺は手を引かれながら著いていく。
どうやらリビングを抜けて、湖の方に行くらしい。
何をするのか聞いたところ、「洗濯?」との事。
おう、洗濯はできるのか!凄いチグハグなじがするな!
けど、できないよりはできた方が良いな。
一応、生活に必要な最低限のことはできるのかな?
などと心していると、湖に到著した。
窟の中にあるので、俗に言う地底湖というやつだ。
先日見たときは、さらっとしか見なかったので分からなかったが、結構な広さだ。
薄暗いので奧のほうまでは確認できないが、なくとも50mプール位はありそうだ。
底は見ることができないが、湖面は鏡面のように澄んでいる。
天井や壁を見渡せば、満天の星空のように、ささやかなが至る場所から靜かに降り注いでいる。
正にプラネタリウムのような擬似天球だった。
ルナはその辺へと俺を引っ張って進んでいく。心持ち鼻息が荒い…というか気合がっている。
何となく俺のが危険信號を燈し始めた。何だろう?嫌な予しかしないんだが。
これから起こるであろう、最悪の狀況を想定し、俺はズボンから財布とティッシュ、ハンカチ等を辺へと置く。
その間も、グイグイと引っ張られてるわけで、正確にはそれらの品を道にこぼしながら歩いているわけだが。
この小さなのどこに、こんな力があるのか不思議で仕方がない。
「ちょ、ちょっとタンマ!ルナ!し落ち著け!ステイ!すてーい!!」
しかし、ルナは止まらなかった。
あれだ…昨日魔法を散々褒めちぎったから、今度も魔法で度肝を抜く気だ。
そう確信した瞬間、大津波が俺とルナを飲み込んだ。
その後は々酷かった。
まさか生きたまま洗濯機の中に放り込まれるような経験をするとは思わなかったよ…。
正に、もみくちゃの大回転。ジェットコースターなんて生易しいものじゃなかった。躙だよ躙。
ごめん、洗濯たち。もし元の世界に返ったらもうし大切に扱うことを誓う…多分。
幸いだったのは、水の中でも苦しくなかったことだ。始終水に躙されて絶してたのでそれどころではなかったが。
多分、ルナのおかげで水中でも呼吸できるようになってたんだと思うけど、それ以前の問題として々と教育が必要だと痛した。
湖の辺に、俺とルナが吐き出されるように落下した後…
「ルナ…これは洗濯とは呼べん…」
俺はそう吐き出し、撃沈した。
ユサユサとを揺すられる覚で俺の意識は浮上した。
ぬおー。まだ頭がグルグルする。しばらく目を閉じていたが、仰向けになっていた俺は目を開けた。
そこには目から涙をポロポロ流し、「えうー」と泣きながら俺を必死に揺すっているルナが居た。
俺が目を開けたのが分かると、ルナは俺のに抱きついて「うー!うー!」と、泣き続けた。
全く、しょうがない子だ。これでは怒れないじゃないか。
俺はまだ回る世界をじつつ、に抱きついているルナの頭を、ポンポンと軽く叩きつつあやし続けた。
しばらくすると、ルナは落ち著いてきたのか、しゃくりあげつつも俺の目を心配そうに見てきた。
俺も大分回復してきたので、ルナの目を見つつ、靜かに諭すことにした。
「ルナ、心配してくれてありがとう。」
そういうと、ルナはブンブンと首を振った。
「ルナは、あれだ。俺に魔法を見せようとして、湖で洗濯と思われる大回転をしたんだよね?」
俺は力ない笑顔でそう問いただすと、ルナは弱弱しく、コクンと頷いた。
それを見て俺は、ルナの頭をでつつ、
「俺を喜ばせようとしてくれた事は凄く嬉しい。それは本當だよ。けど、ちょっとやりすぎちゃったね。」
そう言うと、ルナはショボーンと下を向いてしまった。
その様子を見て、俺は苦笑しつつ、こう言った。
「失敗は誰にでもあるよ。今回はちょっとやりすぎちゃったし、俺も大変な目にあった。これはもうどうすることも出來ない。」
俺はそう言いつつ、じっとルナを見ながら続ける。
「けどね、ルナ。人は間違えてしまっても、ちゃんと先に進むために出來ることが沢山あるんだよ?そのやり方の一つが、俺がさっき教えたことの中にあるんだけど分かるかな?」
ルナは、俺がそう言うと、ハッと面を上げて、俺の目を覗き込む。そして、し下を向いて考えた後、再度俺の目を見る。
「ごめんなさい…」
ルナは、か弱い聲ながらも、はっきりとそう言った。
「うん。分かった。じゃあ、今回は文字通り水に流そう!次から気をつけてね?」
俺がそう宣言すると、ルナはしおずおずとしたじで、もう一度「ごめんなさい」と、言った後、俺のにしがみ付いて靜かに涙を流していた。
「ルナ。さっきも言ったけど失敗は誰にでもあるんだ。けど、もしも、また失敗したくないなら、次はどうしたら良かったのか、ちゃんと考えようね。どうしても分からないなら、ちゃんと誰かに相談すること。じゃないとまた同じ失敗を繰り返しちゃうから。」
俺はそう諭しつつ、ついでにこの先のことについてもルナに相談しようと決意する。
しばらくして、ルナも落ち著いてきたのでこう切り出した。
「ルナ、これは俺からのお願いなんだけど、もし良かったら俺に、ルナの先生をさせてくれないかな?」
ルナは俺の言葉を聞いて、じっと俺を見つめた。
「その代わり、俺をここに住まわせてほしい。後、可能であればこの世界のことや魔法のことをもっと教えてほしいかな。」
ルナは、俺の問いかけを租借するようにじっと考え込んだ後。
しっかりと、しかし嬉しそうにはにかみながら、コクンと頷いた。
ちなみに、後日ルナに聞いた話だが…俺はあの時、額がかち割れて大流をしていたらしい。
その傷はルナが魔法で治してくれたので大事には至らなかったらしいが…。
どおりで…やたらと心配していたわけだ…
もうしきつく叱っておくべきだったか?と思ったのは後の祭りであった。
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